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第29話 まさか

 口で、しつこくあやしている間に、マイカの熱はすっかりと立ち上がって、硬くなっていた。  その大きさを、無意識に自分のと比べてみて、先を舌でくすぐる。 「――っん、俺のは、いいから……」 「よくない」  非難めいたマイカの言葉を遮って、口に収めにくい大きさになったそれを、舌でなぞる。 「う……、――っあ」  その声だ。  拒む言葉を、甘く、ささやくように告げる、その声。 「かわいい……」  もっと、聞いていたい。 「ぐえん……、っ、ぁ」  そのまま、その後ろ、少し重さのある袋を口に含むと、  腰が逃げるようにうごめいて、でも、両脚を抱えられて、どこにも行けない様子に興奮した。 「グエンのも、――はぁ、俺も」 「――だめだよ、マイカ」  浮かされたように、途切れ途切れに口にしたマイカに告げる。  番いのセックスは、ただの処置だ。  自分が極めた瞬間の、強い魔力の迸りで、  マイカの境界をこじあけて、魔力の道を作る。  だから、本当はこんな愛撫はいらないのだけど。  脚から腕をほどいて、身を乗り上げる。  少し意識して、マイカの熱を体で刺激してやると、悩ましく喉を鳴らして、マイカは息をつめた。 「口に、道ができたらどうするの」  声を我慢していたのか、口元に押し付けられていたマイカのこぶしを、どかせる。  口は閉じたまま、マイカに口付けた。    (ここ)で自分が極めれば、きっとここに道ができる。  そして、ここに一生ほかの他人を寄せ付けない壁を、作る。  マイカにも、想う人がいる。  きっと、その人に口付けることなど許さない壁になる。  マイカが、口を開けて、舌を覗かせた。  その誘惑に思わず食らいついて、また少し離す。 「俺、多分かなり強い壁を作ると思う」  壁はディッカーの本能だと、管理官は言っていた。  想いの強さに比例して、障壁の――独占の強さが決まる。  なら――  ジェスを重ねたこの想いは、どうなるだろう……? 「だめだよ……」  自分の声が、ひどく怯えて聞こえた。  こんなふうに受け入れてくれる人の、  生涯を縛ってしまうだなんて、したくなかった。  それからはもう、止められなかった。    胸の先も、硬く張り詰めた熱の中心も、へそさえも、舌であやすとマイカは声をあげてグエンにすがりついた。  すがりつく腕をとって、肘から脇まで舌を這わせ、  そのまま横向きに転がして、背中側から耳の下、うなじも触れてみた。    背中はどこに口付けてももじもじと腰が揺れて、それがかわいくて、  前に伸ばした手でマイカの中心をあやしてやりながらキスを散らすと、  時折びくりと跳ねて、軽く達していたようにも思えた。 「ああ……、グエン……、グエン――!」 「――かわいい、マイカ」  名前を呼ばれるたびに、ジェスの声がダブる。  この触れ合いを止めることなんてできなかったし、  終わらせたくもなかった。  興奮しすぎて、痛くさえある自分の状態を無視して、  どこに触れても甘く啼いてくれるマイカがもっと欲しくて、  ようやく、最奥の場所に、足を踏み入れることにした。  はじめは、偶然のように。  マイカのうなじに唇を這わせながら、少し腰を近づける。  グエンの熱の先っぽが、かすめるように、谷間に頭を突っ込んだ。 「――っあ!」  すぐに離して、また、もう一度腰を寄せる。  先走りが滴るグエンの熱は、向きを変えてマイカの谷間の奥、会陰の上をぬるりと滑った。 「……っは、あ」  その刺激に、自分の口からもため息のような声が漏れる。  目の前が、真っ赤に染まるほど気持ちが良かった。 「マイカ……」  このまま、ここで達してしまおうか。  ふとそんな思いが胸をよぎる。  中に入らずここで達したら、道はつくだろうか。  相手が、女でも、男でも。  二度と誰かを抱けない体になるだろうか。  腰を引いて、また、探るように前を突く。 「――――っ」  意図した動きはマイカの反応を誘い、前に逃げた腰は、まんまとグエンの手の中に自らを誘った。 「いっ……、ぁ、――い、く」  イきたい。  刺激に声を震わせるマイカに、グエンの頭の中も連れていかれた。  手の中の熱をこすりたてて、マイカの後ろから腰を打ちつける。 「い、イって、マイカ……、俺、も、……はぁっ」 「グエン、あ、あ、あ……!あぁっ!」  止まれない。  止まれなかった。  マイカのうなじに、それを見つけるまでは。 「………………あ、あぁっ!」  思わずかぶりついて、腰を引いた。  手のひらの中、はじけたマイカの熱。  赤く染まったうなじは、少ししょっぱくて、    その髪の生え際。  頭の中が、ぐらぐらとした。  ――それには、見覚えが、あった。 「――あ……、グエン……?」  うなじの上、髪の生え際、――小さなほくろ。    まさか。  こんなふうに、呼んで欲しいと思っていた。  手の中、少し柔くなったそれを、ぎこちなく包み込む。 「――っん、ぁ」  その声を、ちゃんと、聞きたくて。  名前を、呼びたくて。  

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