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第2部 第23話

それからさらに数日が経過し、マイトの身体は驚くほどの回復力で、確実に本来の調子を取り戻していっていた。 ベッドの上でただ天井を見つめて過ごす時間は終わり、部屋の中を少しずつ歩き回ることも、ソファに腰掛けてディアスと他愛のない会話を楽しむことも許されるようになった。 かつて全身を覆っていた激しい禁断症状や恐怖の影はすっかり消え失せ、今のマイトを包んでいるのは、満ち足りた気だるさと心地よい平穏だった。 「……んっ、しょっと……」 午後の柔らかな日差しが差し込む私室で、マイトはソファから立ち上がろうと身体を動かした。 だが、その瞬間。 っ……! すっかり忘れていた感覚が、下半身の奥底から電流のように突き抜けた。 失われてからというもの、すっかり大人しくしていたはずのアナルや尿道の粘膜が、まるで眠りから覚めるように熱を帯び、キュンと激しく痙攣したのだ。 「どうした、マイト。めまいでもしたかい?」 すぐ傍に控えていたディアスが、いつものように素早く、しかし優しくその肩を支える。 マイトはふっと息を詰まらせ、微かに頬を赤らめながら、ディアスの胸元に片手をついた。 「いや、めまいじゃねぇよ……。ただ……その……」 言葉を濁すマイトを、ディアスは不思議そうに見下ろした。 「なんだい? どこか痛むのか?」 「痛くはねぇよ。……ただ、なんだ、んーッ……」 マイトは気まずそうに視線をそらし、しかし意を決したようにディアスの目を真っ直ぐに見据えた。 「そろそろさ……身体、動かしても良くねぇか? ほら、バイタルだって完全に安定してっしさ……」 その言葉の意味を、頭の良いディアスが理解するのに一秒もかからなかった。 マイトの青い瞳の奥には、かつての恐怖の色はもうない。あるのは、数日間の「お預け」によって限界まで高まった飢餓感と、愛しい主人の手で再びぐちゃぐちゃにされたいという隠しきれない熱っぽい欲情だった。 ディアスはゆっくりと目を細め、底知れない独占欲と歓喜の光をその瞳に宿した。 「……なるほど。もう、痛みを忘れて新しい刺激が欲しくなったというわけかい?」 「忘れてなんかねぇよ! ……ただ、なんだ……お前の痕、全然なくて物足りねぇんだよ。……ああ、悪かったな、欲求不満で!」 開き直ったように悪態をつくマイトの耳たぶは、恥ずかしさから真っ赤に染まっていた。 その素直で、あまりにも愛おしい「おねだり」を聞いた瞬間、ディアスの中で張り詰めていた理性の糸が、音を立てて切れた。 「ふっ……仕方のない奴だね、マイト」 ディアスは低く、悪魔的に美しい笑みを浮かべると、マイトの腰をガッチリと片手で抱き寄せ、そのまま軽々と持ち上げた。 「体力はまだ戻らないだろうからね。……今日は、オレが君に奉仕してやろう」 ディアスはベッドの上に押し倒したマイトの身体に覆いかぶさり、悪戯っぽく、しかし底知れない愛の熱を孕んだ笑みを浮かべた。 「こんなことは滅多にしないんだからね。……しっかりと味わって、全身で覚えておくんだよ、マイト」 普段は絶対的な支配者として、すべてを奪い、与える側にいる男が、自らの唇で愛犬を溺愛しようとしている。 その予想外の言葉と、ディアスが見せた艶やかな笑みに、マイトは動揺して思わず息を呑んだ。 「は、……っ? お前が、俺に……? 待てよ、それっ!」 反論しようと声を上げかけたマイトの言葉は、しかし次の瞬間、完全に遮られた。 ディアスがスルスルとマイトの身体の下へと這い下がり、そのペニスの根元をしっかりと片手で包み込んだからだ。 熱を帯びてすでに硬くなり始めている先端へと、ディアスはゆっくりと顔を近づけ、迷うことなくその熱を自身の口内へと含んだ。 「ンッ、う、あ、ぁっ……!?」 頭の芯が痺れるような強烈な衝撃と、這い寄るような快感に、マイトは思わずシーツを力強く握りしめた。 柔らかく温かい口腔の壁が、敏感な粘膜を包み込む。 ディアスは乱暴に吸い上げるのではなく、まるで宝物を扱うように優しく、しかしねっとりと舌を這わせながら、マイトのすべてを慈しむように吸い上げていった。 唾液が絡み合う卑猥な水音が、静かな私室のなかに静かに響き渡る。 「うっ……、ンッあ、あぁっ……! ちょ、まっ……、そんな、あ、上手いことすんなよ……っ!」 支配者が自ら下僕に奉仕し、すべてをゆだねてくるという背徳的な構図と、頭がくらくらするほどの極上の快感に、マイトは理性をあっさりとかき乱された。 体力が戻りきっていないはずの身体の奥底から、熱い疼きがじわりと這い上がってくる。 「ふっ……どうだい? オレの愛は伝わったかい、マイト」 ペニスを口から離し、艶やかに濡れた唇で微笑みながら、問いかける。 その瞳には、愛おしさと、これからさらに溺れさせてやろうという黒々とした独占欲が渦巻いている。 「あ、あたま……とろける……っ。くそ、ずるいぞ、こんなの……っ……!」 抗議の言葉を口にしながらも、マイトは逃げるどころか、自分を世話するように見つめるディアスの髪に震える手を伸ばし、その頭を引き寄せるようにして、甘ったるい嬌声をあげてディアスの口に放つ。 甘く蕩けきった瞳でディアスを見上げながら、マイトは名残惜しそうに、そしてどこか不満げに小さく唇をとがらせた。 「……なんだよ、それだけかよ。もう終わりなのか……?」 先ほどまでの強がりはどこへやら、もっと深く、全身をぐちゃぐちゃにかき回してほしいという飢えた欲求が、その声と表情にはっきりと滲み出ている。 ディアスの甘美な奉仕によって、マイトの理性は完全にとんでいた。 だが、ディアスはそんな愛犬の甘えたような不満を、どこか楽しげに、そして慈しむような笑みで受け流した。 「何を言っているんだ。これ以上無理をしたら、せっかくここまで回復した身体がまた元に戻ってしまうだろう?」 ディアスはマイトの頬にそっと手を添え、優しく撫でながら、甘く、しかし絶対的な命令を含んだ声を囁いた。 「もう一週間もすれば、お前の身体も完全に回復する。……だから、それまではちゃんと『待て』をするんだよ、マイト」 一週間。 長いのか短いのか分からないその期間を、飢えた状態のまま過ごせという残酷な言い渡し。 しかし、その言葉の裏にあるのは「一週間後には、以前よりもさらに激しく、たっぷりと愛してやる」という確かな約束だった。 「一週間……も、かよ……っ」 マイトは恨めしそうに息を吐きつつも、どこか嬉しそうに、そして観念したようにふっと表情を緩めた。 「……っまったく、アンタって男は……。人焦らすのだけは、宇宙一上手いよな」 「褒め言葉として受け取っておこう」 ディアスは微笑みながら、マイトの開いた唇へと優しく口づけを落とした。 「さあ、良い子で待っていられるかい? 欲求不満で頭がおかしくなりそうなら、いつでもその可愛い声でオレにねだるいい。こうやって奉仕を与えてやる」 甘い毒を含んだその言葉に、マイトはもう抗うことなどせず、ただトロンと目を細めてディアスの首元に腕を回した。 「……ちぇっ。……もう、わかったよ、ちゃんと待っててやるよ。その代わり、一週間後……絶対、容赦しねぇからな」 悪態をつきながらも、その声は甘ったるく、すっかり飼い慣らされた獣のそれだった。 主人の与える「待て」という名の焦らしのなかで、マイトはさらに深く甘美な期待へと溺れていくのだった。

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