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第1.5話 「Re:妄想男子と柴山くん!」
ある日の朝、
俺は洗面台でいつも通り、
ある場所に向かう準備をしていた。
ヘアジェルで髪型を整え
ヘアスプレーで形を固定する。
『うっし!今日こそ佑一さんに連絡先を聞くぞ!』
パチン!
俺は両手で自分の頰を叩き気合いを入れる。
第1.5話 「Re:妄想男子と柴山くん!」
ピピッ
改札を出て、右に曲がり。俺は佑一さんの勤めるアパレル店が入っている建物目指す。
建物に近づくにつれて俺の心臓の鼓動が早くなる。
歩く歩道にさしかかった時
いつも真っ先に頭に浮かぶことがある。
それは…今日、佑一さんがお店にいらっしゃるかどうか…ということだ。
佑一さん!居てくれ!頼む!
お店に通いはじめて約2ヶ月。
運がいいことに訪れる日はほとんどいらっしゃるのだが、当たり前だがいらっしゃらない日もあるわけで。
いつもこの歩く歩道にさしかかる時に
何故か頭に浮かんでくるものだからドキドキしてしまう。
佑一さんとのいまの関係はそこまで悪くはない…はずだ。
非番の日は必ずと言ってもいいほど顔を出していたからか、佑一さんとは大分親しく話せるようになった……と思う。
そうこう考えていると、
佑一さんのアパレル店が入った建物が見えてきた。
俺は早まる心臓の鼓動を落ち着かせるために、一度深く息を吸って呼吸を整える。
『こんにちはー!』
店に入ると、ベテランスタッフの竹原さんが
駆け寄ってきた。
「柴山さん!こんにちは!」
『どもっす!』
えーっと佑一さんは…
俺は佑一さんの姿を探して店内を見渡す。
するとレジの中に佑一さんの姿を見つけた。
『あっ!寺川さん!』
居てくれた!っしゃ!
俺は心の中でガッツポーズを決める。
あ、佑一さん今日も目をぎゅって瞑ってる。
かわいいなぁ…。
佑一さんが笑顔でレジから出てくる。
やべぇ!かわいい!
佑一さんとの距離が近づくにつれ俺の心臓の音が煩くなる。
「柴山くん!こんにちは~!あれ?今日はお仕事お休み?」
『はい!!!』
…やっちまったーーーーー!!!!!
緊張しすぎてでけぇ声出しちまった!
と、とりあえず大声出しちまったこと謝んねぇと!
『あ、大きな声出してしまってすみません!』
俺は人差し指で頰を掻きながら、
ただ笑うことしか出来なかった。
「今日も元気だね~!」
佑一さんは全く気にしない様子で優しい笑顔を俺に向けてくれた。
…こういうところも…好きだ。
じゃねぇだろ!とりあえず何か話さねぇと!
『あ!えっと、今日はその!…ネクタイ!ネクタイが欲しくて!』
あぶねぇ、佑一さんからしたら俺はただの客なんだから買い物に来た体でなきゃ引かれちまうだろ!
俺はジェスチャーを加えてネクタイが欲しいことを佑一さんに伝えた。
「今日はネクタイか!じゃあこっちだね!」
俺は佑一さんにネクタイの棚まで案内され、棚に到着するなり佑一さんと目が合う。
ドキッ
「どんな感じが良いとかある?色とか柄とかざっくりでもイメージ決まってたら」
『あっ!えっと…寺川さんのオススメで…。』
俺は、あなたが選んでくれることが何よりも嬉しいんで!って伝えてぇ…
「え!?また俺のオススメ?…いいの?今日も俺のオススメだと、毎回俺のオススメになっちゃうけど!」
『はい!寺川さんのオススメが良いんです!』
それが良いんです!
むしろそれじゃなきゃ駄目なんです!
「そっか~」
あ、佑一さん。少し嬉しそう。
佑一さんはネクタイの棚と俺の顔を交互に見ながら、俺に合うネクタイを選んでくれている…いつも思うが…これ…幸せすぎんだろ。
あ、後ろの髪の毛少しハネてる。かわいい。
「うーん…この前は確かターコイズ系の波みたいな柄のネクタイだったから…」
『あのネクタイ!通勤の時につけていたら先輩にすごく良いネクタイって褒められたんですよ!俺もすごく気に入ってます!』
「本当!?わぁー嬉しいな!気に入ってもらえたみたいで良かった良かった!」
ドキッ
顔の体温がどんどん上がっている気がする。
「そうだなぁ~じゃあ今回はこれとかどうかな?」
そう言いながら佑一さんは小さな茶色の肉球の刺繍が入った深緑色のネクタイを手に取って、俺の首もとに当ててくれた。
!!!!!!!!!
『ぐっ…』
ち、近けぇ!!!やべぇ顔みれねぇ!!!
それに…手が!!!服越しに佑一さんの手が当たってる!!!
もうこの服洗いたくねぇ!!!
いや落ち着け俺。絶対に顔に出すな。
あぁー!でも!
好きだ!佑一さん!好きだ!好きだ!大好きだ!
「ほら、似合う!どうかな?」
『は、はい!好きです!』
…あ。
や、や、や、やべぇ!!!
口が滑って言っちまった!!!!!
好きです!じゃねぇだろ!
すごく良いですね!って言うところだろ!
あぁーぜってぇやべぇ奴だって引かれた。
俺は恐る恐る佑一さんの顔を見る。
「……良かった~!実はこのネクタイ俺けっこう気に入ってたから、柴山くんにおむかえしてもらえて嬉しい!」
あれ?気にしてない?
っぶねーーーーー。
ドッドッドッドッという心臓の音と共に
顔から汗がダラダラと溢れだす。
でも、待てよ。
もうここまで来たら勢いで連絡先聞いちゃってもいいんじゃないか?
俺の脳内は過度の緊張と恥ずかしさでオーバーヒートしていた。
寺川さん…連絡先教えてもらえますか?
いや、違うな。
寺川さんこれ…俺の連絡先です。良かったら連絡ください。
これも違うな。
「柴山くん!」
佑一さんの声に俺の意識が戻る。
『はいっ!!!』
「なんかボーッとしてるし顔も赤いけど、大丈夫?暑い?熱とかある?」
そう言うと佑一さんは顔を少し近づけジッと見つめてくる。
ち、ち、ち、ち、近い。
ほっぺもちもちしてる!かわいい!
『え?あ、いや、その…さっき走ってたんでその反動が出たんだと思います。その、俺汗っかきなんで…ははっ…。』
俺は右手で頭の後ろを掻く。
まずい!このままだと俺の心臓が持たない!
佑一さん!頼むもう少し離れてくれ!いややっぱ離れないでくれ!むしろもう抱きついてくれ!
俺の思考と情緒は完全に壊れていた。
「分かるっ!!!俺もめちゃくちゃ汗っかきだから気持ち分かるよ!!動いたあといきなり止まると、後から滝のように汗出てくるよね!ほんと、どうにかなんないのかね!」
フフッ
俺、佑一さんの時折出るこのオーバーリアクション好きなんだよなぁ。
本当に素直な人なんだろうな。
…やっぱ俺、この人のこと
ぜってぇ他の誰にも渡したくない。
『じゃあ、今日はこのネクタイお願いします!』
俺は佑一さんの手を握る。
絶対あなたを、振り向かせてみせる。
第1.5話 「Re:妄想男子と柴山くん!」
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