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第33話 目覚め
冬眠明け、一年の中で最も飢餓に喘いでいる春先の魔獣たち。
そのまま眠り続けていれば、飢えに苦しむこともないのに。
居住エリアに、新たに二部屋を用意する。
ディッカーと、治癒術持ちの魔法騎士それぞれ一名とのこと。
フォローしやすいよう、自分の居室も一時的に近くへ移すこととなった。
「ジェス、荷物運ぶの手伝うか?」
「いえ。大したものはありません。大丈夫です」
ニルガスの申し出に首を振り、応援の騎士たちの居室を整える。
こうした雑務から兵站管理まで、地方ではなんでもやる。
養成院の最終学年で学んだことは案外役に立って、人よりも内向きの仕事を任されることが多いと感じている。
「「扉」の認識票忘れるなよ。引越しの時大抵みんな忘れてくからな」
「――ああ。……はい」
管理課と魔法的につながる「扉」。
まだ住人のいないこの部屋では、個人を識別する認識票が外され、回路は重く沈んでいた。
ほとんどの騎士が、扉の存在なんて忘れて過ごしている。
ニルガスに言わせるとそういうことだ。
忘れてしまえたら、どんなによかったか。
軽く首を振って、室内の清掃を続ける。
討伐期間中、この居室を使う日はそれほど多くないかもしれないけれど。
せめて寝台の上で休める夜くらいは、誰にも気持ちよく過ごしてほしいと思った。
だから――
応援の騎士たちを迎え入れた時。
先頭に立つディッカーの後ろ。
ひどく疲れた顔をした魔法騎士を見た時。
任された仕事を、投げ出してしまいたいと思った。
「ようこそ。討伐の応援、歓迎します」
隊長の言葉に、ディッカーの騎士が口を開く。
「出迎えありがとうございます。
私はガレス・アシュダウン、こっちがグエンダリオ・ハーウッド。ガレスとグエンで結構です」
二度と、会わないと思っていたのに。
ガレスの言葉に頷いた隊長が、手振りでジェスを示した。
我知らず踏みしめた足が、靴裏の砂を擦って音を立てた。
「私は今回の討伐隊の隊長を務めます。ローガンと呼んでください。
――こっちは、砦内の生活の補助をさせていただくジェスです」
口の中が渇いていた。
口を開いても、舌がひっついてしまったように言葉を紡ぐことができなかった。
ただ、無言で礼を取る。
視界の端、グエンの顔が重たげに持ち上がったのだけが見えた。
そちらを、見ることはできなかった。
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