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第3話

耳をつんざくようなエマージェンシーコールが艦橋中に鳴り響いた。 赤い非常灯が薄暗い船内を不規則に染め上げていく。 飛び交う怒号とざわめきに、マイトの頭は一瞬真っ白になりかけた。 敵の仕業――。 そう考えるには、何故か手際が良すぎる。 艦内各所を映し出すホログラムディスプレイには、主機関、通信系統、重力安定装置といった中枢区画だけが次々と赤く染まり、致命的な損傷を示していた。 まるで内部構造を知り尽くした者が、狙い澄ましたように急所だけを潰していったかのようだ。 ここ三ヶ月で、新しく入れた奴はいなかったか……? 必死に記憶を辿ろうとしても、切羽詰まった状況に思考はうまくまとまらない。 焦燥ばかりが胸を締めつけ、答えは霧の向こうへ消えていく。 「どうやら、内通者が居たようだな」 ジェイスは冷静な口調で、誰もが薄々感じながら決して口にはできなかったことを、ついに言葉にして静かにマイトへ告げた。 その一言を聞くと、マイトは自らを嘲るように口元を歪め、乾いた吐息混じりの笑いを漏らした。 どうやら、俺は間違ったらしい。 ここにいる奴らはファミリーであり、誰もが裏切るわけがない――そんな都合のいい思い込みを、いつの間にか信じ込んでいた。 浅はかすぎる考えで、自分の力量を読み誤っていたのだ。 愚鈍の極みだ。 「首領、しっかりしてください!」 心配そうに呼びかけるジェイスの声は、すぐ傍にいるはずなのに、何故かひどく遠く聞こえた。 赤い警告灯が明滅し、制御卓から火花が散る。部下たちが慌ただしく持ち場を駆け回る姿も、まるで一枚のガラス越しに眺めているように現実感がない。 なんだか、全てが遠い。 オヤジから任された――ただ、それだけで俺は首領になった。 俺自身に、人を惹きつけるだけの器があったわけじゃない。 首領と担がれていても、所詮は先代の子供だというだけの話だ。簡単に裏切られる程度の人間だったということだろう。 子分の何人かは、俺が先代と血のつながりがないことも知っている。 ……裏切られても、仕方がない。 マイトは胸の奥にぽっかりと穴が空いたような虚しさを抱えながら、ゆっくりと迫ってくる黒く禍々しい艦影を睨みつけた。 戦術ディスプレイいっぱいに映る《ブラック・シールド》の旗艦は、星の光さえ吸い込むような漆黒の装甲をまとい、まるで獲物を追い詰めた猛獣のように静かにこちらを見据えている。 「何をしてるんです、首領。早く指示を!」 肩をジェイスに掴まれ、大きく揺さぶられて、マイトははっと顔を上げた。 目の前には、不安と焦燥を滲ませた幼馴染の顔がある。 ジェイスはマイトの気持ちを察していた。それでも、この緊急事態に立ち止まって哀れんでいる余裕などない。 首領として、今ここで決断しなければ、この船も、仲間も、すべて失う。 そう訴えるように、赤い瞳は真っ直ぐマイトを見据えていた。

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