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第二章 欲に塗れた日々(3)
六日目の俺は、ふたりのとの性行為 の疲れで昼過ぎまで眠りこけていた。一成にせよ、一臣にせよ、まだ高校生と若いからだろう。俺を求める気持ちに限りはないようで、明け方近くまで何度も俺を抱いてきた。文字通り、アナルが乾く間もないほどに、だ。
俺が前世で死んだのは二十六歳のときだったが、そこから約十歳は若い身体。体力に満ち溢れている筈の身体は、けれども倦怠感に満ちていた。平等であろうとしているのだろう。三度ずつ俺のアナルや口に精を放ってきたふたり。彼らの欲望を極限まで受け止めた俺は、彼らに起こされなければぞのままずうっと眠っていただろう。そのぐらいに疲労は俺の身体を蝕んでいた。
目を覚ました俺はゆるゆると身体を起こしてリビングに向かった。
父親から電話がかかってきたのだ。
一臣が手にしているスマートフォンに耳を当てる。寝起きのぼんやりとした頭のお陰で上手く言葉を継げずにいた俺だったが、父親はそれには構わず話を進めてきた。「一成や一臣と上手くやっているか?」ふたりとの共同生活を案じる父親の言葉に俺はうんと頷いた。
父曰く、弁護士に任せた証拠を集める調査が難航しているらしく、反撃を開始するのには、まだ時間がかかるとのことだった。それ即ち、このマンション生活がまだ続くということである。俺は嬉しさ半分、落胆半分で父親との電話を終えた。一成と一臣、彼らとの性行為 は最高に気持ちがいい。いいのだが、このペースで抱き潰されてしまっては俺の身体が持ちそうにない。昨晩だって、四回も射精させられているのだ。ここに来てからだと軽く十回を超える。それは若い肉体に転生した俺でも疲れるに決まっている。
俺は再びベッドに戻った。
惰眠を貪っていると夕方近くになってまた起こされた。倦怠感に苛まれながら目を開くと、綺麗に選択されたシャツとジーンズを手にしたふたりが立っている。何でも、謹慎生活に入った俺を案じて相馬がマンションを訪ねてきたらしい。手枷と首輪を外された俺は久しぶりの解放感に喜びながら服を着替えて玄関に向かった。
「家を尋ねたらこちらにいると聞いてね」
うっすらと茶色がかった髪がふわりと風に揺れている。日本でも有数の財閥の御曹司とは思えぬほど穏やかな眼差し。だが、その優男的な見目に騙されると痛い目に合う。もう既に財閥内の幾つかの会社の経営に携わっている相馬は、守らねばならぬものを守る為なら手段を厭わない冷酷な一面を持っている。
それが如何なく発揮されるのが、ヒロインとのハッピーエンドルートだ。俺に唆されて彼女へのイジメに関わった人間を学園から追放するだけでは飽き足らず、それぞれに相応しい破滅を用意したのだ。例えば、財閥の力を使って両親に多額の借金を背負わせたり、関係企業から家族を退職させたり。彼らのその後が描かれていない為、最終的にどうなったかはわからないが、まともな人生は歩めないといった描かれ方だった。
尤も、この世界は『エンジェルスフィア』の二次創作の世界である。俺や一成、一臣のように作者の独自解釈が加えられている可能性は否定出来ない。金魚の糞である俺には基本的に優しい相馬ではあるが、何せハーレムエンドの一員である。彼が俺に不埒で邪な想いを抱いているのは間違いないのだ。
「心配かけてすまないね。有難う、相馬」
俺は軽く相馬に頭を下げた。
優しい相馬は立場の違いなど関係なく、俺に普通に接するように云ってくれている。堅苦しいのが苦手な俺には有難い申し出だ。だから俺はその言葉に甘えて、相馬に気を置かない態度を取った。そう、いつものように。
「どう過ごしているか心配だったのだけど、思ったよりは元気そうだね」
「うん、まあ、のんびり骨休みしろって云われてるしね」
俺の背後には一成と一臣が控えている。そうでなくとも、彼らとの性行為 のし過ぎで疲労がピークを迎えているとはとても云えはしない。俺は当たり障りのない返事をして、相馬の言葉に耳を傾けた。どうやら相馬は俺の無実を信じてくれているようだ。「戻ってくるのを待ってるよ」微笑みながら差し出されたノートは、俺が休んでいる間の授業のノートであるらしい。
「そろそろ目を通しておいた方がいいと思ってね」
「嬉しいよ、相馬。勉強の遅れは心配だったからね。でも、いいのかい? 君のノートは……」
「それは君の為に取ったノートだからね。私のは別にあるから大丈夫だよ」
云われて改めてノートを目にしてみれば、確かに俺が休んだ頃から取られている。とても有難い。俺はノート握る指に力を込めた。それだけ、俺の無実を信じてくれている相馬。彼の気持ちに恥じない振る舞いをしなければ。俺は今後の学園生活でも、品行方正であり続けることを誓った。
「本当に、有難う。このお礼は必ずするよ」
「いいんだよ、そんな気にしなくて」ふふ、と、相馬が小さく笑う。「それよりも……」
ちらと背後に控えている一成と一臣に目を遣った相馬が、身を屈めて俺の耳元に口を寄せてくる。何だろう? 訝しく感じていると、首元をちょいちょいと突いてきながら相馬が囁いてきた。
「何だかお楽しみのようだけど、相手は誰?」
まさか。俺は首元を手で隠した。そして昨晩の記憶を思い返した。
最後の方で、俺の身体の全てに口付けを降らせてきた一成と一臣。鏡を見ることのなかった俺は気付いていなかったが、もしかしてキスマークがあるのか? 首の辺りを強く吸われた覚えがある俺は、動揺して言葉が続かなくなった。
それで相馬は全てを察したようだ。「これはちょっと話をする必要があるようだね」穏やかながらも、有無を云わせない口調でそう告げると、靴を脱いでマンションに上がり込んでくる。だが、一成と一臣も負けてはいない。「こちらへどうぞ、相馬様」堂々とした態度で、さっとリビングに相馬を招き入れる。どうなるんだ。まだ同人誌の内容を思い出せない俺は、はらはらしながら三人の後を追うしかなかった。
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