11 / 20

第11話

「将来役に立つ前に、ワルツでも女役にハマるなんてな。素性を隠して踊りに来るなら、貴族の仮面舞踏会くらいしかあてはねぇしな」  セシルはどうやら今朝から貴族としてこの豪華客船に乗り込んでいたらしい。  ウィリアムズはまた溜め息を吐いた。 「ブラックシャーク号がこの海域を行き来していたのは、この客船に乗り込むためか」 「俺の船がそんな小さいわけねぇだろうが。あれは乗り入れするための小舟だ」  ウィリアムズは確かに大型船だと聞いていたのだが、ブラックシャーク号がどれだけ大きい船なのか疑問に思ったので、彼なりの冗談で返した。 「ならばお前の船はどれだけ大きいのか、今度乗せてもらおう」 「お前が海軍辞めたらいつでも乗せてやる」  あっさり突っ込んでくるセシルの言い返したことは、ウィリアムズには出来ないことだった。  セシルは仮面を外してからドレスを脱ぎ始め、コルセットを少しずつ緩めた。  するとウィリアムズの手がコルセットを外しに掛かった。 「セシルよ、……あまり無理をするな」  背中に当たるウィリアムズの手は温かい。  わざと手を当てながら外しているということが分かる。  急にセシルは優しい声色に変わると、ウィリアムズの中で幼いときの彼と重なって見えた。 「心配するな。俺の人生はお前が思っているより遥かに充実しているし、無理はしてねえよ。いつも愉快に楽しくやってるさ」  そして次に行われる行為について、互いに気付いているし、互いに待ち望んでいたことだ。  セシルは結っていた髪を解き、肩にに掛かっているだけのドレスを床に脱ぎ捨て向き合うと、ウィリアムズの腕が身体に回ってきた。 「たとえお前が私の手に堕ちることがなくとも、いつまでも愛しく思っている。セシル」  ウィリアムズが施す口付けは酷く優しいものだった。

ともだちにシェアしよう!