28 / 31

第28話 愛せたら

 体の下、叫んだマイカの体が小刻みに震えて、  ひくひくと喉が鳴っているのがわかって、震えるほど嬉しくなった。 「――なん、……こんな、――っ」  困惑の声に、もう一度胸の先を爪でなぞると、わかりやすく声が詰まって、マイカが首を振った。 「気持ちいい?」 「ちが――、っ」  その拍子に、お互いの腰がぶつかって、すぐにマイカが腰を引く。  崩れるように腕の力が抜けるのをみて、思わず、そこに手が伸びた。 「――ま、グエン、待て」 「見たい」  腰帯にかけた手に、マイカの熱い手が重ねられて、  それでも、手を止められなかった。 「見たい、マイカ――」  同じ男だとわかっていても。  そこに何があるかわかっていても。 「グエ――っン」  制止しようとするその口をふさいで、片方の腕で体重を支えながら腰帯を解く。  緩んだ隙間から指を差し込んで、ぐるりと背中側までなぜた。    逃げるように腰をくねらせるのに、なんだか訳もわからないまま興奮して、  そのまま、張りのある臀部に手のひらを滑らせた。 「――――っ」 「ごめん」  口だけでは謝って、それでも、止まれる気がしない。  ゆっくり、手のひらでそこを揉み込むと、筋肉に力が入って、マイカが息を止めた。  あやすように、自分の唇で、マイカのそれを柔らかくついばむ。  もう少し、この先へ。  揉み込む手を更に先へ進めると、少し、湿り気のある温かさが指先に触れた。  その奥、少し皮膚の薄いところを中指でなでる。 「――――!っグエン」 「触らせて」  力が入って固くなる臀部の感触を手のひらに感じて、  それから親指を、臀部の谷間へと這わせた。  マイカが息を飲む。  もう一度口付けであやして、でも、ただの気休めだと自分でわかっていた。 「――ここ」  親指で、ほんの少しだけかすめるようになでる。  しっとりとしたそこは、触れるとすぐ逃げるように収縮した。  ここが、目指す場所。  だけど。 「――ぁ、ぁ」  怯えるように身を固くするマイカに、まだだ、と感じた。  胸の先をそうっと爪でなぞり、  声になりきらない呼吸がこぼれるのを、口付けで迎える。 「声、聞かせてほしい」  さまよっていた視線が、グエンの声に引き寄せられたのがわかった。  もう一度唇をついばむ。  ゆっくりと唇を離すと、マイカの腰が震えたのがわかった。 「……グエン」  かすれた声でマイカが言う。 「うん」  その手のひらが、グエンの体に触れた。  脇から、背中まで。  ゆっくりと、確かめるように、手のひらが滑る。 「俺も、……見たい」  はあっ、と、マイカの喉から出た音に、ぞくぞくと体が震えた。 「っ……触りたい、グエンに」  その声は、喉に絡んだように少し揺れて聞こえた。  ――そんなふうに。  言われたら、いいのに。  こみあげた何かを振り払いたくて、マイカの口をふさぐ。  開いた歯列の間を舌で割り入って、中で縮こまる舌になすりつける。  その間にも、マイカの尻から手を引き抜いて、緩めた下履きごとマイカの腰回りをあらわにする。  グエンも、見たかった。  ――触りたかった。  だけど、欲しがってもらえたことが嬉しくて、  そのかわいいお願いも、叶えたかった。 「ん」  喉の奥で促して、腰を支えてやる。  マイカが浮かせた腰の下、下履きごと引きおろして、尻までもあらわにした。    太ももにわだかまる布を、もじもじとずり下ろすのを少し手伝って、  腿の半ばまで下ろしたところで、我慢できなくて、布の端を一瞬だけ指先でなでた。 「――んん」  甘えるような声に、口元がゆるむ。  もっと触れたくて、もう少し肌をなでかけたのをこらえて、  自分の服のボタンに手をかけた。    片手で、忙しなくボタンを外す。  なぜかうまく外せなくて、爪がボタンをはじいた。 「――っん」  そこにマイカの両手が触れて、やんわりとどけられた。  両手を寝台についてキスに集中すると、マイカがボタンを外していく。  下腹までおりた手に、思わず腹をなすり付けると、  裾を引っ張り出されて、最後のボタンも外された。  マイカの指が、手のひらが、グエンの腹の上をゆっくりとすべり、  胸をなでて、肩から上衣をおろそうとする。  それに抵抗せず、片腕ずつ袖をおとした。  裸になった上半身を、すり寄せてみる。  マイカの腕が、少し震えながら背中に回されて、そうっと、抱きしめられた。    お互いの体温が重なり合って、ものすごく、安心できた。 「――マイカ」  ため息のように息をはいて、名前を呼ぶ。  ああ、  この人のことを、好きならよかったのに。  自分の心が、すっかりジェスに囚われていなければ、  きっともうここまでで、簡単にこの人に恋に落ちていたに違いない。  そんな、簡単で単純な恋なら、よかったのに。  手早く下も脱ぎ去って、マイカの顔を見ながら――きっと、目を合わせながら、片足ずつ、マイカの足を裾から引き抜く。  唇を噛む様子に、その上から口付けをして、見てもいいか尋ねた。  不安げに揺れる瞳がどうしてか愛おしくて、  安心させたくて、重ねた体を、こすり合わせる。 「――続けて」 「……ん」  迷いながら言われたその言葉に微笑んでみせて、一度頬にキスをする。  それから体を持ち上げて、首元から胸の上、その先端、  それから、へそ――あの臍飾りが飾るはずのそこを伝って、じっとりと濡れた下腹の茂みに鼻先をうずめた。 「――いってたんだ」  グエンの言葉に、もじもじと揺れた腰がかわいくて、  持ち上がってはいるけれど、少し柔らかさのあるそれを、口に含んだ。 「あ、――っや、だ!」  少ししょっぱい、苦い、なまぬるい――  自分も知るそれを、初めて味わって、ちっとも嫌じゃなかった。  少し痺れるような苦さをまとうそれを、舌の上で転がして、  柔らかさの向こうに、少し芯があるのを感じた。  太ももの内側から腕を差し入れて、脚を持ち上げる。  一度口を離してから、もう片方もそうすると、  抵抗は弱く、両脚は体につきそうなほど持ち上がった。  そんな体の軟らかさにも、ジェスの姿を思い出してしまう。  逃げようのない体勢で、もう一度口の中に迎え入れる。  少しずつ力を取り戻しつつあるものを舌でしごくと、頭上からマイカの甘えた声が降ってきた。  たまらない。  全部。  全部、暴き立てて、かわいがりたかった。  たった一度きり。    愛せたらよかったのに。  

ともだちにシェアしよう!