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第18話

「睦月、俺の事好きなの?」 どストレートに訊かれて、僕は思わず「違う」と言ってしまった。 だって…、僕の気持ちが希良利にバレたら、間違いなく今までの関係は壊れてしまう。 「…、じゃあ好きじゃないんだ。少しも?」 その訊き方はズルいと思う。 「そ、それは…」 と言葉を濁すと、彼が僕の中をグッと押し上げた。 口から「んんっ」という鼻から抜けるような声が零れた。 「答えろよ。 俺の事、好きじゃない?少しも?」 ゆるゆると腰を揺すりながら希良利が問いかける。 僕は答えたくないけど答えなきゃいけないという気持ちのせめぎ合いで泣き出してしまいそうだった。 ふるふると首を横に振る。 「答えたくない…、です」 言ったら終わる。 でも、好きじゃないなんて言いたくない。 「睦月、正直に答えてよ」 真剣にそう訊かれて、目尻から涙が零れ落ちた。 僕は関係を壊したくないのに…、希良利は終わりにしてしまいたいんだろうか。 「好きって言ったら、前の家政婦さんと一緒になっちゃうから…、言いたくない」 絞り出した声は見事に鼻声で潤んでいた。 「は?」 「だって、希良利くんは前の家政婦さんたちが自分を好きになったから辞めさせたんでしょ? 僕、辞めたくない…」 もうバレてしまったようなものだけれど、言い切らなければ、まだそばにいさせてもらえると一縷の望みにかける。 「はぁ? そりゃなんとも思ってない奴から好意を向けられてたら気持ち悪いけど、好きな相手から向けられるのは嬉しいだろ、普通に」 好きな相手…? 思いもよらぬ言葉に僕は「へ?」と情けない声を出した。 「なに?睦月は違うの?」 「え、いや、そうじゃなくて…、好きな相手ってぼ、僕?」 希良利と目が合う。 彼が盛大に溜息を吐いた。 「好きでもない相手とヤれるかよ。 お前、俺を何だと思ってんの?」 希良利がむすっとした顔で僕を見下ろす。 「だ、だって、あの長濱希良利だよ!? 僕なんか好きになるわけないじゃん…」 そう言うと希良利がふっと笑った。 「確かに。 俺、なんで睦月が好きなんだろうな」 普通に失礼だったので今度は僕がむっとする。 「で、睦月は? 俺の事好きなの?」 希良利が上なのに器用に上目遣いで僕を見る。 「う…、好き…、です。 あっ///」 顔を真っ赤にしながら言うと、僕の中の希良利が大きくなった。 そう言えばまだ真っ最中だった。 「あー、やばい。 嬉しすぎて何回でも睦月のこと可愛がれそう」 「お、お手柔らかに!!」 そんな僕の申し出も虚しく、しかも希良利はしっかりと翌日をオフにしていたので、2週間を取り戻すかのように抱き潰された。 温かいぬくぬくの布団の中で目が覚める。 こんなに気持ちよく眠れたのは久々だ。 目の前には希良利の寝顔がある。 彼もぐっすり眠っているようだけれど、目の下のクマが痛々しかった。 希良利も僕に会えなくて辛かったのだろうか。 じっと眺めていると、ゆっくりと希良利の目が開いていく。 虚ろな目が僕に焦点を絞っていく。 はっきりと目が合ったと分かった瞬間、彼が満面の笑みをこぼした。 長い腕が僕に巻き付き、抱きしめられる。 「睦月、いた」 「いますよ、そりゃ…」 あんな夜遅くまで抱き潰されて、足もないのに帰れる人がいるならそれは超人だ。 「あー…、可愛い。睦月好き」 「…」 な、なんだこれ… これが本当にあの長濱希良利なのか!? こんな甘いモードが搭載されているなんて知らなかった。 それから昨日の残りを食べて、希良利とゆっくり過ごした。 昨日はあんなに喉を通らなかった食事が、今日はとても美味しくて自分でもびっくりするほど食べてしまった。 夕方、マネージャーから連絡があった。 明日からまた希良利の仕事が始まるので、僕をお迎えに上がりましょうか?と。 希良利は「今晩だけ睦月を置いておきたいから、明日迎えに来るように」と指示を出した。 そっか、明日からはまた僕は1人であの家で過ごさなくてはならないのだ。 電話を終えた希良利が僕の顔を見て笑ってデコピンをしてきた。 普通に痛い。 「なんて顔してんだよ」 「…、だって…、長濱さんは寂しくないかもしれませんけど」 「ばーか。俺だって嫌だわ。 でも、必ず3日中に否定する文書を出させるから。 そしたらまた戻る」 「はい…」 「ってかさ…、そろそろまた前にみたいに話しても良くない?」 希良利が口を尖らせている。 「前みたいに?」 「だから、ため口で下の名前で呼んで、そういう話し方に戻しても良くない? もう付き合ってくれるんでしょ?」 「つ…、え!?」 僕は驚いて彼を見た。 僕の反応に彼は不服そう。 「お互い好きなら付き合うじゃん。 なに?だめなの?」 「だめ…、じゃないですけど」 希良利のような芸能人と、何の取り柄もない僕が付き合えるのだろうか? 「付き合ってくれたら外出も許可する。 今までは睦月が誰かを好きになって、盗られるのが怖くて閉じ込めてたけど」 「へ?」と間抜けな声が出る。 僕が外出を許されなかった理由ってそれ? もしかして…、あの日監禁されたのって草間に嫉妬したから?

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