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第40話 影

 この日も、ガレスは広く結界を展開し、騎士たちは追い込んだ腐獣を囲い込んで安全に処理をした。  グエンは相変わらず森の奥から腐獣を追い込み、ジェスは時折副隊長の指示でグエンに休憩を取らせた。  沼ネズミの巣の近くでは、何体もの死骸が転がっていて、  火魔法を使える騎士は、そのにおいに顔を顰めながらなんとか焼却処理をした。  暖冬のおかげか、死骸になったネズミは丸々と肥えていて、  腐獣の騒ぎがなければ、この夏はこいつらに相当苦労させられたに違いなかった。 「来たぞ」  グエンが追い立ててきたのは中型の腐獣で、もうすでにかなり弱りきっていた。  火の壁の向こうから姿を現したグエンに向かって手招きをする。  目があって、グエンは結界の近くへと近寄ってきた。 「そろそろ交代の時間だ。追い込みは一旦やめて、ここにいてくれるか」  騎士たちの怒号にかき消されないように、声を張り上げてグエンに告げる。  あまり聞こえなかったのか、グエンは少しだけ首を傾げて訝しげな顔をした。  その、後ろ。  薮の葉が揺れて。 「――――グエン!避けろ!」  考える余裕はなかった。  叫んだ時にはもう足は地面を蹴っていて、  背後を振り返るグエンを突き飛ばしていた。 「――ジェス!」  伸ばした腕の下、鎧の隙間をかすめた影は小さく。  倒れ込む体を捻って、その影を反対の腕で叩き落とした。  ガレスの張った結界の外、甘くさい腐臭漂う森の中で叩き落とされた小さな影は、  それでも体勢を整えて逃げようとしていた。  その素早さに背中の毛が逆立った。  思わず叫ぶ。 「逃すな!」  突き飛ばされて地面を転がったグエンが立ち上がり、その影に向かって矢のような火焔を飛ばした。 「核か?!」    三つ、四つ、五つ。  地面を這って逃げる影に向かって立て続けに放たれた火焔の矢は、五つ目でその姿を地面に縫い止め、  ジェスは腰だめに抜き去った剣でその体を叩き割った。  途端に強く吹き出した腐臭に顔を背けると、ガレスの結界があっという間にグエンと自分の体を包み、  そのまま膝の力が抜けた。  ただ、小型の魔獣を叩き切っただけなのに。 「――――ジェス!!!」    

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