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第44話
ブリッジの静寂に、淡いホログラムの光が溶け込んでいる。
その後、逃走することがないと判断したディアスによって、施されたナノマシン治療によりマイトの右腕は再生された。
端末を操作し、海賊たちの潜伏ルートをなぞっていたマイトは、ふと漂ってきた気配に顔を上げた。
そこに立つディアスは何も言わず、ただ顎先で会議室の方角をくいっと指し示す。その不遜で傲慢、それでいてどこか蠱惑的な仕草に、マイトは今日も今日とて胸が高鳴るのを感じた。
「お疲れ様、ディアス。ああ……今日も相変わらず綺麗で美しいなぁ」
マイトは軽口を叩きながら、会議室の自動ドアをくぐる。
しかし、ディアスの足取りが止まると同時に、彼が纏う空気が重く、鋭利なものへと変わった。
「昨夜のことだ。なぜオレの部屋に来なかった」
低く、責め立てるような声。
どうやら昨日、会議の後に待っていたはずの自分の部屋へ来なかったことを、彼はまだ根に持っているらしい。マイトは呆れたように肩をすくめ、快活に笑った。
「ああ、あれか。昨日、軽く飲みすぎちゃってさ。そのまま自分の部屋で泥酔して寝ちまったんだよ。……もしかしてディアス、俺がいなくて寂しかったのか?」ブリッジの静寂に、淡いホログラムの光が溶け込んでいる。
ナノマシン治療によって完全に再生した右腕で端末を操作し、海賊たちの潜伏ルートをなぞっていたマイトは、ふと漂ってきた気配に顔を上げた。
そこに立つディアスは何も言わず、ただ顎先で会議室の方角をくいっと指し示す。その不遜で傲慢、それでいてどこか蠱惑的な仕草に、マイトは今日も今日とて胸が高鳴るのを感じた。
「お疲れ様、ディアス。ああ……今日も相変わらず綺麗だね」
マイトは軽口を叩きながら、会議室の自動ドアをくぐる。
しかし、ディアスの足取りが止まると同時に、彼が纏う空気が重く、鋭利なものへと変わった。
「昨夜のことだ。なぜオレの部屋に来なかった」
低く、責め立てるような声。
どうやら昨日、会議の後に待っていたはずの自分の部屋へ来なかったことを、彼はまだ根に持っているらしい。マイトは呆れたように肩をすくめ、快活に笑った。
「ああ、あれか。昨日、軽く飲みすぎちゃってさ。そのまま自分の部屋で泥酔して寝ちまったんだよ。……もしかしてディアス、俺がいなくて寂しかったのか?」
からかうように問いかけるマイトに対し、ディアスは満足そうに目を細めることもなく、ただ冷徹な笑みを浮かべた。
「そうだ。……いいか、今日は仕置だからな。それを伝えに来ただけだ」
『おぼえてろよ』
そんな、安っぽい悪役のような台詞を吐き捨てて、ディアスは会議室を去っていく。
その背中は、支配者の傲慢さとマイトへの異常な執着が混ざり合った、彼らしい熱を帯びていた。
閉まるドアを見つめながら、
マイトは再生した右腕を左手でそっと撫でた。
かつて腕を粉砕された絶望も、痛みも、仲間を選ばなかった罪悪感も、今はもう遠い昔の物語のようだ。
現在、マイトはディアスの強烈な独占欲に縛られ、ブラックシールドの副官として彼の隣に立っている。
そして今日もこうして、理不尽なまでの愛と執着を向けられているのだ。
「……本当、めんどくさい男だよ」
マイトは苦笑しながら、ポツリと呟いた。
「でも、俺のこと縛りつけたいくらい好きでいてくれるなら、まあ、それでいいよな」
仕置が待っている。
その事実すら、自分を求めてやまない男からの愛のサインとして、マイトの脳天気な思考回路はあっさりと甘く認識を変換していた。
彼はディアスが去ったあとの空気を深く吸い込み、副官としての仕事に戻るべく、軽やかな足取りでブリッジへと引き返していく。
自分はディアスの所有物。
そして、ディアスは俺の恋人。
その歪な関係性こそが、今のマイトにとって何よりの幸福であり、揺るぎな世界のすべてだった。
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