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第4話
希良利がオフの日、いつもなら美容のために外出とか誰かと飲み会とか、出かけていることが多いけれど、それでも家でゆっくりする日もある。
今日は家にいる日の様だ。
彼の邪魔にならないように家事をする。
一通り終えて彼の様子をうかがうと、本を読んでいるようだったので、「お茶とか飲みますか?」と訊くと本から顔をあげて僕の顔をジッと見てくる。
邪魔しちゃったかな…、と焦っていると「ああ。睦月の分も持ってきて」と言われた。
僕の分も?と思いつつ頷いてキッチンに入る。
彼はコーヒーが飲めない。
飲むなら甘いカフェオレ。
けれど今は糖質制限中なので無糖の紅茶を飲む。
茶葉を蒸らしているとインターフォンが鳴った。
希良利は動く様子がない。
二度、三度となるので僕は玄関に向かった。
ネットスーパーなんかの配達の可能性もある。
そう思って解錠したのと希良利が「出なくていい!」と叫んだのと、どっちが先だっただろうか。
ドアが勝手に開いて、顔を出したのは明るい茶髪の高身長イケメンだった。
彼と目が合う。
え…、この人…
「えっ!?誰!!?
ここって長濱希良利の家っすよね?」
俳優の人だ。
名前は思い出せないけど、かなり有名な。
「あ、あ、長濱の家で…」
長濱の家ですと答えようとしたところで、後ろから伸びてきた手にドアを閉じられた。鍵も閉められる。
ドアの向こうで彼は「え!?お、おい!!希良利!?」と叫んでいるのが聞こえる。
「え、えっと、お友達じゃ…」
僕がオロオロしていると、彼が舌打ちをする。
「勝手に開けるなって言っただろ」
あ、やばい。
多分めっちゃ怒ってる。
「ご、ごめんなさい」
その間もドンドンと扉を叩く音がする。
大きいマンションとは言え流石に近所迷惑だ。
「あっちいってろ。
絶対にこっちにくんなよ」
僕は頷いて大急ぎで自分の部屋に逃げ込んだ。
あ…、紅茶…
多分もう渋すぎてダメになってるかもな。
僕ってなんでこんなに希良利を怒らせてしまうのだろう…
床に体育座りをして嵐が過ぎ去るのを待つ。
っていうか、希良利の友人に見られちゃったな…
絶対僕の事隠したかったはずなのに。
他人にバレたら追い出されるなんてこと…、あり得るのだろうか?
さーっと血の気が引いてゆく。
絶望的な気持ちで蹲っていると、ドアが盛大に開いた。
「ここか!」
茶髪のイケメンと目が合う。
「君でしょ?希良利が飼ってる猫ちゃんって」
意味の分からないことを訊かれて僕は首を横に振る。
「この家に猫はいませんけど…」
「おい、鹿野。マジでやめろ」
後ろから希良利がやってきて鹿野と呼ばれた男の首根っこを引っ張る。
「えー!ヤダヤダ!!
俺にも見せてよ、むーたん」
むー…、たん?
希良利がじとーっと鹿野と呼ばれた男を睨むけれど、諦めたのか「睦月、リビング」と僕に声を掛けた。
僕は返事をして、先に歩き出した2人の後を追う。
鹿野がちらちらと僕の方を覗ってくるのが何とも居心地が悪かった。
僕は逃げるようにキッチンに入り、古くなった紅茶を捨てて、ゆっくりとお茶を淹れる。
どんなにゆっくり注いでも時間は進むもので…、僕は三人分のお茶を運んでそれぞれの前に置いた。
お盆を片付けようと踵を返しかけた僕を希良利が捕まえて、膝の上に載せる。
仲が良かったころに良くしてくれた座り方だけれど、それを鹿野さんの前でされるのは恥ずかしい。
ジタバタと降りようとしたけれど、力強い腕に封じ込められた。
「わ~お、お熱いね」と鹿野さんが笑うのでますます恥ずかしくなった。
「ちゃんと見せてやったんだからこいつの事、誰にも言うなよ。あと2度とうちに来るな」
と希良利が念を押す。
鹿野は苦笑しながら「分かった。分かったから睨まないでよ」と言う。
希良利に背を向けているので彼の表情は分からないけれど、鹿野さんを睨んでいるらしい。
「こんなに感情剥き出しな希良利を初めて見たよ。
あー、皆に見せてあげたい、ね」
最後の言葉は僕に向けられていたようで、目が合い、にっこりと微笑まれた。
よく分からないので曖昧に笑って首を傾げる。
「えー、やだ!可愛い!
やっぱむーたんは皆に見せ…」
「死ね」
希良利がそう言って僕の体を反転させる。
希良利と向き合う座り方になったため、逆に鹿野の顔が見えなくなった。
「えー、けちー」
鹿野は文句を言っているが「じゃあ帰れ」と希良利に言われると黙り込んだ。
「っていうかもう見せたんだからいいだろ。
こっちは久々のオフを満喫してんだから帰れよ」
「うーん…、まあいいもの見れたしいいか。
ってかさ、希良利ってそういう感じなんだね。
この猫かぶり~」
と散々茶化して帰っていった。
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