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幸せになれ!-4-※

 俺に見せつけるようにしてケツを犯し、予告通りに精液を注いだものの、幸汰のソレは硬度を保ったままだった。  既に二度イッていた俺は連続は無理だと。せめて休憩させて欲しいと訴えるが、いじわるな男はそれを無視し、俺をうつぶせにするとバックから貪った。  その後、体位を変えては色々な角度から蹂躙しつくされた俺は最後の方は殆ど意識がなく、気がついたらキレイさっぱり事後処理が施され、ベッドで眠らされていた。  喉の渇きで目を覚まし、だるい身体をなんとか上半身だけ起こすと幸汰がチェストに用意してくれていたペットボトルの水を飲み、一息吐いたところで頭を抱え込んだ。  熱に浮かされた痴態を思い返し悶絶する。  うわぁぁ!  うわぁぁ!  最中に感じ過ぎておかしくなり、しゃくりあげてマジ泣きしちゃったよ!  自分から望んだ行為だというのに「止めてくれ」「許してくれ」と懇願し、強過ぎる快楽から逃れる為に幸汰に訊かれるまま、言われるままに小っ恥ずかしいセリフを口走っちゃった。  うおぉぉぉぉ!  恥ずかしい。穴があったら埋まりたい。マジで! 「あぁ」「うぅぅ」と唸りながら頭を振っていると、その振動で隣に眠っていた幸汰を起こしてしまった。 「どうしたんだ? 何処か痛いのか?」  自分の言動と行動がイタイだけで身体は大丈夫だ。  いや、マジでしんどいけど。一週間全力で体育祭やったくらいだるいけど、大丈夫。  そう伝えようと幸汰へ向き直るが、その顔を見ると生々しい記憶が蘇る。 『ケツが好きなのか?』 『好き…お尻好き…お尻イッちゃう…いじわるやだぁ……』  グハッ!  死ねる。マジで死ねる!  思い出すな俺!  あれは俺であって俺じゃない。  全てはドSエロ変態幸汰の所為だ。俺は悪くない。  滅せよ悪しき記憶! 「平気平気。何でもない。あははっ……」  必死な自己説得の甲斐もあり、平常心を一つまみ程取り戻した俺は、先程の痴態を聖なる夜の奇跡いたずらとして処理する為に無理矢理笑ってみたが、効果はなかった。  都合良く記憶改ざんなんて出来ない!  恥ずかしい!  穴を掘って埋めてくれ!  両手で顔を覆い、身体を小さくしていると挙動不審の訳に思い至った幸汰は喉の奥で笑った。  そして慣れた手つきで俺の耳朶を撫でた。 「安心しろ。お前の恥ずかしい姿は俺しか知らないから」  エロティックに耳朶を弄ぶな!  感じるだろうが!  幸汰の手を振り払い、抗議をするように睨み付けるが、余裕の笑みで流された。 「そんな可愛い顔で睨むな。苛めたくなるだろ?」  顔がエロい! 声がエロい! 存在自体がエロい!  どんだけだお前。  つーか本当に同い年かお前!?  威嚇するようにガンたれると、予告通り苛められた。  項うなじを撫でられた俺はへんな声を漏らし、撃沈。  顔を背け、身体をずらし僅かに距離を取るが、直ぐに距離を詰められそして悪戯をされる。  肩に……背中に……頬に……。  指先で、唇で軽く触れては離れるを繰り返し、俺を困らせる。  何なのこれ?  甘甘いちゃいちゃ。バカップルのような空気。  元カレとの事後でもこんな現象は起きなかったぞ。  えっと、これって……。  もしかして、アフターケアってやつ?  俺の想像ではセックス後はシャワー浴びたら『さよなら』って感じだったんだけど。  幸汰てドライに見えて意外とサービス精神旺盛なんだな。  十万円分の仕事をしてくれているんだ。  有難う。  でも、これ以上にないくらい幸汰には相手をしてもらった。  強烈な一夜の思い出は確実に生涯忘れられないだろう。  証拠写真は手に入れた。  貴重な時間を分けてもらった。  もう十分だ。  正直名残惜しいが、あまり長く一緒にいたら欲が出てしまう。  離れられなくなる。  何事もケジメが大切だ。  胸に巣食う寂しさを無視し、それを取りに行く為立ち上がろうとするが、腰が抜けベッドに座り込んでしまった。 「へっ? 何これ?」 「バカ。あんだけヤったんだから大人しくしてろよ」  ヤったのは幸汰で俺じゃないよな?  俺は何度も止めてってお願いしたよな?  まぁ、それは置いておいて。 「トイレか?」 「いや、十万渡そうと思って」 「は?」  幸汰が眉根を寄せる。  あれ? 十万円じゃ駄目? 「やっぱ本番したから十万じゃ足りないか?」  次の瞬間。脳天にチョップが落とされた。 「いてっ!」 「痛いじゃねーよ。お前いい加減にしろよ」  なっ……何?  いい加減にって何? 「お前、俺の事、デリヘルか何かだと思ってんのか?」 「いや、デリヘルとは思っていないけど、幸汰は十万の為に俺としてくれたんだろ?」  再びチョップが落とされた。 「いって!」 「だから。お前は俺を何だと思ってんだよ!」  分かんない。  幸汰が何言ってんのか全然分かんない! 「お前、福未先輩に俺の事何て聞いてきたんだ?」 「へ? お前の事って?」  意味不明な質問に瞬きを繰り返す。 「俺の事聞いてきたんじゃないのか?」 「何の事?」  幸汰は頭をバリバリと掻いた。 「お前、どういう経緯でうちの店に来たんだよ」 「どういうって……福未先輩に自分の名前を出せば付けで食える店だから、好きなだけ飲み食いしろって言われて……」 「……それだけか?」 「うん」  幸汰は盛大な溜息を吐いた。 「それで何でお前は俺を買うなんて事したんだよ」  さっきまで散々痴態を晒しはしたが、幸汰が初恋の相手で高校の三年間ずっと好きだったなどと恥ずかしくて言えない。 「ノリと勢い?」  適当な言葉でお茶を濁そうとするが、幸汰は濁されてくれなかった。  ベッドへ押し倒され、上に乗られる。 「言いたくないなら言いたくなるようにしてやろうか?」  それって、あれ? 『身体に訊いてやる』てやつ?  腰が抜けている状態なのにもう一回とか無理だから。  止めてくれ。頼むから……。

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