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第11話 過去編4
それからお店が混んできたので、僕たちは早々にお店を出て、これまたよく通ったカラオケ店に入った。
せっかくならと2~3曲入れたりもしたけれど、ほとんどが近況報告や誰それの現状などの話だった。
草間は本当に声を掛けれるだけかけているらしく、色んな人の現在の話が聞けた。
どこに就職したとか、どこに引っ越したとか、誰が院に進んだとか…、こんなにバイタリティのある人間だっけ?と思った。
2時間でカラオケを出ると、時刻は16時前だった。
そろそろ夕食の準備のために帰りたい。
「じゃあ僕はそろそろ。
草間、誘ってくれてありがとう。
大阪でも元気でな」
「おう。
大阪観光したくなったらいつでも連絡くれ。
実家にはなるけど泊まることも可」
正直、あまり旅行に興味はないけれど、もしかしたらイベントとかでどうしても大阪に行きたい日がくるかもしれない。
そういう時には心強い。
「ありがとう。
じゃあ」
「長濱さんによろしくな」
そう言い合って僕らは別れた。
今日、草間と会えてよかったな、とほくほくしながら帰宅する。
晩御飯は何作ろうかな~とかのんきに考えながら。
玄関の扉を開けて、一応「ただいま」と言う。
靴を脱ごうとして違和感に気付いた。
あれ…、希良利の靴がある。
帰ってきているのだろうか?
でも、彼は沢山靴を持っているし、昨日のを仕舞い忘れただけかも。
僕は疑問に思いつつも、洗面台で手洗いうがいをしてキッチンに入った。
夕方の薄暗い部屋の中でたたずむ人影に気付き、「ひっ!!?」と恐怖から悲鳴を漏らした。
だ、誰!?
泥棒?空き巣?それとも、希良利のファンが勝手に侵入したとか!?
僕はとっさに退路と何か武器はないかと辺りに視線を走らせた。
「どこ行ってたの?」
と、その人影が言った。
「き、希良利くん?びっくりした~。
帰るの遅くなってごめん。
希良利くんのスケジュール、遅くまで撮影になってたから出掛けちゃってた。
晩ご飯すぐ作るから出来上がったら…」
安堵からベラベラしゃべりだす僕。
すると彼が「どこ行ってたの?誰と?俺が早く帰ったらまずかった?」と矢継ぎ早に聞いた。
「え、あ、えっと、大学の時友達だった子とご飯行ったんだ。
あ!大学の近くの食堂なんだけど、希良利くんも知ってる?
それと、希良利くんが早く帰って、まずいことなんてないよ?
むしろうれし…」
僕が言い終わる前に、つかつかと僕の目の前まで来た彼が僕の顎を掴んだ。
いつもの優しい触れ方ではなく、力任せだった。
「い、いたっ」
「大学時代の友達?
こんなおしゃれして?
髪切ったのだって、そいつのためだったわけ?」
「え?いや、そういう訳では…」
何故か希良利が怒っている。
今まで彼がこんな風に怒っているのを見たことがなかった。
僕が何かしたんだろうか?
「なんで今日出掛けること、俺に言わなかったの?
知られたくなかった?」
「ち、違うよ。
草間…、えっと、その友達の事を希良利くんは多分知らないから、言わなくてもいいかと思って…。
今度からちゃんと言うから、ね?
怒らないで、希良利くん」
彼は舌打ちすると僕の顎から手を離した。
ここからどうしたらいいんだろう?
夕食を作り始めるにも、キッチン台の前に彼が立ち尽くしている。
どうしようと考えていると、腕を掴まれて、僕は引き摺られるように彼の部屋に連れていかれた。
彼の部屋に入るのは初めてで、混乱しつつもしっかりと様子を確認する。
物があまりないシンプルな部屋だった。
まさに、寝るためだけの部屋。
彼は家で過ごすとき、大半はリビングにいる。
でも一体、わざわざ彼の部屋に来て何をするんだろう?
僕がぼんやりしていると、「脱いで」と冷たい声で言われた。
なんで?とかどうして?とか、嫌だとか、言いたいことはあったけれど、こんな風に僕に冷たく当たる希良利に怖気づく。
もしかしたら、彼に貰った服で出歩いたことが嫌だったのかもしれない。
僕は服を脱いでたたみ、彼に差し出した。
が、受け取ろうとしない。
あ、僕が着た後の服なんか要らないか。
あとでクリーニングにでも出してから希良利に返そうと思い、僕はそれを床にそっと置く。
下着に靴下という格好になってしまい、僕は自室に自分の服を取りに戻りたかった。
「下着も」と希良利が言う。
僕は最初、訳が分からず「え?」と返した。
だって、下着は僕がもともと持っていたものだ。
彼に貰ったわけではない。
「下着も脱げ」
ぴしゃりと言われて僕は「で、できないよ」と答える。
「僕、希良利くんのこと怒らせちゃったんだよね?
給料とかも…、今すぐ全額は難しいけど返すし、僕が邪魔なら出て行くよ。
今すぐは…、難しいけど…」
どんどん言葉がしりすぼみになっていく。
正直、僕は今の生活を手放したくはない。
身体を縮こまらせていると、彼が盛大に溜息を吐いた。
「俺が睦月に払った給料を返して欲しがると思う?
それに、悪いけどお前を手放すことは出来ないし、逃げられるとも思うな。
これ以上俺を怒らせる前にさっさと脱げば?」
「ごめんなさい」
僕は震える指でパンツを床まで下ろす。
僕のソコは、僕にとってはかなりのコンプレックスなのだ。
小さいし、色もピンク色で、毛も薄い。
おまけに皮まで被っていて、まるで子供のモノみたい。
そんな場所を、好きな人の眼前に晒すのは、僕にとっては死ぬより恥ずかしかった。
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