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第八章 眞の表裏(3)【R18】
「あっ、駄目。イク」
左右の乳首を交互に吸われ、アナルを緩やかに掻き混ぜられていると、快感の高まりが波となって身体を浚うようになってきた。まだ、まだ達 きたくない。俺はシーツを両手で掻きながら一成に懇願した。
「一成、待って、待って、まだ」
「いいのですよ、望海様。達 っても」
「やだ……やだ、って。待って」
「何故です? 気持ちいいの、お好きでしょう」
気持ちいいのは嫌いではない。だから性行為 も嫌いではない。けれども――。俺はここ最近の彼らとの性行為 で気付いたひとつのことを胸の中に引っ張り上げた。
「そりゃあ、好きだよ。でも……」俺は一成にしがみついた。「ひとりでイクのはやだ」
アナルにペニスを収めている瞬間の、あの奇妙な充足感。全身の割合で云えば10パーセントにも満たない僅かな面積だ。だが、その僅かな面積での触れ合いだけで、俺は世界の全てを手に入れたような満足感を得ることが出来た。お互いの熱が溶けて混じり合うような感覚。ともに天上を目指して駆け上がってゆくあの瞬間が、俺は彼らが俺を気持ち良くする為にしてくれる他のどんな愛撫よりも好きになっていた。
「なら、教えてください。望海様がどうして欲しいのか」
「入れて、欲しい……」
俺からねだられるとは思っていなかったようだ。明瞭 りと口にすると、一成の目が微かに見開かれる。けれども、それも一瞬のこと。直後には綽然とした表情を取り戻すと、俺の顔を覗き込んでくる。
「どこに何を挿入 て欲しいのです?」
「一成の、意地悪ぅ……」
そんなの云わなくてもわかるだろ。と、叫び出したくなるのを抑えて、俺は一成の口唇に自らの口唇を重ねた。「お願い、入れて」啄むように口付けながら頼み込んでみるも、嗜虐的な傾向のある一成はその程度では俺の願いを叶えてくれそうにはない。「ちゃんと云えたら入れて差し上げますよ、望海様」などと云いながら、俺の口唇に指を這わせてくる。
「この可愛らしい口にですか。それとも――」
もう片方の手が臀部を回って、双丘の谷間に滑り込んでくる。
気恥ずかしさを押し退ける焦れったさ。緩く口を開いた蕾をゆるゆると撫で回しながら俺の言葉を待つ一成に、俺は根負けした。
「俺の、後ろの穴に」
「ええ、望海様の可愛らしいアナルに」
「一成、のを、入れて……」
「私の、何をですか?」
くっきりとした目鼻立ちの麗しい顔が意地の悪い笑顔を浮かべている。
だのに華やかで、だのに艶やか。見目が標準以上に整った男の嗤い顔というものは、こんなにも被虐心を擽るのだ。俺は腰から立ち上ってきた怖気にも似た震えに、胸を高鳴らせた。ああ、一成とひとつになりたい。湧き上がってきた感情に急かさせるがまま、俺は口を開いた。
「×××――を、挿入 て」
下卑た単語に、一成は興奮を覚えたようだ。俺を手荒くベッドに沈めると、両足を抱え込んでくる。
次いで無言で俺のアナルにペニスを押し込んできた一成に、望むものを与えられた俺は身悶えずにいられなかった。「早く、早く、動いて」両手でシーツを掴みながら一成を見上げてせがむ。「勿論ですよ、望海様」俺の足首に口付けてながら一成が腰を動かし始める。
「あっ、あっ、もうちょっと、奥」
「ここを突かれるのがお好きですね、望海様は」
しゃくり上げるように腰を振られると、ペニスの先端が俺の前立腺 に当たる。「そう、そこっ」俺は盛大によがった。
決して薄くもないけれども厚くもない俺の部屋の扉は、耳をそばだてれば、俺のはしたない声をあっさりと伝えてしまうことだろう。それでも俺は自分の痴態を止められなかった。腰を振られる度にペニスに電流が走る。同時に感じる優越感。学園で物静かな美形という地位を確立している一成の夜の顔。嗜虐的で情熱的な彼の顔を俺は誰よりも知っている。
「ああ、一成、一成、いい、いいよぅ」
アナルを突かれれば突かれただけ、俺の腹の上で濡れそぼるペニスから熱い液体が滴る。息苦しさを感じるほどに固くなった陰嚢。それは遠からず訪れる絶頂 の予兆だった。
「本当にいやらしくなってしまわれて。そんなにここを突かれるのが好きなのですか」
「誰の、所為だと、思ってるの……っ」
「男冥利に尽きますね、その台詞は」一成の手が脚から離れる。「もっと奥まで挿入 させてください、望海様」
俺の両手を取った一成が、手前にその手を引っ張ってくる。ああ、ああ、ああ。俺は顎を仰け反らせて喘いだ。きっちりと嵌まったボルトとナットのように抜けない一成のペニス。俺のアナルの深いところを叩き続けているそれが、俺の快感を急激に高めてゆく。
「ああ、ああ、一成、イク……ぅ……っ」
ひときわ高く、そして細い声が俺の喉から絞り出る。瞬間、奥の奥に頭を潜り込ませてくる一成のペニス。俺が射精をするのと同時に、一成の腰が小刻みに揺れた。抽送 が終わる。どうやら同時に達したようだ。一成の身体が俺の身体の上に下りてくる。
「今日のことは一生忘れませんよ、望海様。あなたに惚れ直したこの日のことは」
俺はゆっくりと一成の身体に腕を回した。射精後の倦怠感は俺から全ての気力を根こそぎ奪い取ろうとしていたが、それよりも一成に対する愛しさが勝った。「一成ぃ……」名前を呼ぶと、俺の顔の脇でシーツに沈んでいた一成の顔が持ち上がった。緩やかな口付け。舌で口唇を舐め合いながら、暫く快感の余韻に浸る。
「……一度で、いいの?」
快感の残滓に震えるアナルの中に残る一成のペニス。熱い温もりを伝えてくるその感触は、既にある程度の硬さを取り戻しているようだ。だからこそ、終わりを告げるような甘い口付けに俺は尋ねた。瞬間、間近にある一成の顔が雄に変わる。
「まさか」
吸い込まれそうな輝きを放つヘーゼルアイズの中に、俺の顔が映り込んでいる。しどけなくも色気を感じさせる表情。これを手放すのは無理だろうなと、自分のことながら俺が思うと同時に、一成が俺の耳を吸ってきた。
「今夜だけはあなたは私のものですよ、望海様。私の気が済むまで付き合っていただきます」
耳の中に染み渡る台詞。俺はこくりと頷いて、一成の背中に指を立てた。
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