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第42話

ディアスは、快楽の余韻に身を震わせ、虚ろな瞳で天井を仰ぐマイトの頬を、まるで愛しい恋人を慈しむように優しく撫でた。 マイトの意識はもはや外の世界にはなく、ディアスという毒に完全に浸食され、瞳の中はすっかり溶けかかっていた。 その無防備な耳元に、ディアスは毒を含んだ甘い吐息を吹きかける。 「……本当のことを言おうか、マイト」 ディアスの声は、これまでにないほど低く、穏やかで、それゆえに酷く残酷だった。 「最初は、ただの親友の代用品が欲しかっただけなんだ。かつて失った友の面影をなぞり、退屈を紛らわせるための、よく似た『ガワ』さえあればそれでよかった」 マイトは反応しない。聞こえていなくとも、ディアスにとって、それは独白。 ただ、ディアスの指先に導かれるまま、小さく喉を鳴らしてその温もりに縋り付く。かつての海賊の明るい首領の面影はもうどこにもない。 そこにあるのは、ディアスという主の言葉に、肉体ごと支配された抜け殻だけだ。 ディアスはそんなマイトの愛おしいほどの変わり果てた姿に、喉の奥で喉を鳴らすように笑った。 「なのに……どうしてだろうね。君があまりにも純粋に、必死にオレを憎んでて、それを忘れた時にそれ以上に、あまりにも真っ直ぐにオレという存在に恋い焦がれるものだから」 ディアスはマイトの髪を指に絡め、その顔を覗き込む。狂おしいほどの依存と、それを隠しきれない淫らな熱情。 それらすべてが、マイトという個体から発せられているという事実に、ディアスの心の中に、かつて抱いていた「代用品」への執着とは別種の、もっと暗く深い情動が渦巻いた。 「あまりに君が可愛い顔でオレに恋しているから……ね。その姿が可愛すぎて、本気で欲しくなってしまったんだよ」 ディアスはマイトの額に鼻先を寄せ、呪いのような愛の言葉を刻み込む。 「これからは、代用品なんて呼び方はしない。君と彼は違うから。君のすべてにオレの魂に刻み込むくらい深く、徹底的に愛してあげる。……今の君があるのは、オレをこんなにも狂わせた可愛い過ぎる純粋な君自身のせいだ。だから、一生かけて責任をとってもらうよ」 マイトは、それがディアスの理不尽な理屈を、ぼんやり耳にしてもわ逃げ出すことも否定することもできない。 彼はただ、ディアスが与える歪んだ「愛」という名の執着に縛られ、その言葉を心地よい陶酔として受け入れるしかなかった。 ディアスは満足げに目を細め、再びマイトをその腕の中に封じ込めた。代用品だったはずの獲物は、今やディアス自身の心をも囚える、逃れられぬ恋人となっていた。

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