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第一章 不穏の幕開け(3)
背中に柔らかい感触がある。それだけではない。手首に冷たくて硬い感触もある。
何だ? 俺は目を開いた。目に入ったのは俺が使う予定でいた部屋の天井。ということは、ここはベッドの上か……俺は身体を起こそうとした。そして気付いた。ベッドに両手を繋がれている。
手首に感じた冷たくて硬い感触は手枷のものであったようだ。手を動かそうとしてみるも、ずしりとした重みで上手く動かせない。何故か身体に力が入らないのだ。何が起こっているのか。俺は混乱しながら頭を動かして室内の様子を窺った。
「起きましたね、望海様」
「お目覚めをお待ちしておりました」
ベッドの脇で俺の様子を窺っていた一成と一臣が、口元にうっすらとした笑みを浮かべる。
まさか、こいつらが? 俺は増々混乱した。
恐らく食事に何か盛られていたのだ。それだけはわかった。だが、彼らが何を目的として、俺にこんなことをしているのかがわからない。こんなイベントはゲーム内にはなかった。穏やかな時間を過ごしたのちの急転直下な展開に、俺は動揺していた。
「何が目的なんだ」
俺は意を決して彼らに尋ねた。
「そんなに怖がらないでください、望海様」
一成の手が俺の頬に添えられた。するりと滑ってくる手が、俺の首筋で止まる。怖い。俺はその手が、次の瞬間には首を絞めてくるのではないかと思った。
「安心してください、望海様。私たちの望みはひとつなのですから」
一臣の手が俺の髪を撫でてくる。その手がふわりと離れたかと思うと、今度は俺の腹部に置かれた。ぱちり。シャツの裾からボタンが外されてゆく。それを待っていたかのように一成の手も動く。襟元からボタンを外し始めた一成に、俺は慌てふためいた。
この展開を知っている気がしたのだ。
そんな馬鹿な。俺が今いるのは乙女ゲーの世界だ。そう思っても嫌な予感が拭えない。呆気なく外されきったボタンに、俺の胸元がはだける。嗚呼、と溜息に似た声を上げたふたりが身を屈めてベッドに上がってくる。まさか、まさか。俺が動揺で動けずにいると、俺に寄りそうに両脇を固めたふたりの手が俺の乳首に触れてきた。
「なっ……」
耳朶や首筋に吐息がかかる。ゆるりとふたりの手が俺の乳首を弄び始めた。ずうっとこうしたかったんですよ。一成の声が耳の奥に潜り込んでくる。瞬間、俺の脳の奥で記憶が弾けた。そうだ。姉が持っていた『エンジェルスフィア』の成人指定同人誌にこんな展開があった。何でも俺の相馬への心酔っぷりがそう見えるとかで、ゲーム内での人気とは裏腹に、俺のBL同人誌人気は凄まじいものがあるのだそうだ。けれども気付いたところで同人誌である。細かい内容はもう覚えていない。ただ、生徒会メンバーが俺を――というより望海を全員で愛するBLハーレムエンドになったことだけははっきりと思い出せた。
「や、やめろ。やめてくれ」
「大丈夫ですよ、望海様。少しずつ慣らしていきましょうね」
云うなり一臣の顔が動いた。俺の首筋に這わせられていた舌が肌を伝って下に下りてゆく。そうして、やんわりと俺の乳首を舌で舐り始める。あっ。俺は思いがけず声を上げた。知らない快感が、乳首から染み出してくる。
「や、だ。それ、やめ」
「気持ちいいのですね、望海様」
俺の耳朶を舐りながら乳首を抓んでいた一成が、胸元まで一気に顔を動かしてくる。ああっ! 俺は腰を反らせた。知らない。こんな刺激、俺は知らない。そう思うほどに強烈な快感。ふたりの舌の動きに合わせて揺れる乳首が、徐々に硬さを増していく。
「あっ、やだ。やめろ、やめて、くれっ、ああっ」
俺は身悶えながら、一成と一臣の愛撫を受けた。
舌がちろりと動く度に、脳を貫くような快感が襲い掛かってくる。間違いない。俺は快感に飲み込まれそうになりながら、俺が置かれている状況を記憶と照らし合わせた。そうだ。姉が持っていた同人誌で、俺はこのふたりにバックバージンを奪われたのだ。こんな風にベッドに繋がれて、交互に愛していると囁かれながら、何度も、何度も……。
「嗚呼、なんて可愛らしい」
「私たちが思っていた通りの表情をされている」
「あっ、やだ、やだぁ」
乳首を吸われ、舐られ、転がされていると、次第に俺の身体は興奮をし始めた。とかく気持ちがいいのだ。前世で女性とそういった交流がなかった俺は、性行為 の気持ち良さは知らないままだったが、自慰だけは腐るほどした。男だらけの男子校では、その手の話題が受けたからだ。だから少しアブノーマルな自慰にチャレンジしたりもした。例えばカップ麺を使ってみたり、こんにゃくを使ってみたり。床オナだってしたし、こっそり入手したオナニーグッズを使ってみたりもした。
ここだけの話だが、アナニーにもチャレンジしている。
最初はそうでもなかったが、続けていると不思議な気持ち良さに襲われるようになった。射精には至らないのだが、持続間のある快感がある。いつまで経っても気持ち良さが尽きないものだから、一時期の俺はアナニー一辺倒だったくらいだ。それに似た快感。尽きることのない気持ち良さが、俺の理性を剥ぎ取ろうとしていた。
「ここをこんなにされて」
「乳首だけで感じてしまったのですね、望海様」
一成と一臣の手が俺のズボンを脱がせてくる。嫌だ。俺は首を振った。そこには俺がふたりに乳首を弄られて感じてしまった確かな証拠がある。足を閉じて抵抗しようと試みるが、まだ薬が残っているようだ。身体に力が入りきらない。そうこうしている間に、彼らは俺の下着を剥ぎ取り、先端が濡れそぼった俺のペニスに手を伸ばしてきた。
「ふふ、素敵ですよ、望海様」
俺のペニスを手の内に握り込んできながら一臣が云う。
「今日から少しずつ、私たちが望海様の身体を、私たち好みに作り変えてあげますからね」
俺の陰嚢を揉みしだきながら一成がぞっとする台詞を吐く。
「先ずは乳首でイケるようになってもらわねば」
「才能がおありのようですから、きっと直ぐにイケるようになりますよ」
好き勝手な言葉を吐きながら、俺の乳首を舐ってくるふたりに俺はもうどうにかなりそうだった。
射精 したい。射精 してすっきりしたい。そのぐらいに乳首から滲み出てくる快感は、俺の射精欲を煽った。一成と一臣が俺のペニスを弄んでいるのもある。射精の瞬間の、あの強烈な快感が欲しい。俺は何度も腰を跳ねさせながら、一成と一臣の愛撫に身を任せた。理性はもう利かなかった。乳首を舐められて女のように声を上げながら、俺はひたすらに腰を振った。イカせて、イカせて。譫言めいた言葉を吐きつつ、ペニスに絡み付いているふたりの手を使って自分を射精へと導いてゆく。
「駄目ですよ、望海様。私たちの手でイクのは」
「そうですよ、望海様。乳首だけでイキましょうね」
優しく柔らかい声でふたりが告げてくるのと同時に、俺のペニスからふたりの手が離された。
「やだぁ。もう、イキたい……っ」
俺は情けなくもふたりに懇願した。策を弄されてこんなことになっているのに――と、自分でも思うが仕方がない。
元が同人誌であるからなのだろう。俺の身体は随分と愛撫に弱く出来ているようだ。あれだけ時間をかけて開発した前世でのアナルはなんだったんだ。そう思うぐらいに感度がいい。一成と一臣の舌の動きに翻弄される乳首。じわじわと染み出ていた快感は、いつしか俺の意識を浚うほどに強まっている。
――あ、ぅ。ああっ、はぁ、ん。ああ……っ。
酷く、甘ったるい声。俺が知らない俺の声が、喉の奥から飛び出してくる。終わりのない快感に感じる浮遊感。身体全体がふわふわとしていて、まるで雲の上に乗っているようだ。熱が集まったペニスが、亀頭の先から先走った汁を垂らしている。イカせて、お願いだから。俺は一成と一臣に懇願した。「仕方ありませんね」俺の乳首から口を離した一成が、薄い笑みを浮かべながら俺の足元に回り込んでくる。
「もうイキたくて堪らないのですね、望海様。こんなにいやらしいお顔をされて」
俺の顔を覗き込んできた一臣が、俺の口唇に口唇を重ねてくる。
この世界で自我を持ってから初めての口付けは、自分でも驚くほどに甘かった。まるで、そうまるで、砂糖を加えさせられているような感覚。俺はうっすらと口唇を開いた。するりと潜り込んできた一臣の舌が俺の舌に絡んでくる。甘い。俺は口の端から吐息を洩らした。こんなに優しい口付けをされたらおかしくなってしまう。
「ふふ。お可愛らしい望海様は、ここもお可愛らしいのですね」
一臣に啄まれる口唇の下で、一成が俺の脚を開いた。そして身を屈めると、俺のペニスに顔を重ねてくる。熱い吐息が俺のペニスにかかる。直後、ぺろりとペニスを舐め上げられた俺は、これまでの人生で初めて感じる感覚に、びくんと腰を震わせずにいられなかった。
「ん、んぅ。んん……っ」
飴を舐めてでもいるかのように、躊躇いのない動き。ペニスの隅々まで回り込んでくる一成の舌が、俺の理性を奪った。んぅ、んっ。俺は腰を振って、一成の口唇の中にペニスを潜り込ませた。熱く滑った感触が、堪らなく気持ちいい。ああ、ああ、もっと。深く口の中に潜り込んでくる一臣の舌に自ら舌を絡ませていきながら、俺は彼らの熱に溺れていった。
そうして、果てた。
息を荒くしながらベッドに沈んだ俺は、放心状態でいた。かつてない快感にあっさりと屈してしまった。その後悔がどんよりと胸を曇らせる。もしやこれが物語の強制力ではないのか。はっとなった俺は今の状況の元となった同人誌の内容を思い出そうとした。けれども、脳に靄がかかっているような感覚がして、上手く思い出せない。
「次は私たちの番ですよ、望海様」
「お可愛らしいその口を、しっかり使えるようになりましょうね」
達した直後の力の抜けた俺の顔を、端近に顔を寄せて眺めていたふたりが、それぞれ身体を起こしてズボンを脱ぎ始める。まだ、終わらないのだ。俺は絶望的な気分になりながらふたりの顔を交互に見上げた。
程なくして一臣のペニスが目の前に突き出される。口を使えということらしい。しかし俺の口はひとつしかない。二本のペニスは流石に処理しきれない……とう思っていると、一成は俺の太腿を使うつもりであるようだ。俺に脚を閉じさせると、その隙間にペニスを挿し入れてきた。
「大丈夫ですよ。ゆっくりやっていきましょう」
「今日はこれが出来たら終わりにしてあげますからね」
ベッドに拘束されている以上、俺に他の選択肢はない。この行為を終わりにするには、彼らの云うことを聞くしかないのだ。
俺は躊躇いがちに口を開いた。そして、口の上に置かれた一臣のペニスを舐めた。ぴくりと腰を震わせた一臣の口元に、満足げな笑みが浮かぶ。一成は一成で、腰をゆっくりと動かし始めていた。愛おしげな眼差しが俺を捕らえている。
彼らのその表情に、俺の胸は何故か高鳴った。
怖いと感じなければならない状況なのに、俺は期待をしてしまっている。前世でアナニーに励んだのがいけなかったのだろうか。それともこれが望海の本性なのだろうか。彼らに与えられた快感の強烈な記憶は、それだけ俺から抵抗をしようという気を奪っていた。
「刺激的なお顔ですね、望海様。ペニスを舐めるあなたはとてもいやらしい。今日をこれで終わらせるのが勿体ないくらいです」
なら、もう一回して。腰を振りながら俺の乳首を指先で嬲っている一成の言葉に、俺の喉からそんな言葉が飛び出してきそうになる。乳首を弄られ始めたことで、俺の身体は再び熱を持ち始めている。俺は一臣のペニスを口内に収めた。何かを口にしていなければ、あられもない言葉を吐いてしまいそうだ。
「ああ、いい。最高ですよ、望海様。俺のペニスをあなたがこうして咥えているなんて」
「後で私にもしてくださいね、望海様。ご褒美にもう一度イカせて差し上げますから」
もう一度、という言葉を耳にして、俺のペニスが一気に熱を帯びる。
俺は彼らの言葉ひとつで欲望に火が点いた身体に抵抗する気を奪われた。この逞しいペニスを身体の内側に感じてみたい。その欲求が胸の内側で大きく膨らんでくる。駄目だ。最後の気力を振り絞って強くそう思うも、長くは続かない。次第に彼らの熱に飲み込まれていく意識。口の中を満たすペニスの硬い感触が、俺の身体の中にある何かを酷く刺激する。
「はあ、ああ。望海様、望海様……」
俺の名を切なげに呼びながら、腰を振るふたりの幼馴染み。この異様な状況が何故か誇らしくさえ感じられる。ああ、気持ちがいい。相馬には及ばないものの、甘いマスクで学園の女性との人気を集めているふたりを、俺は今独占している。不思議な高揚感に包まれた俺は、その気持ちに導かれるがまま、彼らの欲望を相次いで口で受け止めた――……。
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