2 / 5

第2話「アプローチ」

『お疲れ様でした~!お先失礼しま~す!』 「「お疲れ様~!」」 勤務を終えた俺は、お店から裏口に周り 警備室のおっちゃんにお疲れ様ですーって挨拶をした後、従業員口を出た。 「佑一さん!」 『健太くん!お待たせ!!ごめんねちょっと遅くなっちゃった!』 道路沿いのガードレールに軽く腰かけていた柴山くんが俺に気づくと右手を上げながら嬉しそうにこちらに近づいてくる。 「全然待ってないですよ!俺もさっき仕事おわったとこだったんで!」 そういって少し目を細めてニコッと微笑む柴山くんの眩しい顔面を見て俺の目は焼けた。 『ぐっ!!!眩しい!!!』 思わず口から言葉が溢れ出す。 おれが柴山くんの笑顔の眩しさから 両腕で視界を遮って目を守っていると… 「あっ!そうだ!」 と何かを思い出したかのように柴山くんは右手あげると、そのままその手で俺の頭を撫ではじめた。 「佑一さん!今日も1日お疲れ様でした!」 そ、そ、そ、そ、それはアカンてぇぇぇえ。 そんなん仕事終わりに彼氏にされたいことランキングTop10にランクインされとるやつやて。あかんてぇ。と脳内では早口な俺が騒いでいたが、俺は咄嗟に 『ちょ、こんなところで恥ずかしいって!』 とつい口走ってしまう。 だが、柴山くんは全てを見透かしたような目で 「ははっ!そう言いながらも嬉しそうじゃないですか!」 といたずらっ子な笑みを浮かべながら俺の心臓に追い討ちをかけてきた。罪な男だよ。まったく。 『もう…/////////』 みたいなことになんないかなぁーーーーー!!!!! とタイムカードを切りながら思っていた。 第2話「アプローチ」 俺は『お疲れ様でした~!お先失礼しま~す!』と同僚や先輩方に伝えお店を出る。 え?さっきまでのは何かって?俺の妄想に決まってるじゃないか。いいじゃないか妄想くらい好き勝手にしたって。 そしていつもどおりに警備室の前を通り、警備のおっちゃんにお疲れ様ですーと伝え従業員口を出る。 そして…もしかしたら従業員口出たらワンチャンさっきの妄想のようなことがあるんじゃないかと一縷の希望をかけて、出口のドアノブに手をかける。 ガチャ。 すると扉の先には… 誰も居なかった。 ですよねー!知ってましたとも!知ってましたとも!ええ、ええ。もう慣れております。 でもいいじゃん、ちょっとくらい期待したっていいじゃないか!!!…そしてごめん…柴山くん…勝手に妄想の対象にしてしまい…。 空しくも道路沿いを走る車の音がやたらと大きく聞こえる。 一通りの妄想を終えた俺は、 『さぁ~って…のむヨー(のむヨーグルト)でも買って帰りますか~』 と、両手を上げて身体を伸ばした後にいつも通りの帰路についた。 ピロンピロンピロン コンビニの来店チャイムが鳴る。 俺はスタスタとヨーグルトなどが置いてある冷蔵コーナーへと足を進める。 コーナーの前では背が高い黒いジャージ姿の男性が棚を覗き込んで商品を選んでいた。 後ろ姿だけど、めっちゃかっこいい。 良い後ろ姿をありがとう…と心の中で両手を合わせつつ、お目当てののむヨーグルトを横から取らせてもらうことにした。 『えーっとアロエ&ライチののむヨーグルトは…っとー…あ!あった!』 のむヨーグルトに手を伸ばしたとき、コーナーにいた男性も同じものを手に取ろうとした為、手がぶつかってしまった。 「『あっすみません!』」 手を引いて反射的に頭を軽く下げたところに聞き覚えのある声が聞こえた。 「佑一さん?」 え?この声 『柴山くん!?』 ん?というか今…もしかして下の名前呼ばれた…? 「あっ!やっぱり佑一さんだ!お仕事終わりですか?」 やっぱり下の名前で呼んでくれてる…!!無意識かな?う…嬉しい!!! 『う、うん!仕事終わりのご褒美にのむヨーグルト買って帰ろうかなって思って…』 ふふっと柴山くんが笑う 「ご褒美…かわいいですね。」 か、か、かわいいですね!?!?! どどどどどどうゆうこと?!ん!?柴山くん天然たらしだとは思っていたけど、ここまでだったの?!いやいやいや落ち着け落ち着け。そんな深い意味はないはずだ、落ち着け舞い上がるな佑一。 『し、柴山くんは…どうしてここに?』 そんなん買い物に来たに決まってるじゃないか、 頭が混乱して意味わからんこと聞いちゃってるよ。 「俺は夜のお散歩ですね。毎日この辺走ってるんです。それでコンビニの前通った時に、この前、佑一さんがオススメしてくださったのむヨーグルトのこと思い出して…あるかなーと思って探してたら、まさかのご本人登場で驚いちゃいました!」 笑顔が眩しい…そして…夜のお散歩…言い方がかわいい!! 『嬉しい…あんな何気ない会話覚えててくれたなんて…』 顔が熱い…。 「佑一さんと話したこと…忘れるわけないじゃないですか。………あっ…。」 『ん?』 柴山くんがのむヨーグルトを指差す。 「ひとつ…しかありませんね!」 『!!!ほんとだ!気付かなかった!柴山くん!どうぞ!』 「!!いいんですか?」 『もちろん!!柴山くんに飲んでほしくて!遠慮せず!』 柴山くんは優しく微笑みのむヨーグルトを手に取る。 「ありがとうございます!」 と嬉しそうな笑顔を向けてくれた。 俺の方こそありがとうだよ。今夜は白米がウマイぞ。 「じゃあちょっと買ってきますね!」 『あ、うん!買っといで!買っといで!』 柴山くんがレジに向かうと、俺は再び棚を見つめ本日のお供のむヨーグルトを選び始めた。 『牛乳たっぷりにするか…でもブルーベリーもありだな…』 俺がブツブツ言いながら吟味していると、首もとに冷たい何かが触れた。 『ひゃぁあ!!!!!』 驚いて振りかえるとそこには、のむヨーグルトを俺の首もとに当てたであろう体勢で柴山くんが立っていた。 『だー!びっくりしたー!』 「ふふっ…驚かしちゃってすみません…」 また柴山くんがツボってるよ。 もしかして柴山くんてちょっと…いや…実はかなりSだったりする? 「はい、佑一さん。これ。」 そういうと柴山くんは今買ったばかりののむヨーグルトを俺に差し出した。 『え?』 「これは今日も1日頑張った佑一さんへの、俺からのご褒美です。」 ギュン!!!!!!! 『い、いやいや、悪い悪い悪いって!』 「俺がただ受け取ってほしいだけなんで。」 そういって柴山くんの大きな手が俺の手を取り、のむヨーグルトを俺の手のひらに置く。 『ありがとう…』 「こちらこそ…」 なんか…照れちゃって…どうしよう…顔が見れない。それに…手…まだ握られたまま…。 『……………』 「……………」 客「あのーすみません。ちょっと、そこのやつ取ってもいいですか?」 『え!あ、すみません!』 俺と柴山くんはすぐに棚の前から移動し、 軽く頭を下げる。 「佑一さん!とりあえず出ましょうか!」 『そ、そうだね!』 ピロンピロンピロン コンビニを出ると夜風が火照った顔を冷ます。夜風が気持ちいい。 「佑一さん、帰り道どっちですか?」 『え?あっちだよ!』 俺はそう言って左のラーメン屋さん側を指差す。 「一緒だ!よかったら途中まで一緒に帰りませんか?」 『え、あ、うん!ぜひ!』 そう言うと2人で道路沿いを歩き始めた。 当たり前のように柴山くんは車道側を歩き、歩幅も俺に合わせてくれてるように感じた。 『いやー、でもびっくりしたなー。まさか柴山くんがこんなご近所さんだったなんて。』 「俺もです。今日走って良かったです。」 いちいちかわいいな。柴山くん。 『ん!?まってそういえば柴山くん!コンビニで結局自分のもの何にも買ってなくない?』 「え?あぁほんとだ。佑一さんに会えたことが嬉しすぎて忘れてしまってました!」 ギュン!!! 俺の胸が尊さに締め付けられる。 そういうとこだよ柴山くん! さらっとそんなキラーワードが出てくるなんて 罪な男だよまったく。 俺は柴山くんがくれた、のむヨーグルトにストローをさして一口飲む。 『うんまぁ~!!!』 「ふふっ、良かったです!」 俺は柴山くんに飲むヨーグルトを差し出す。 『はい!柴山くんもどうぞ!』 !?!?!俺何やってるの!? 「え!!!」 柴山くんが少し大きな声を出す。 『…って俺と間接キスになっちゃうから嫌か~あはは~ごめん~つい~』 だから何言ってんだっておれ!!! するとグイッと俺ののむヨーグルトを持つ手が引っぱられる。 ズズッ 柴山くんは、のむヨーグルトを一口飲むと。 少し大人な雰囲気な笑みを浮かべた。 「間接キス…しちゃいましたね。」 …え?…これって…いつもの妄想じゃないよね? 「これ!本当に美味しいですね!ありがとうございます。」 『え!あ、あぁ!ね!!美味しいよね!良かった口にあったみたいで!』 「…はい!すごく、美味しかったです。」 柴山くんが真っ直ぐな瞳でジッと見つめてくる。 『あ、あ、あ、えっと!柴山くん!俺ここ曲がったとこだから!今日はありがとね!』 「え?あぁ!そうだったんですね!こちらこそありがとうございました!」 『うん!じゃ、じゃあ!またね!おやすみ!』 「はい!おやすみなさい!」 俺は逃げるように柴山くんに別れを告げ家までダッシュする。だぁぁぁぁぁあ!もう!これって…これって!!!! 走り去る佑一を見送る柴山。 「…はぁ…ちょっとグイグイいきすぎたかな…。」 頭の後ろを右手でかきながら自己反省会をはじめていた。 ダダダダダダダダダ ガチャ!バタン! 『はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…』 これって… これって… もう、本当に… 好きじゃん…。 勘違いしちゃうってぇ…。 えぇ…。 第2話「アプローチ」

ともだちにシェアしよう!