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第27話 決壊

 しばらくしがみついていると、マイカの手がおずおずとグエンの背中に回った。 「グエン……。何か、不安なことがあるのか?」  その言葉に、片隅に追いやった痛みが、顔を出す。 「…………、ん」  肯定も、否定もできなくて中途半端に声を落とすと、  マイカの手のひらが、グエンの背中をなでた。 「グエンも。……怖がっていい」  温かさが、背中を覆う。 「ちゃんとしていなくていい」  その温かさが、背中を伝って、喉の奥に絡みついた。 「自分を、大切にして、いいから」  マイカの肩に顔を埋めて、息を止める。  胸の奥から迫り上がってくるこれが、なんなのか、わからなかった。 「……マイカ」 「うん」  体に回した腕に力を込めると、マイカの腕も応えてくれた。 「俺、……あなたのことを好きならよかったのに」  小さくマイカの肩が揺れて、それから、胸が上下する。 「――うん」  身のうちから湧きあがる何かを、鳩尾の奥になんとか押し込めて、  押し込めようとして、マイカに顔を寄せる。 「そうできない」  隠し切れなかった分、鼻が鳴って、  誤魔化せなかった。 「…………うん」 「ごめん。あなたを」  小さく息を吸って、一度、飲み込んだ。  喉が震えるのを、なんとか、止めたくて。  この懺悔を、口にしていいのか、わからなくて。 「ん」    マイカが顔を寄せて、続きを促した。  なぜか、――許されている。そう感じた。  もう一度。  深く、息を吸い込み、吐く。  それで、体の力を抜くことができた。 「あなたを、――代わりに、しようとしてる」  力の抜けたグエンの背中を、マイカの手のひらが、小さくなでた。 「代わりにして、――っ、抱こうと、してる」 「いいよ」  ひどい懺悔に、間髪を入れずマイカが言った。  あまりに簡潔に。  思わず、肩口から頭を起こす。 「でも――っ、」  言い募ろうとしたところに、今度はマイカから顔を寄せられて、口を塞がれた。  触れるだけの、  そのキスが、グエンを黙らせた。   「――いいから」  二人の間で、ささやきがこぼれ落ちる。 「俺も、……同じだ」  見開いた目の前。  なぜか、マイカの目がひどく潤んで見えた。 「同じだから……」  ああ。  どうして、泣かせたくないと思うんだろう。  この人は、違うのに。  その瞳にひどく胸の奥がよじれて、  泣かせたくなくて、なぐさめたくて、  愛してあげたくなった。  そんな資格なんて、ないというのに。  目元、濡れていないことを確かめるようにそっとなでると、  マイカは、気持ちよさそうに少し目を細めた。  そのまま寝台へ座らせて、膝を乗り上げるようにしてキスをし、ゆっくりと押し倒す。  下に敷いた体を、脇腹から、胸までなぞる。  マイカの唇から、小さなため息のように吐息がこぼれた。    反応の良かった胸の先を、両手の指先でやさしくなでる。  マイカは思いの外悩ましげに腰を揺らして、あごをのけぞらせた。    かすかに聞こえる呼吸が乱れ、両脚で閉じ込めた下で、マイカの体が左右によじれて、指先から逃げようとする。 「――かわいい」  マイカは、無言で首を振った。  その様子もよくて、先ほどから痛いほど張り詰めている中心に、さらに熱が集まってきた。 「かわいいよ。……ごめん、もっとみせて」  胸の先から指を離せないまま、そっと押し込んでみたりしながら言うと、  マイカの喉のから仔犬のような小さな啼き声がして、  思わず唾を飲み込んだ。 「――マイカ……」  この手で、誰かに――ジェスに触れることを、想像したことがないわけではない。  だけど、これは―― 「――すごく、いい」  こんなふうに、恥ずかしそうにされることが、  マイカをそうさせているのが自分だというのが、  もう、たまらなくて。 「……こんなでかいの、よくもない――っ、ん――ぁ、ぁ」  そんなことを言う体に、ぞくぞくとした。  だけど、マイカにそうは言えなくて、でも、  わかって欲しかった。 「マイカ、お願いだ。――かわいがらせて」  言いながら、胸の先をやさしくこすり、マイカの首元に舌を這わせる。 「――ぁあ!……んっ」  顔はよく見えなくても、眉根をきつく寄せて、  こぶしを口にあてているのが、気持ちよさそうにみえた。  もっと―― 「――ん。……ひ、ぁ、――っ!」  指先と、舌の動きを合わせてみる。  鎖骨の上を舌先でこじると、マイカの体が跳ねて、グエンから逃げるように腰がよじれた。  もっと、どうにかなって欲しい。  そんなふうに、自分が思うだなんて、  思ってもみなかった。 「……マイカ……」  思っているよりも、熱っぽい声でマイカを呼んでいる自分に気づく。  ああ――    自分の手の中で、  我を忘れて欲しい。   「――――ぁ、ぁ、ぁ!ああぁっ!」    

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