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第2部 第8話

ガチャン! という鼓膜を劈くような金属音と共に、ハニーエンジェルの外部ハッチが強制的にこじ開けられた。 「動くな! 宇宙警察特務部隊だ!」 白き装甲服に身を包んだ重武装の隊員たちが、狭いコックピットへと雪崩れ込んでくる。 「ふざけんな、触るなッ!」 マイトは死んだコンソールから手を離し、野生の獣のように反撃を試みた。 しかし、機体のシステムごと感覚を封じられた隙を突かれた上に、狭いコックピットの中での多勢に無勢。 容赦なく振り下ろされた高出力の電磁警棒が腹部と首筋に叩き込まれ、マイトは「がはっ……!」とくぐもった叫びを上げて床に崩れ落ちた。 抵抗する間もなく両手を背後に回され、強固なチタン合金の拘束具でロックされる。さらに、頭からすっぽりと分厚い遮光フードを被せられ、視界を完全に奪われてしまった。 「目標の確保完了! 直ちに本艦へ移送しろ!」 「急げ! ブラック・シールドの母艦が空間跳躍(ワープ)で急接近している!」 マイトが力づくで特務巡洋艦のエアロックへと引きずり込まれた直後だった。 周囲の宇宙空間に巨大な亀裂が走り、圧倒的な質量を誇るブラック・シールドの母艦がワープアウトしてくる。所有物を奪われたディアスの激怒を体現したかのような、重力子主砲のすさまじい閃光が放たれた。 だが、事前の手はず通りに動いていた警察側の撤退が一瞬だけ早かった。 「空間跳躍ドライブ、最大出力!」 マイトを乗せた警察の特務巡洋艦は次元の裂け目へと飛び込み、ディアスの放った業火は虚しく宇宙の塵を焼くのみとなった。 「ぐっ……乱暴に扱ってんじゃねぇよ……!」 かすれた声を漏らしながら、マイトはガタガタと揺れる移送艇の冷たい床に膝をつく。 頭をすっぽり覆う袋のせいで周囲の状況は一切分からない。聞こえてくるのは、無機質なエンジンの低周波音と、屈強な警察官たちの重く冷たい足音だけだった。 視覚が遮られているからこそ、他の感覚が異常なほど研ぎ澄まされていく。 下腹部の奥では、尿道に仕込まれた細いパルスとアナルを塞ぐプラグが、先ほどの激しい動揺と恐怖に反応してじくじくと嫌らしい熱を放ち続けている。手は縛られ、身動き一つ取れないこの無力な状況は、皮肉にもあのディアスの執務室で味わった「完全な拘束」の記憶をまざまざと呼び起こしていた。 ――よりによって、こんなところで宇宙警察なんかに捕まるなんてな。 ディアスとの「必ず戻る」という約束を破り、よりにもよって敵の檻に入れられているという事実。怒らせればどれほど恐ろしいことになるか分かっているはずなのに、マイトの胸の奥底では、恐怖と同時に、あの冷徹な主人が自分を取り返しに来るであろうことへの歪んだ期待と焦燥がドロドロと渦巻いていた。 「……っく、はぁ……」 闇の中、身動きすら許されない完全な孤立状態のなかで、マイトは肉体に刻み込まれた快感の余韻と、これから待ち受ける過酷な尋問、そして何よりディアスの制裁への予感に、身悶えるように震え続けるのだった。 冷たい消毒液の匂いが鼻をつく宇宙警察の尋問室。 過剰な抵抗と暴れる身体を黙らせるため、マイトは容赦なく浴びせられた高圧の電気ショックに耐えきれず、完全に意識をプツリと途切れさせていた。 無様に床に崩れ落ちたマイトの身体は、そのまま冷徹な金属製の検分台へと運び上げられる。 「……ブラック・シールドの海賊だけあって抵抗が半端ないな」 腕を組んだ検査員が冷ややかな視線を向け、手際よくマイトの衣服を引き裂いて剥ぎ取っていく。 まず始めに、戦闘時に隠し持っているかもしれないあらゆる武器や通信機器、データ端末などの危険物が次々と外されて回収されていった。 しかし、それらをすべて取り除いた後も、検査員の手は止まらない。マイトの剥き出しになった肉体に異様な光を放つ金属の残骸が、まだいくつも埋め込まれていたからだ。 「なんだ、これ……? 武器どころか……」 検査員は眉をひそめ、ピンセットや専用の工具を手にする。 まずはペニスの先端や尿道に仕込まれていた微細なパルス糸、乳首や舌のピアス、そして下腹部に刻まれたトライアングルの生々しい焼印。 さらには、ガバガバに拡張されたアナルを無理やり塞ぎ、ピアスと連結していた特殊なプラグまで、容赦なく一つ残らず引き抜かれ、外されていった。 「ひぅっ……く、あ……っ!」 意識を失っているはずなのに、長年の調教で神経の隅々まで染みついた過敏な反応から、マイトの身体が痙攣するようにピクリと跳ねる。 しかし、容赦のない処置の手は緩められない。 すべての改造器具や装飾品が剥ぎ取られ、血と透明な愛液に汚れたそれらが無造作にトレイへ放り投げられていく。床に転がった器具の山を見て、検査員は呆れ果てたように息を吐き捨てた。 「おいおい……こんな、神経を直接狂わせるようなガラクタを全身にびっしり仕込んで、ホントにまともに機体の操縦なんてできてたのか? ほとんどただの狂った肉人形じゃねぇか」 呆れと軽蔑の入り混じった言葉を吐き捨てながら、検査員はぐったりと横たわるマイトの身体を荒々しく洗浄台へと移動させる。 温水と強力な消毒液で、マイトの皮膚にこびりついた汚れや匂いを洗い流しながら、助手が記録用のタブレットを片手に淡々と報告を読み上げた。 「全身の粘膜部に無数の拡張・固定用ピアス、尿道内への微弱電流デバイスの埋め込み、下腹部の烙印……。薬物反応もあり。尋問するまでもなく、肉体的・精神的に完全に破壊し尽くされていますね」 「あぁ……。海賊というより、悪質な組織による過酷な性的虐待者の痕跡だな」 検査員は冷ややかな目でマイトの無防備に晒された身体を見下ろすと、タブレットを操作し、淡々と公的な記録を打ち込んでいく。 『――容疑者、または被害者としてのステータスコード変更。……組織的性犯罪の、悪質な被害者、といったところか』 温水のシャワーに晒され、すべてを剥ぎ取られて無力に横たわるマイトの身体から、ディアスに刻み込まれたはずの「所有者の証」が次々と引き剥がされていく。 すべての感覚が剥奪された闇の中で、マイトの意識はただ冷たく沈んでいくのだった。

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