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第10話

 そのセシルは、コルセットを絞めて優雅に踊っていた。  周りの貴族達は大柄だとは思ってはいるものの、まさか男だとは思っていないだろう。  こんな状態で『あいつは大海賊のキャプテン・セシルだ』と言えば大騒ぎになるだろうとウィリアムズは考えて、曲の始まりにセシルの手を奪うように取って踊りはじめた。 「……何をしに来た、セシル」 「やっぱりお前は俺だと気づくか、ウィリアムズ」  耳元で嘲笑うセシルにウィリアムズは真面目に聞いた。 「だから何をしにきたのだ、セシル」 「何って、ワルツを踊りにきただけだ」  セシルは楽しそうに答えた。  この男はちっとも変わってない、ウィリアムズはそう思った。  セシルは嘘をついていない、ウィリアムズだから分かることだった。 「私とのこのワルツが最後だ。終わったら帰れ」 「まぁ、そうだな。だいたいこんなに敵に囲まれてワルツなんて流石に楽しめねぇからなぁ」  やはりセシルはここの船の警備をしている海軍の数を知っていて乗り込んできたことが分かったウィリアムズは溜め息を吐いた。  また一曲が終わり、セシルの元に男達が手を差し伸べたが、セシルは唇に手を当てて、こう述べた。 「私少し人酔いしたようなのです。……今晩はもうおやすみしますね」  セシルの裏声は見事で、最後まで男だと気付く者はウィリアムズしかその場に存在しなかった。

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