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淫紋を刻まれた王子はついに魔法使いと対峙する(前)
目を覚ますと、フリードの姿はもうなかった。
時刻は昼近く。流石に明け方までセックスに励んでいたからだろう。忌々しい淫紋は鳴りを潜めているようだ。ならば今の内だ。俺は昼食を取るついでに父にフリードの件を報告すべく、身支度を済ませて自室を出た。ついでに部屋前で警備に当たっている兵士にフリードがどうしているかを尋ねてみたところ、今は詰所で仮眠を取っているようだ。
どうやら城の警備の陣頭指揮を執るつもりでいるらしい。確かに度々ヌーベルに侵入を許している状況は見過ごせないものであるし、その上で職務に忠実なのは頼もしいことだが、西方から戻ったばかりであるのだ。この状況であれこれ云う奴もいまいし、今日ぐらいは実家に顔を見せにいってやればいいものを。と、奴の両親の顔を思い浮かべながら食堂に向かう。
「愛人……だと?」
「愛人です」
俺の腹に淫紋が刻まれてからというもの心労の絶えない父は、大臣らが列席する場でのフリードの乱心に張り詰めていた糸が切れてしまったようだ。何かを諦めきった様子で俺の報告を聞くと、「それでお前の淫紋の力が弱まるというのであれば、許してやらんこともないが」と、問題の解決を放棄したような台詞を吐く。
「父上、お気を確かに」
「この状況で気を確かにもないだろう。お前の腹に淫紋が刻まれてからというもの、常軌を逸した問題ばかりが発生しているではないか」
「ヌーベルをどうにかすれば解決する問題ばかりですよ、父上」
「フリードの気持ちはそういった問題ではないぞ」
溜息混じりに呟いた父に、俺は返す言葉を失った。
全くその通りである。
ヌーベルの魔法によって生み出された淫紋や膣、子宮の問題については、ヌーベルを倒せばどうにかなる問題であったが、フリードが俺を好きだの愛しているだの云い出した問題については、フリード自身の感情の問題である。とはいえ、俺が乱交に励まなければ、恐らく奴の性格だ。一生、自分の気持ちを胸に秘めていたのではなかろうか。
そうである以上、俺としては矢張りヌーベルを倒すのが先決という話になってしまうのだが、父としては進展が見えない状況だけに、そこについてはもう深く考えたくないのだろう。フリードなら間違いも起こすまい。と、恐ろしい台詞を吐く。
「しかし、フリードを愛人とするとなると、俺の正妃の成り手がいなくなる可能性も」
「ならば、フリードを正式に婿として取ればいい。王婿 として番えば問題もあるまい」
「問題しかないような気がしますが」
俺は困惑した。
愛人ならばまだしも、王婿 である。正室として公の場に出る機会も数多い立場にフリードを就けるとなると、流石に国民への現状説明は避けられない。だというのに、父は鷹揚に構えてくれたものだ。いや、最早、全てを諦めきっているのかも知れない。俺が思っているよりもあっさりと言葉を継ぐ。
「どの道、このままでは、お前が女性と結婚をするのは難しいだろう。それならば、フリードと番って国を支えてもらった方が、儂としては安心出来る。何、跡継ぎについては心配するでない。先王の血筋を頼ればよい」
はあ。と、俺は気の抜けた返事をした。
父が否定をしてくれれば、それを権威として断るのも容易ではあったのだが、そういった考えは父の中にはなさそうだ。仕方がない。俺は腹を括った。こうまで父に云わせてしまった以上は、真面目に奴との今後について考えなければ。
俺は食堂の正面にある暖炉の上に目を遣った。
王城のいたるところに飾られている俺の母の肖像画が、穏やかな笑みを浮かべて俺を見下ろしている。
父がただひとり永遠の愛を捧げると誓った女性は、もし生きていたら俺になんと云ってくれただろうか。その答えが俺にはわからないからこそ、せめてそうなれる相手と番えるように努力をすると母の肖像画に誓うことにした。見ていてください、母上。胸の内で誓いの言葉を吐く。
それ以上、フリードの話題について語らなくなった父に、雑談を交えながら食事を進める。今日の俺の淫紋が腹から薄れているからだろう。落ち着いた息子の様子に、父としてもは心穏やかでいられるようだ。特に問題もなく食事を終えた俺は、父を見送ってから食堂を出ることにした。
「フリードのことだが」
「はい、父上」
「断るにせよ、受け入れるにせよ、真面目に考えよ。それが奴の忠義に報いる唯一の方策だ。わかったな、ガシュー」
最後に釘を刺すように云い置いて食堂を出て行った父に、俺は考え込んだ。
これまで同性をそういった対象に見たことのなかった俺は、フリードという忠義に尽くした乳兄弟でさえも、それ以上の立ち位置に置いたことがなかった。淫紋を腹に刻まれてからというもの、好みで同性をカテゴライズすることは増えたが、それにしたってベッドで同衾する相手としてだけだ。好意や愛情といった意味で同性を選別したことの一度もない俺が、果たしてフリードをそういった対象として見ることが出来るのか。昨日の今日で降りかかった難題に、頭を悩ませながら食堂を出る。
「お待ちしておりました、王子」
どうやら仮眠を終えたようだ。扉の外で待ち構えていたフリードに、ああ。と、短く返す。
「私が城を開けていた間に、随分と怠けていらしたご様子。ですので、本日は久しぶりに剣の稽古をいたしましょう」
俺の淫紋のことなど全く意に介さない様子のフリードに、俺はあからさまに溜息を吐いた。
全く堅物にも限度がある。けれども、それがフリードという男の美徳なのだ。
陰では口さがない大臣たちも、俺の前では借りてきた猫のように大人しくなる。兵士たちに至っては何を況やだ。そういった状況で、俺の立場に臆せず物を云ってくれる。俺が奴を煙たがりつつも頼りにせずにいられないのは、俺と本音で向き合ってくれる臣下が奴しかいないからでもある。
「おいやですか、王子」
「お前、今日の今日でよくそれだけ動こうと思えるな」
「体力がなければ将軍職は務まりませんが故」
真顔で云い切ったフリードが、俺に稽古用の木剣を渡してくる。
どうやら奴の中では、俺との剣の稽古は決定事項であるようだ。俺は仕方なしに木剣を受け取った。思えばこの数か月というもの、セックスに明け暮れてばかりで、まともに剣の稽古をした覚えがない。城内で過ごす生活も続いている。そろそろ外に出たくもあるし、ここは久しぶりに剣の稽古と洒落込むことにしよう。
「いいだろう」俺は笑った。「だが、手加減はしろよ。こっちは朝方までお前の相手をしてたんだ」
「それは王子の腕次第ですね」
無邪気にも映る笑みを浮かべたフリードが、俺を先に行かせるようと手で廊下の先を示す。もしかすると、こいつにとって剣の稽古とは、子どもの頃に一緒に遊んだ日々の延長線上にあるものなのかも知れない。俺は奴の前に立って訓練場に向かいながら、負けてなるものかと木剣の柄を握り締めた。
※ ※ ※
打ち据えられた木剣が地面に転がった。
しまった――と思うも、時既に遅し。俺が剣を拾うよりも先に額に突き付けられるフリードの木剣に、勝負が決したことを認めた俺は諸手を挙げた。まだまだですね、王子。そう笑った奴が木剣を鞘に納める。俺は足元に転がっている木剣を取り上げて、自らもまた木剣を鞘に納めた。
想像以上に腕がなまってしまっていた。それを思い知らされたのが口惜しい。
セックス漬けになっていた四か月は、俺から様々なものを奪っていった。大好きだった馬に乗る時間、広大な中庭を散策する時間、将来の為に勉学を修める時間もそうだったし、剣の稽古に励む時間もそうだった。次期国王としての自覚があるからこそ、俺は周囲の期待に応えるべく、どれも誠心誠意努めてきたつもりだ。だのに今の俺はどうだ。淫紋に支配されては本能の赴くがまま、セックスに明け暮れるばかり。
「口惜しいな」
「またこれから積み重ねてゆけばいいのですよ、王子」
フリードの言葉に、俺は力強く頷いた。
まともな打ち合いにすらならなかったフリードとの稽古。攻めた先から剣を落とされる今の有様では、ヌーベルから自力で身を守るのは難しいだろう。ならば頑張るしかない。俺は決意した。淫紋の状況次第ではあるが、今後はきちんと剣の稽古に身を入れるようにしよう。
「お前はいつまでこっちにいるんだ」
「あの忌まわしき魔法使いの問題が片付くまではいるつもりでおります」
「なら、付き合え。暫く庭にも出してもらえていなかったんだ。お前が一緒なら、父も許してくれるだろう」
俺はフリードを伴って、中庭の散策に出ることにした。
これまで王城に閉じ込められる生活を送っていただけに、外の景色が新鮮に感じられる。緑溢るる中庭には、花がめっきり減った。あれだけ咲き誇っていたジャカランダの花にしてもそうだ。亜熱帯の気候でないと花を付けないジャカランダは、少し気温が下がっただけでも花を散らしてしまう。
「夏の終わりだな」
俺は葉ばかりが繁る中庭を歩んで行きながら、フリードに語りかけた。
俺の国には、夏か夏以外の季節しかない。通年通して温かくはあるが、それだけに、夏の暑さは常軌を逸するレベルである。将軍職に就いているが故に、全身鎧の装着が義務となっているフリードにしてみれば、蒸し風呂のような鎧内の熱さから解放される季節の到来だ。過ごし易くなりますね、王子。と、穏やかに言葉が返ってくる。
「ところでフリード、西方土産はないのか」
「いいタイミングで訊いてくださいましたね、王子。足をお止めくださいますか」
なんだ? と、思いながら足を止めて振り返る。
「カングー族の厄除けのお守りなのだそうです」
差し出されたお守りは、人型になるように小枝をカラフルな紐で結んだものだった。
何でもフリードの粘り強い交渉に感心したカングー族の酋長がくれたものだそうで、素材が素材だけに壊れやすそうにも思えるが、呪術でコーティングが施されている為、多少の衝撃ではびくともしないらしい。
そんな大事なものを受け取る訳にはいかない。俺はフリードにお守りを突き返そうとしたが、大事な人間に身に付けてもらえと幾つか渡されたのだそうだ。家族の分もありますから大丈夫ですよ。そう口にして複数のお守りを見せてくるフリードに、それならばと俺はお守りを受け取った。腕輪に早速取り付け、先を往く。
「西方はどうだった。ここよりも気候が穏やかだと訊いているが」
「暑いことには違いありませんね」
「それはお前が全身鎧を着ているからだろう」
「そうは仰いますが、王子。王都と比べても3℃ほど平均気温が低いだけですので、そこまで涼しいと感じるほどでは……」
「成程」俺は頷いた。「今の気候みたいなものか」
俺は更に中庭の散策を続けた。フリードの土産話に耳を傾けながら、爽やかで気持ちのいい風を全身に浴びる。
このまま厩舎を目指そうか。
久しくしていなかった剣の稽古が出来たことで、俺は気を良くしていた。日中をこうも穏やかに過ごせるなど、これまでの状況では考えられないことだ。これならば馬にも乗れるのではないか? 欲が出てきた俺はフリードを振り返った。
「馬に乗りたい」
「今日は気持ちの良い陽気ですからね。こういった日に乗る馬は格別でしょう」
乗馬の意志を伝えた俺に、フリードは異を唱えたりはしなかった。ただ、流石に単独で馬に乗せるのは危険だと判断したようだ。淫紋が悪さを始めた際に責任が取れないからだろう。私と一緒であれば構いませんよ。と、厩舎へと足を向けた俺の跡をついてくる。
それでもいい。と、俺は頷いた。
迫りくる厩舎から馬の鳴き声が聞こえてくる。俺は久しく合わずにいた馬丁に声をかけた。ご無沙汰しております、殿下。嬉しそうに顔を綻ばせた馬丁が、俺の命令に従って軍馬を厩舎から出してくる。黒毛の軍馬は、一年を通して暑い陽気に耐えられるように改良された特別な品種だ。俺が馬に乗れずにいた間も手入れを欠かさずにいてくれたおかげで、毛並みの状態がすごぶるいい。俺は四か月ぶりの乗馬に胸を高鳴らせながら、フリードの導きに従って馬に上がった。
手綱はフリードが取った。
背中に当たるフリードの厚い胸の感触に落ち着かなさを感じもしたが、馬が動き始めるとそんなことは気にならなくなった。とにかく世界が気持ちいい。肌に触れてくる風の心地よさ、鼻腔を擽る草木の香りの匂やかさ、視界一杯に広がる青空の艶やかさ、全てが俺を待ち望んでいたように感じられる。
「如何ですか、王子。久しぶりの乗馬は」
「気持ちがいいな。手綱を自分で取れれば最高だ」
「持ってみますか?」
暫く走ってみて、問題がないと判断したのだろう。手綱を渡そうとしてくるフリードに、いや、いい。と、俺は首を振った。
何だか手足が熱い。
この火照りは間違いない。自由に動けたことで安心しきっていたが、今の俺の淫紋はいつ力を発揮し出すが不明な状態だ。焦った俺は腹の様子を窺った。肌に同化するまでに薄くなっていた淫紋が色付き始めている。
「馬を止めてくれ、フリード」
「畏まりました、王子」
急ぎフリードに馬を止めさせて、地面に降り立つ。
足元から駆け上がってくるような焦燥感が俺を急き立てる。ああ、やりたい。馬でも人でもいい。とにかくセックスがしたい。次々と脳内に思い浮かんでくる物騒な考えに、理性を振り絞った俺はその場にうずくまった。
馬丁の目もある中で、自らの軍馬だのフリードだのを相手に痴戯に耽る訳にもいくまい。だったらこの場に倒れてしまった方がまだマシだ。俺は必死になって自分を抑えた。次第にまともな思考が形を失ってゆく中、最後の力を振り絞ってフリードに命じる。
「俺を部屋に連れて行け、フリード。あとのことは、お前に任せる」
直後、俺の身体を担ぎ上げたフリードが走り出した。早くセックスがしたい。早く。俺はフリードの身体にしがみついて、自室に運び込まれる瞬間をひたすらに待った。逞しい肉体だの、ペニスだのが絶え間なく脳裏に浮かんでくる。ああ、やりたい。セックスがしたい。自我が少しずつ崩壊してゆくのがわかる。セックスだ。俺はぜいぜいと喘いだ。逞しい肉体に包まれて、逞しいペニスで突き上げられたい。挟み込まれるのもいい。俺の二つの穴を、精液でドロドロになるまで犯されたい。立て続けに浮かんでくる欲望に、身体が更に熱を帯びた。
「王子。あと少しの辛抱ですよ、王子」
「わかって、る……」
中庭を最短距離で駆け抜けてゆくフリードの疾風のような動きに感心している暇もないままに、俺は自室に運び込まれた。
「殿下のご様子は」
「一刻を争うようだ。頼んだぞ」
道中で手筈を整えていたようだ。既に扉前に控えていた三人の兵士たちが、フリードに招かれるがまま室内に足を踏み入れてくる。バーターに、ブランに、アルター。流石に緊急事態だからだろうか。三人とも緊張が滲み出る面持ちだ。
待ちきれない。俺は自ら身体に纏わり付いている薄布を取り去った。
警備の為か。フリードは部屋に残るつもりでいるようだ。扉前に陣取って、仁王立ちでいる。
他人の視線に晒されながらの乱交は初めてでもあるが、かといって俺の性欲が治まる筈もない。とにかくセックスがしたい。その気持ちに急き立てられるようにして、先にベッドに上がってきたバーターのズボンを下した俺は、早速と股間に下がったペニスを口に含んだ。
喉奥まで飲み込んで、顔を動かす。「もう大丈夫ですよ、殿下。よく頑張られましたね」そう口にしたバーターの厚みのある手が、俺をあやすように髪を撫でてくる。ああ、やっとセックスが出来る。安堵した俺は瞳を潤ませながら、バーターのペニスを口の中いっぱいに頬張った。
俺の媚態を目の当たりにしても表情を変えることのないフリードが怖くもあるが、セックスをしないことには治まらない衝動であるのだから仕方がない。俺はなるべくフリードを視界に入れないようにして、口内にあるバーターのペニスに舌を絡ませた。次いでベッドに上がってきたブランの手が、背後から俺の乳首に触れてくる。
「ああ、もうこんなに硬くされて。よくぞここまで耐えられましたね、殿下。さあ、一緒に気持ち良くなりましょう」
乳首を捏ね回された俺は、身悶えながら、バーターのペニスを吐き出した。唾液で濡れそぼった赤黒い肉の塊が、そそり立つように天を仰ぐ。ああ、これが欲しい。これで突かれたい。俺は再びバーターのペニスにむしゃぶりついた。
乳首から緩やかに滲み出る快感に、俺の陰部がじくじくと疼き出す。特にペニスと淫唇 だ。呆気なく粘液に塗れたふたつの性器がシーツに染みを作っる。俺はもどかしさに腰をくねらせた。それが目に付いたのだろう。ベッドの脇から手を伸ばしてきたアルターの指が、俺のペニスに絡み付く。
「酷く濡れておられますね、殿下。もう欲しくて仕方がないのではありませんか?」
アルターの囁きに、俺はこくこくと首を縦に振った。
ブランに指先で乳首を摩られ、アルターに陰茎を扱かれてはいるものの、その程度の緩く続く快感では俺の貪欲な身体は治まりはしない。もっと、もっと強烈な快感が欲しい。俺は漲り切ったバーターのペニスを口から吐き出した。そして、亀頭やら、陰茎やら、陰嚢やらと、ところ構わず口付けながら懇願した。
「頂戴。俺のマンコにこのぶっといチンポを頂戴」
「少し早い気もしますが、いいですよ。先ずは落ち着きましょうね、殿下」
腰を落としたバーターが、俺の脚を引っ張って開かせる。同時に脇に差し入れられたアルターの手が、俺の身体をベッドに倒した。ああ、早く。早くぅ。強い快感を求めて声を上げ続ける俺に、ブランが口付けてくる。
俺は一も二もなくその口唇にむしゃぶりついた。
胸の辺りでは、アルターが俺の薄い乳房を揉みながら、右の乳首に舌を這わせている。ちろちろと乳頭を舐られた俺は、びくびくと腰を跳ねさせた。灯火器 に火が灯るように、乳首が熱を帯びてゆく。
「滅茶苦茶うねってますよ、殿下の雌マンコ」
更にその下では、バーターが俺のうねる淫唇 に照準を合わせている。亀頭を当てただけでも、俺の淫唇 が収斂を繰り返しているのが伝わってくるのだろう。俺の耳元に囁きかけてくると、ぐいと腰を進めてくる。
「挿入 ますよ、殿下」
ややあって、蜜壺の中に押し入ってくる肉棒。ん、ふぅっ。俺は足先を突っ張らせた。まだ挿入されることに不慣れな淫唇 が悦びに震えているのがわかる。堪らなくなった俺はブランから口唇を離した。肉の壁の奥でバーターのペニスが律動 を刻む度に、快感が押し寄せてくる。ああ、あぅ。いいぃ。そこ、奥、奥をもっと突いて。あられなく声を上げながら、俺はバーターに合わせて腰を振った。
「ああ、殿下。素敵ですよ、殿下」
俺の顔を覗き込んでいたブランの顔が視界から消える。直後、左乳首に吸い付かれたかと思うと、するりと下りてきた手指がペニスに絡み付いた。あぅ。俺は全身を悶えさせた。淫唇 をペニスで突かれながら両乳首を舐られ、ペニスを扱かれている。
「まだですよ、殿下。こちらも可愛がってあげますからね」
当然、アルターも黙ってはいない。右乳首を舐りながら俺の浮いた腰に手を潜り込ませてくると、双丘を割って菊座 に指を挿し入れてくる。
「ひゃぁっ。あ、ああ。らめぇ。全部は、らめぇ……」
刺激に弱い部分を一度に責められた俺は、快感の洪水の中で理性を消失させた。ブランの口の中で乳頭を転がされては身悶え、アルターの舌先で乳首を突かれてはよがり、亀頭の先端やら陰茎やらを扱かれては息を荒らげ、菊座 を掻き混ぜられては腰を震わせる。
何より、バーターの肉感的なペニスから生み出される快感!
淫唇 でしか感じられない強烈な刺激に、俺は恍惚の表情を浮かべた。ああ、いい。いい。いく。陰部に一極集中した快感が、陰嚢の奥から精液を押し上げてゆく。らめ、いく。らめぇ。もう、口が上手く回らない。俺は天井を見上げた。いつしか三人の兵士たちが、快楽に浸かり切った俺のだらしない顔を見下ろしている。
「あぅ、らめ。いぐ、らめ。いくいく、いくぅ」
ややあって、下半身からすとんと力が抜けた。
あ。と、思ったときには遅かった。陰嚢から脳まで突き抜けてくる強烈な快感に、ペニスから黄金色の液体が噴出してゆく。
ああ、やだ、見ちゃらめぇ……俺はがくつく腰を突き上げながら、尿道を必死になって引き絞った。そんな俺のみっともない姿を、陶然と微笑みながら眺めている三人の兵士たち。自分たちの手練手管 によって導かれた醜態だからだろう。満足しきった表情でいる彼らに、俺は泣き出してしまいそうなほどの羞恥に襲われた。
「ベッドの上での粗相はいただけませんね、殿下」
揶揄うように言葉を吐くバーターに、かあっと頬が熱くなる。
潮を吹いたことはあったものの、漏らしたのは初めてだ。そのぐらいに快感漬けにされた下半身からは、他の感覚がなくなってしまっていた。気持ち良かったんですね、殿下。言葉を続けたバーターが、笑いながらペニスを引き抜く。奴は俺が気付かぬ内に、俺の中で達してしまっていたようだ。淫唇 の奥から、粘り気のある体液がどぷりと溢れてくる。
「これはお仕置きですね」くっくと笑ったアルターが、俺の身体を引き寄せてくる。「たっぷり私のチンポを味わっていただきますよ、殿下」
そのまま、俺を上にする形で菊座 にペニスを押し込んできたアルターが、俺の太腿を両手を添えながら腰を動かし始めた。あ、ああ。俺は腕を上げてシーツを掴んだ。絶頂 を感じはしたものの、射精を済ませていないからか。直ぐに俺の身体は快感に飲み込まれてゆく。
「ああ、殿下。お可愛らしい殿下。是非わたくしめのチンポも慰めてくださいませ」
バーターと入れ違いに俺の正面に回ってきたブランが、隆々と反り返ったペニスを見せ付けながら腰に手を回してくる。俺はブランが挿入し易いように脚を自ら大きく開いた。いれて、お願いいれて。涙目になりながら頼み込めば、精液に塗れた淫唇 に肉棒が突き立てられる。
「あっ、あっ、あっ。すごい、奥、すごいっ」
肉癖越しに蠢く二本のペニス。上下に揺さぶられながら喘いでいると、脇に控えていたバーターが乳首に手を伸ばしてきた。菊座 をアルターに、淫唇 をブランに犯されている俺の姿に、またも欲情を掻き立てられたようだ。殿下と呼ばれて顔を横に向ければ、射精を済ませたばかりのペニスが熱を帯び始めているのが目に入る。
「殿下、私にもお慰みを」
バーターの言葉に俺は口を開いた。
舌を突き出して、差し出された奴のペニスを受け止める。舌先に感じる重みが心地よい。そのまま口内に潜り込んでくる亀頭に、俺は口唇を窄めた。穴という穴を塞ぐ生温かい熱。俺の頭を押さえ付けながら腰を動かし始めたバーターに、ん、んぅ。俺はくぐもった声を上げた。
――ああ、殿下。殿下。最高ですよ……
三人の兵士たちの逞しい肉体に包まれながら、俺は絶え間なく悶え続けた。ペニスの先から洩れ出た精液が、俺の腹に幾つもの染みを作っている。
代わる代わる場所を変えては、菊座 に淫唇 、口唇とペニスを咥えさせてくる彼らに、俺の意識は限界が近かった。
ああ、イク。口を塞がれたままの俺は、震える足先に力を込めて背なを大きくしならせた。直後、淫唇 の奥で快感が弾け散ったかと思うと、溜まりに溜まった精液がペニスの先端から噴出した。白く染まった脳内が、一瞬にしてブラックアウトする。
くたりと力の抜けた俺の身体は操り人形のようだ。俺は三人の兵士に包み込まれながら、次第に意識を遠のかせていった――……。
※ ※ ※
目を開くと、ベッドの中にいた。
湿ったシーツとマットレスは交換された後のようだ。寝心地のいいベッドに、薄掛けのブランケットを除けてのそりと身体を起こせば、まだ警備を続けていたらしい。扉の前に陣取るフリードの姿が目に入る。
俺は自分の腹部を窺った。
薄紅色に染まった淫紋が形を残している。だろうな。と、俺はベッドを降りた。睡眠不足が祟ったのだろう。たった一度の射精で意識を失ってしまった俺に、三人の兵士は性行為を続けられなかったに違いない。俺は火照った身体を持て余しながら、フリードに近付いた。
「起きられましたね、王子。続きをなさいますか。なさるのであれば、兵士たちを呼んで参りますが」
「いや、いい」俺は首を振った。
ヌーベルから俺を守る為とはいえ、将軍であるフリードが部屋に陣取っている状況では、さしものあいつらも本性を発揮出来なかったとみえる。いつものセックスよりも淡白な言葉責め。もっと羞恥に塗れた扱いが好きな俺からすれば、今日のセックスは消化不良感を残すものだ。
「何故です、王子。淫紋がその様子では、また直ぐに自我を失われてしまうでしょうに」
だのにフリードは、澄ました表情をぴくりとも変えずに、己が抱いた疑問を素直に口にしてみせるのだ。
俺は呆れ果てた。
一介の兵士からすれば、将軍職に就いているフリードは雲の上の存在だ。その視線に晒されるプレッシャーは計り知れない。それでも、あいつらはベストを尽くして俺をこちら側に引き戻してくれた。それに感謝こそすれ、文句を云う筋合いはない。だが、今、あいつらとセックスを繰り返したところで、俺が完全に満足することはないのだ。
それは、忌々しいこの淫紋が腹に居座り続けることを意味している。
フリードに悪気はない。わかっている。だが、こいつの振る舞いが俺の回復の邪魔になっているのは事実だ。それをこいつは理解出来ていないのではないか? 俺は精悍なフリードの顔を真っ直ぐに見上げながら尋ねた。
「何故も何も、俺のセックスをお前はここで見物し続けるつもりなんだろう」
「見物とは酷い物云いをなされますね。有事の為に控えているだけですのに」
「お前がいると、奴らが自分を抑えてしまう」
俺はフリードの首に腕を回した。
「だからお前が責任を取れ」
あいつらが駄目なら、フリードを使うしかない。とは、自分でも狂気に満ちた思考回路をしているとは思う。けれども、セックスをしたい気持ちに歯止めが利かない俺は、こうするより他にない。現に今の俺は脳全体に薄い膜が張っているような感覚がある。このままでは、フリードが口にした通りに遠からず自我を失うだろう。
「出来ませぬ、王子」
耳に飛び込んできた返事に、驚いた俺は目を瞠った。
やんわりと俺の身体を引き剥がしたフリードが、真摯な眼差しを俺に向けている。何故だ。俺は昨晩のフリードを思い返した。一度限りと云っただけあって、そのセックスは熱情的だった。その最中に、俺を好きだと云い放った奴が、俺との性行為を拒むだと。
「今朝方まで頑張ったツケがきたか? お前がこの程度でへばる性質とは思えないが」
「国王陛下と一夜限りと約束しております」
「成程」俺は額に手を置いて首を振った。「だが、このままでは俺は正気を失う」
腹の淫紋は少しずつ色を増しているようだ。ああ、セックスがしたい。強烈な衝動に襲われた俺は、残された理性で俺が取り得る手段を考えた。とはいえ、フリードに俺を満足させてもらうか、どうにかしてフリードに部屋から退室してもらった上で、あいつらともう一度セックスをするかのいずれかぐらいしか思い浮かばない。
「兵士を呼びにやりましょう、王子。私のことは路傍の石とでも思ってもらえばいいのです」
「お前、わかっているのか? あいつらにとって、お前は上官の更に上に存在している上官だぞ」
「その程度で怯む兵士では、いざという時に王子を守れませぬ」
「無茶を云うな!」
限界だ。俺はフリードの口唇に口唇を重ねた。王子。と、奴が口唇を動かしたのが伝わってくる。
「いいからその邪魔な全身鎧を脱げ」俺はフリードから顔を離してベッドを指し示した。「そしてベッドに上がれ。でないと俺は爪を剥がしてでも、お前の鎧を脱がしてやる」
「人生で初めて聞く脅し文句ですね、王子」
「当たり前だ。俺は正気を失いたくない」
城を離れていたフリードは知らないのだ。淫紋を刻み付けられた当初、どうすれば淫紋の力が治まるのかわからなかった俺が、理性を消失させてしまった結果、城内の人間に襲いかかっていったことを。
自身もまた止めに入った父曰く、それは酷い有様であったようだ。通りかかった使用人から、厨房に詰めていた料理人。勿論、警備に当たっていた兵士たちも例に洩れない。目に付いた同性に手当たり次第に飛びついていく俺は、まるで淫魔かと見紛うほどにぎらついた表情をしていたらしい。
最終的に多勢に無勢で取り押さえられたから良かったものの、そうでなかったらどうなっていたことか。俺に襲いかかられた者の中には、未だに俺を恐れて近付けない者もいる。俺が自尊心を捨ててまで、淫紋の力を抑える為のセックスに励んでいるのは、そういった事件を自分が犯してしまったからに他ならない。
俺は再びフリードに口唇を重ねていった。啄むだけだった先程の口付けとは異なり、今度は積極的に舌を絡めにいく。抵抗する気はないようだ。俺にされるがままでいるフリードに、暫く口付けを繰り返してから俺は顔を離した。
「どうだ、少しは云うことを聞く気になったか」
「多少は」俺の手を取ったフリードが、手の甲に口付けてくる。「この美しい爪がなくなるなど考えられませんので」
「なら脱げ。そして俺をベッドに運べ」
「……畏まりました、王子」
俺の命令に困惑した表情を浮かべたフリードだったが、覚悟を決めたようだ。外の兵士に、扉越しに警備を厚くするように命じると、俺を振り返って鎧に手をかける。
肩当てに、胸当てと、重厚な鎧がパーツごとに取り去られてゆく。
俺はフリードの衣装が下着を残すまでになったところで、身体に巻き付けられている薄布を取り去った。早く。急かすように口にして、フリードに向けて手を伸ばす。直後、身を屈めたフリードが俺の身体を抱え上げた。
「早く、しろ。でないと、俺がお前を襲うぞ」
「存じております」
俺をベッドに運んだフリードがどこか悲し気な表情でいるのは、恐らくは俺を本気で愛しているからなのだろう。
当たり前だ。ベッドに身体を横たえられた俺は、降るようなフリードの口付けを受けながら、奴の胸中を慮った。精神的な繋がりがなくとも他人と寝所をともに出来る状態の思い人が、自分の気持ちを知った上で自分を求めているのだ。これで生真面目な男がどうして心穏やかでいられたものか。
かといって、誰ともセックスせずに済ませられもしまい。
俺は全身を舐るつもりでいるらしいフリードを払い除けた。そして、途惑いを露わにしているフリードの身体をベッドに押し付けた。もう、限界なんだ。そう口にすれば、俺の気持ちを汲み取ろうと思ったのだろう。腰にフリードが手を回してくる。
「ご自分で挿入 てみますか、王子。好きに腰を動かせば、発散出来るかも知れませんよ」
「楽をしようとするな。お前も動け。あと、俺は好き勝手に扱われるのが好きだ。だからベッドの中では、お前も好きに俺を扱え。いいな、命令だ」
俺はフリードの腰に跨った。
「昨日はあれだけ恥ずかしがっておられたのに」
小さく笑いながら言葉を発したフリードに、俺は舌を突き出してやった。そして、すっかり漲り切った奴のペニスに手を添えて、濡れそぼる淫唇 にあてがう。そうですね。俺の言葉に返事をしたフリードが、腰を掴んでいる手に力を込めてくる。ぬぷりと挿入 り込んでくるペニスが、口を狭くしていた淫唇 を押し広げてゆく。
ああ。俺は吐息混じりの喘ぎ声を吐き出した。
今度こそ楽になってやる。その気持ちのままに腰を前後に揺すれば、「きつい、ですよ。王子」と、フリードが嗤った。
「もう少し腰の力を抜いてはいただけませんか。そんなに締め付けられては千切れてしまいます」
どうやら気持ち良くなりたいがあまり、力を入れ過ぎていたらしい。俺は慌てて腰の力を緩めた。と、フリードの手が腰から乳首へと上がってくる。続けて動き始める奴の腰。指の腹で乳頭を撫で回してきながら、淫唇 を突き上げてくるフリードに、俺は身悶え、そして喘いだ。
「あっ、あぅ。ああ。そこ、そこ、もっと」
「乳首を擦られながら、突かれるのがお好きですね、王子は」
フリードの言葉に、俺は大きく頷いた。
ゆるゆると抽送を繰り返すフリードのペニスが、淫唇 の内側にある肉の壁を擦っている。感じ易く作られただけあって、具合は最高だ。ここを責められているだけでも気持ちがいいのに、乳首まで弄られている。歯止めのない快感に、俺は辺り憚らぬ声を上げた。
「好き、好きぃ。あ゙、あ゙、いく。いくいくぅ。も、いくっ」
「いいですよ、王子。ほら、イキましょう」
亀頭が子宮口を叩く度に快感の度合いが増してゆき、下半身の力を奪ってゆく。俺は背なを大きくしならせた。自重で嵌まり込んだペニスが、淫唇 の奥で小刻みに揺れている。
「ああ、いく。も、ほんとにいくっ」
直後、瞳の奥で光が弾けた。臀部をぐいぐいとフリードの股間に押し付けるように動かすと、長い絶頂 が淫唇 の底に広がる。あ、ああっ。精を吐き出しきった俺に、まだですよ、王子。口元にうっすらと笑みを浮かべたフリードが、ペニスを一度抜く。
「やだ、やだぁ。今、いったばっか」
ベッドに身体を伏せさせられた俺は、手を引きながら菊座 に挿入を果たしたフリードに、びくびくと背中を震わせた。
達した直後の身体は敏感だ。遠慮なく腰を進めてくるフリードに、俺は喘いだ。あっ、ああ。亀頭が前立腺を掠める度に、陰嚢の底から快感が這い上がってくる。
「ああ、お可愛らしい王子。幾らでもイカせて差し上げますからね」
頭上で喘ぐように言葉を吐いたフリードが、俺の腰を抱え込んで胡坐をかく。そして、俺の脚を開かせると、淫唇 にその太い指を潜り込ませてきた。
「こんなに中をうねらせて。まだまだ物足りなかったのですね、王子」
蜜壺の中を掻き混ぜながら腰を動かしてくるフリードに、俺はシーツに立てた爪先を突っ張らせた。壁一枚を隔てて蠢くペニスと指。膣がなければ経験することのない快感が、俺の脚から力を奪ってゆく。
「指にもペニスにも絡んでくるようです。ほら、王子。如何ですか、両穴を責められるのは」
「い、いいっ。あぅ。そこ、そこを擦ってぇ……」
同じセックスでも、兵士たちとフリードとでは、俺の感じ方が異なるようだ。子どもの頃からの付き合いだからなのだろうか。どこか緊張感を孕んだ兵士たちとの逢瀬と比べると、フリートの逢瀬は気心が知れているからこその安心感がある。
こいつに任せておけば、万事上手くゆくのではないか……。
決して俺を傷付けまいとしているのだろう。柔らかく俺に触れてくるフリードの手指に、俺は自然と身体を開いていた。脳が蕩けるような心地よさが全身を支配している。規則的な律動 を刻みながら、菊座 の奥を叩かれる。ああ、また、またいく。俺は身体の芯からせり上がってくる快感に全てを委ねた。
「ああ、王子。王子。私の全てを受け止めてください、王子」
俺はこくこくと頷きながら、その瞬間の訪れを待った。
そろそろ射精が近いのだろう。菊座 の奥で息衝いているフリードのペニスが、更に熱を増したように感じられる。俺は俺を抱え込んでいるフリードの腕を掴んだ。いく、またいっちゃう。絶え間なく声を発しながら、腰を前後に揺する。
「ほら、王子。いってください。私も直ぐにイキますから」
滲んだ視界の向こう側に、点滅を繰り返す光が見える。
絶頂 が近いのだ。
俺は爪先に全ての力を込めて踏ん張った。小刻みに菊座 の深いところを叩いてくる奴のペニスに、淫唇 の感じ易い部分をしきりと擦っている奴の指。ああ、ああ、ああ。俺は忙しなく喘ぎ続けた。痺れるような快感が淫唇 の奥から立ち上ってくる。
「あん、はぁっ、あああぅ……っ!」
一瞬にして白けた脳に、背中を反らす。びくびくと跳ねる腰に奴も絶頂を迎えたようだ。俺の身体を強く抱え込んできたフリードが、腰を二度、三度と震わせて、菊座 の奥に精液を注ぎ込んでくる。
「最高ですよ、王子。本当にお可愛らしい」
立て続けの絶頂 に虚脱状態に陥った俺からペニスを抜き取ったフリードが、体勢を変えて口付けてくる。どろりと流れ出てくる精液に濡れぞぼる蕾。舌をもつれ合わせながら口付けに応じた俺は、暫し、その口唇の感触を味わってからフリードを見上げた。
「まさかお前、この程度で終われると思ってないだろうな」
「少し余裕が出てこられたようですね、王子」俺の髪を撫でながら、フリードがどこか寂し気に微笑む。「勿論、王子が満足するまでお相手しますよ」
「その割には悲しそうな顔をしている」
俺はフリードの頬を撫でながら尋ねた。
俺に懸想をしているらしい兵士たちは、俺が求めれば、ここぞとばかりに俺の身体を使って自らの欲望を発散してきた。それが当たり前のことだと思っていただけに、フリードの反応に虚を突かれる。
こいつは何かが違う。俺を抱いてきたこれまでの男たちとは何かが。
「愛する方に求められて嬉しくない男はいません。ただ……」
「ただ?」
「それが淫紋の力であるということが悲しいだけです」
実直な性格そのままに澄みきった青い瞳が幾度か瞬く。俺の身体に圧し掛かっているフリードの大きな身体が、小刻みに震えているように感じられるのは俺の気の所為ではないだろう。「大丈夫か、お前」俺はフリードの頬に手を置いた。
「大丈夫ですよ、王子。さあ、続きをいたしましょう」
首筋に口唇を落としてきたフリードに、俺はけれども気がそぞろだった。
言葉少なながらも肝を突いてくる台詞を吐くフリード。こいつと向き合っていると、俺がしていることの全てを否定されているような気分になる。けれども、セックスをしなければ、俺に性的な興味を持っていない周囲の人間にまで被害が出る。それを防ぎたいからこそ、俺は俺の欲望の赴くがままに兵士たちを相手に享楽に耽ってきた。行き過ぎな感があるのは否めないが、それでも俺は俺なりに自分と周囲の人間を守る最良の選択をしたつもりだ。
だのにフリードは悲しいと口にした。
俺とセックスすることを奴は素直に喜べないのだ。
そんな言葉を俺にぶつけてきた奴は初めてだ。俺は悩ましさを抱えながらフリードに抱かれ続けた。
何が正解なのかが理解 らない。どうすればフリードを含めた全ての人間を幸せにしてやれるのか。セックス以外に俺の淫紋を宥める手段はないのか。俺は快楽に飲み込まれそうになりながら、糸となって繋がるばかりとなった理性に縋って考えた。けれども明確な答えは導き出せぬまま、時間ばかりが過ぎていった。
※ ※ ※
それから二週間が過ぎた。
フリードによる王城内の警備配置の見直しや、魔法寮の精鋭たちによる新たな結界の展開が済んだことで、俺の行動範囲は格段に広がっていた。王城の敷地内だけではあるが、自由に動き回ることを許される生活。フリードが戻ってきたことで、剣の稽古に乗馬と以前の趣味を再びを嗜めるようにもなった。これまで王城内で窮屈な思いをせざるを得なかった生活と比べれば雲泥の差だ。
俺は父に申し出て、夜伽の相手をフリードに限っていた。
奴を使い潰すことになるの可能性もあるだけに父はいい顔をしなかったが、いざとなれば結婚を許すつもりでいるからだろう。最終的には、いずれはそういった生活になるのだから――と、俺からすれば、なんとも反応し難い理由で毎夜の同衾を認めてきた。
フリードの母親を乳母として召し上げた父は、フリードの成育歴に思うところがあるらしい。
母親との触れ合いが少なく育ったフリードは、けれどもその環境にも屈しない大人びた幼児だった。俺と木登りをしている最中に木から落ちようが、駆け比べをしている最中に派手に転ぼうがぐっと口唇を噛んで泣くことがない。もう少し成長が進むと、すべきことを後回しにしがちな俺を率先して窘めてくれるようにもなった。俺が何だかんだで国民の覚え目出度き第一王子となれたのも、そうやって奴が俺を支え続けてくれたからだ。
だから、なのだ。父はフリードに恩義を感じているのだという。そしてだからこそ、フリードであれば、大事な王位継承者である俺をくれてやってもいいという思考になっているようなのだ。
近頃では俺を女だとでも思うようになったのではなかろうか。「お前とフリードがこうなるのも運命だったのかも知れぬ」などと、折に触れては俺とフリードの結婚が既定路線のような台詞を吐く有様だ。加えて、俺が幾ら決まったことではないと窘めても、母の肖像画に嬉しそうに報告するのを止めないのだ。
恐ろしいこと他ない。
しかも、どうやら重鎮たちにも俺とフリードの結婚の相談を始めているようなのだ。先日など、俺の部屋に警備に就いていたバーターに、「殿下と将軍が結婚するという噂が出ていますが、本当ですか」と尋ねられてしまった。重鎮たちの中の誰かが洩らしたのだろうが、寝耳に水だった俺は驚くどころの騒ぎではない。
もっと恐ろしいのは、俺自身もフリードが相手であれば、そうなってもいいかと思い始めてしまっていることなのだ。
愛情がどういったものか、女性との付き合いに制限がかけられている俺には理解 らない。大事と感じる気持ちがそうであるというのであれば、フリードに対する俺の感情は愛情であるのだろう。幼き日よりともに過ごしてきたことで培われた信頼。その俺の気持ちに応えんと将軍職にまで上り詰めた男だ。奴が何にも代え難い財産であることぐらい、如何に下半身がだらしのない俺とて理解出来ている。
そのフリードにあんな顔をさせてしまった。
それが俺はショックだったのだ。
俺が奴と寝ようが寝まいが関係なく、奴は淫紋の力を思い知らされる。その現実に奴が心を酷く痛めていることがわかってしまった。だったらせめて、ベッドをともにする相手を奴に限るべきなのではないのか? それこそが奴に対する誠意ではないのか? 考えた末に出した結論は、俺がフリードを乳母兄弟として、また竹馬の友として大事にしているからこそだった。
そういった奴を人生のパートナーとすることに異議はない。
俺の人生には常にフリードの姿があった。これから先の人生にも奴の姿は変わらずにあることだろう。淫紋が消えたあとに俺の性欲がどうなるかは理解 らないが、今の関係からして既に夫婦のようなものだ。だったら結婚して、奴の立場と地位を盤石のものとしてやってもいいではないか。
けれどもそれを、俺はフリードに云い出せずにいた。
気持ちは徐々に固まっていっているというのに、あと一歩が踏み出せない。父に対してもそうだ。母の肖像画に俺とフリードのことを報告している姿を見てしまうと、ついつい否定の言葉が口を衝いて出る。
もしかすると、愛の女神たるアナスターヤはそういった俺の情けない態度に腹を立てたのかも知れない。
その夜、ついにというべきか、待ち望んでいた出来事が起こったのだ。
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