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第13話
俳優の鹿野さんが襲来してから早数日が経った。
あれから希良利がやたら前戯を丁寧に時間をかけてするようになった。
後ろは自分でかなり解しているので、やたら体を弄られると非常に困る。
彼の愛撫が嫌だとか痛いとかではない。
むしろ、上手すぎて辛いのだ。
挿入になるころには、僕の意識は毎度あやふやだ。
なんなら準備から一緒にしたいと言われたけれど、排泄するところを見られるのは二度と御免だったので断固拒否している。
また今日も、ぐずぐずに溶かされるのだろうか。
そう考えると憂鬱…、な気持ちになるはずなのに、下腹が熱くなってしまうのだから、本当に自分が快楽に弱くて嫌になる。
そんな自分の思考に蓋をするように熱心に掃除をしていると、携帯が鳴った。
僕の携帯が鳴るのは、希良利かマネージャーからの連絡が来た時だけ。
なにか急用だろうか…
携帯を確認すると、希良利からメッセージが来ていた。
「当分帰れなくなった。
部屋、張られてるから戸締りをしっかりして絶対に外に出るな」
帰れなくなった?
張られている?
なんだか胸騒ぎがして、僕は『分かりました』という返事だけ送って、テレビをつけた。
今は昼の情報番組をしている時間だ。
ザッピングしていると、不意にニュースのタイトルが目に入ってきた。
『人気俳優、熱愛疑惑!!深夜のお泊りデート!?』
そこに写されていたのは、画質の荒い希良利と女優の写真だった。
マスクに帽子をつけているから、言われてみれば希良利かも?くらいの解像度だけれど、身に着けている服と帽子、バッグには見覚えがある。
僕はへたりと床に座り込んだ。
希良利が、熱愛…
しかも相手は人気女優。
もっと詳しく知りたくなった僕はSNSで『希良利』で検索をかける。
SNSではファンたちが悲しんだり怒ったり、逆に祝福したりしていた。
でも、熱愛の情報に関してはエンタメニュースで得た情報からそれほど増えなかった。
お相手だと噂されている女優もネットで検索しておく。
子役からずっと経験を積み、過去から最近までずっとドラマや映画で活躍している、非の打ちどころがない美女だった。
希良利とも何度か共演している。
年齢は僕と希良利の1つ下。
希良利の相手としてあまりに完璧すぎた。
携帯を床に置き、馬鹿みたいにボケーっと天井を見上げる。
掃除しなきゃ…、あ、でも、希良利は当分帰ってこないからいいのか。
これからどうしよう。
考えるべきことは沢山あるはずなのに、何もする気が起きなくて、僕はずっとぼんやり座っていた。
日が傾き、部屋が薄暗くなった頃、インターフォンが鳴った。
希良利から、予定にない来客には出なくて良いと言われていた為、僕はそのまま座っていた。
すると解錠する音がして、誰かが部屋に入ってきた。
その足音は少しせわしない。
パチっと電気が点いて、僕はゆっくりと振り返った。
「ああ、よかった。部屋にいた。
そんなところにずっと座ってたら風邪ひきますよ」
その人と目が合って僕は脱力する。
希良利のマネージャーさんだ。
「お久しぶりです」
久々に声を出したので少し掠れていた。
「ええ、お久しぶりです。
長濱はホテルに数日滞在しますので、もし要りようでしたら私にご連絡ください。
ひとまず今日は、お夕食をお持ちしました」
そう言って彼はお高いと有名なお店の弁当を差し出した。
「ありがとうございます」と受け取るが、全然食欲はない。
「少しでも食べて体力をつけてください。
長濱は絶対ここに戻ってくるつもりなので、どうか影山さんも彼を信じて待っていて頂けませんか?」
戻ってくるつもり…、か。
それは、あの女優とともにだろうか?
何のスキルもない僕を、彼なりに家政婦として気に入ってくれたのかもしれない。
けれど、希良利と美女の愛の巣に住まうなんて絶対に嫌だ。
100歩譲って家政婦は続けたとして、同居は解消して、通いにしたい。
なんてね…、そもそも希良利の未来に僕みたいな一時の家政婦の存在なんて無いに決まっている。
僕が形だけ頷くと、マネージャーはほっとした表情を浮かべる。
「当分、影山さんも外出は控えてください。
貴方の存在が世間にバレるようなことがあったら…、私は長濱に殺されてしまうかもしれませんから。
いや、私一人の命で済めばいいですが」
と、冗談を言うので口角だけで笑っておいた。
僕の存在が世間にバレたら、家政婦を解雇して終わりだろう。
そのまま野たれ死ぬのは僕の方だ。
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