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第8話「踏み出す一歩」

※第8話は佑一視点のお話です。 主軸『』←は佑一になります。 夜風になびいて桜の花びらが散る。 「佑一さん。」 『ん?』 柴山くんと目が合う。 「好きです。」 『…え……?』 「あなたのことが、好きです。      はじめてあった時から。」 第8話「踏み出す一歩」 真剣な眼差しで柴山くんは 俺に思いを告げてくれた。 突然の告白に俺の脳内は困惑する え…いま…好きって言った…?誰が?…誰のことを…え…ちょっと…まって…え…でも柴山くん…ずっと好きな人が…居たんじゃ…え…どういうこと… 「驚かしてしまってすみません。でも俺、本気です。」 ど、どうしよう、な、な何か答えなきゃ。 嬉しい、嬉しいんだけど、ちょっとほんとにいま何がなんだか分からなくて…何が起きてるかまったく理解できなくて…思考が整理できないし、う、うまく言葉が出てこない。 「…返事はいつでも大丈夫です。」 戸惑う俺に柴山くんは、優しく声をかけてくれた。 声が出せなくなってしまった俺は、 ただ頷くことしか出来なかった。 そんな俺の姿を見て柴山くんは 優しい声色で気遣ってくれた。 「じゃあ、そろそろ帰りましょうか。送っていきます。」 『うん…ありがとう。』 車へと向かい歩く柴山くんの後ろを 俺はぼんやりしながらついていく。 どうしよう…頭がほわほわしてる。 え、これって、俺の妄想なのかな…。 だって…あの柴山くんが…俺のこと…す…好きだって…そんな…そんな都合良い展開…あるわけ… ゴッ! ……………………。 『いいいいいったぁぁぁああ!!!!』 鈍い痛みが膝を直撃する。 ボーッと歩いてたせいで目の前に現れたレンガの花壇に気づかず膝を強打してしまったのだ。 「ゆ!佑一さん!?!大丈夫ですか?!」 俺の声を聞いた柴山くんが駆け寄ってくる。 それと同時に俺は痛さと恥ずかしさのダブルパンチでうずくまってしまう。 柴山くんは立て膝をついて俺の肩を支える。 「大丈夫ですか?立てますか?」 『だ、大丈夫、大丈夫。血も出てないし!ごめんね!ビックリさせて!』 口から出る言葉とは裏腹に俺の中では、いっっってぇぇぇえ!!!と叫ぶもう一人の俺がいた。 「…佑一さん、ちょっと失礼します。」 そう言うと柴山くんは俺の背中と両足を間に手を回しヒョイっと持ち上げる。 『しししししし柴山くん!?!』 こここここここここここれって、 人生一度は憧れることランキングNo.1の お姫様抱っこーーーーーー!?!?! え、なに?おれこの足の強打でこの後死ぬの?え?死ぬの? 「俺なんかに、されるのは不本意かもしれませんが。緊急事態なんで許してください。」 俺のふざけた脳内は、柴山くんのこの真剣な言葉を聞いてふざけることをやめた。 柴山くん…俺なんかにされるのは不本意かもしれませんが…って… …そんなことない…そんなことないよ…。 俺は君にされたいよ…。 君だからこんなにも胸がドキドキしてるんだよ… そう思ってはいるのに、 なぜか声に出せない。 このまま伝えればいいだけなのに。 そんな簡単なことが… いま何よりも難しいなんて。 君はきっと気づいてないよね。 俺は自分の顔を柴山くんの胸に少しだけ埋めた。 車に着くと、柴山くんは俺のズボンの裾を捲り怪我の具合を確認する。 「確かに血は出てないですね。でも腫れてますね。 あー!!すみません!!!俺が告白なんかしたからですよね!」 ドキッ!!! …改めて言われると心臓が持たない… 『そ、そ、そ、そんな柴山くんは何も悪くない!』 柴山くんはヌンッと顔を上げると 「よし!病院行きましょう!」 『病院?!?!いやいやいや!大袈裟すぎるって!』 気づけば柴山くんはスマホで、この時間でもやっている近くの病院を調べていた。 『柴山くん!ストップ!ストーップ!』 俺は柴山くんを必死に止める。 「でも俺!心配で!」 クゥーンと言う声が聞こえてきそうな柴犬のような顔で俺のことを見つめてくる。 くっ!!!なんだこのカワイイ柴犬は!!! 駄目だ俺!屈するな!屈するな!!! 『じゃあ!せめて!ドラックストア!帰りにドラックストア寄ってもらってもいいかな?』 露骨に不服そうな顔をする柴山くんだったが、はぁー…と一度ため息をつくと、 「わかりました…でも、明日腫れがひどくなるようならちゃんと病院行ってくださいね。約束ですよ!」 『…うん!約束する!』 じゃあ閉めますね。 俺は助手席の外から足を車内へ引っ込めると、柴山くんが扉を閉める。 運転席側に回った柴山くんは扉を開けるとそのまま乗り込まず 「ちょっとトイレ行ってきますが。佑一さんは大丈夫ですか?」と確認してくれた。 『大丈夫だよ!ありがとう!』 「わかりました。すぐ戻ります。」 そう言うと柴山くんはポケットから車の鍵を取り出し座席に置きエンジンをかけてくれた。 「テレビでも音楽でも好きにいじっちゃってください。」 『わかった!ありがとう!』 柴山くんは、一度だけ俺の頭を撫でると車を離れた。 ………………………だぁぁぁぁぁあ!!!!!! なっっっっっっにっっっっっ!!!! どこまで完璧な男なんだ柴山健太!!!!! スパダリにもほどがあるだろ!!!!! 俺死ぬの?とか思ってたけど、むしろもう死んでるんじゃないかって思ってきたよ。これ、走馬灯のかわりに妄想を具現化してくれてるやつだろ。これ。 …でもほんとに…なんで…あんな素敵な人が…俺なんかのこと…好きになるんだろ…もしかして…ずっと思ってた人にフラれでもしたのかな…だから…寂しさ埋めるために…俺に…いやそんな子じゃないだろ!…でも… そうジェットコースターのような感情の上下に振り回されている俺の視界に、運転席の座席に置かれた車の鍵が映る。 暗くてよく見えないが、何かマスコット?のようなキーホルダーがついている。 何のキーホルダーだろ? 俺がキーホルダーに手を伸ばしたとき、 コンコンッと助手席側のドアをノックされ 俺は振り返る。 ガチャッ そこには柴山くんがいた。 「はい!これで冷やしてください!ちょっと心許ないかもしれないですけど。」 『え?うわっと!』 ヒョイっと柴山くんが冷たいお水のペットボトルを渡してくれた。 『冷たい…え?もしかしてトイレじゃなくて、これ買いに?』 「いや、トイレです。」 絶対嘘だー!!!まったくこの男はー!!! 柴山くんの顔をみると、 少し息が荒い…それに汗もかいてる。 きっと俺を待たせないように走って買いに行ってくれたんだなぁ。 …本当にまったく。この人は…。 窓の外の移り変わる景色を眺めながら、 俺は、ゆっくり、丁寧に さっき公園で起きた出来事や、 今までの柴山くんと過ごした時間を ひとつひとつ思い出して 自分の気持ちの整理をはじめた。 『柴山くん送ってくれてありがとうね!』 「本当に大丈夫ですか?階段上がれますか?お俺が抱えましょうか?」 柴山くんはいたって真面目にジェスチャーでお姫様抱っこのポーズをする。 『こらこらこらそんな簡単にお姫様抱っこを乱用するんじゃありません。』 柴山くんは露骨にシュンとする。 柴山くんっていつも落ち着いてて大人びたイメージだったけど、会う回数が増えるにつれて…ううん、君のことを知るにつれて…本当は年相応の男の子なんだなぁって分かってきたよ。背高いのに背伸びしてるみたいな。 そうだよね。だってまだ23歳だもんね。 俺は鞄から小さな桜のポチ袋を取り出し柴山くんに渡す。 『柴山くん。はい、これ。』 「佑一さん?これは?あけてもいいですか?」 俺が頷くと、柴山くんがポチ袋の中身を取り出す。 中には1000円札が2枚折り畳まれて入っていた。 『ちょっと少ないかもだけど、今日のガソリン代。』 「そんな!いただけないです!」 柴山くんは2000円を俺に突き返してくる。 俺は手でバッテンを作り受け取りを拒否する。 『返金は承っておりませーん!』 「ええ…でも…。」 『受け取って。俺の心ばかりの気持ちだから。』 そう言うと柴山くんは分かりましたと良い、受け取ってくれた。 「ありがとうございます。」 『どういたしまして。』 「それにしても、よくポチ袋なんか持ってましたね。しかも桜の。」 『あぁ、それね!さっき寄ってくれたドラックストアでコッソリ買ったやつなんだ!間に合わせでごめんね!』 「いえ!!嬉しいです!!!一生大切にします!!」 『一生って、んな大袈裟な…』 食い気味に答えてくれる柴山くん。 嬉しそうで、俺も嬉しいな…。 俺も柴山くんのことが好き。 この気持ちに間違いはない。 でも、なんで柴山くんが 俺のことを好きになってくれたか、 考えれば考えるほどまだ分からない。 でもきっと君のあの真っ直ぐな告白には 嘘偽りはないと思うから。 さっきは混乱しちゃって 本当に何も考えられなくて 思いのひとつも口に出すことは出来なかったけど。 今は違う。 俺はその気持ちに真っ直ぐ応えたい。 でも今すぐに返事は出来ません。 ごめんね柴山くん。 俺も好きって言えば 付き合えるかもしれない。 でも俺はこんな中途半端な気持ちで 君に返事をしたくない。 自分の気持ちがしっかり整理できるまで。 自分自身が納得できるまで。 もう少しだけ時間をください。 君と一緒に過ごせる未来を信じたいから… だから、その未来に少しでも近づけるように… 俺も一歩踏み出すから。 『柴山くん!』 「はい!」 俺はポケットからスマートフォンを取り出す。 深く息を吸い込む。 …踏み出す《勇気》!!!!! 『連絡先!!!聞いてもいいかな?』 そう言うと柴山くんは… 下を向いてしまった。 「…………………」 『…え?柴山くん?』 「…………………………」 『し、柴山くん???』 「…………っし…」 『し?』 「っっっしゃぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」 ワンワンワンワン!!!!! 突然の柴山くんの大声に近所のワンコたちが驚き大合唱をはじめる。 「ああ!すいません!」 『ぷふっ…』 「フフッ…」 俺たちは笑いながら、連絡先を交換した。 「それじゃあ、佑一さん。おやすみなさい。」 『うん!おやすみなさい!』 俺は柴山くんに背を向け家に向かって歩き始める。 階段をのぼろうとした時、 車から降りてきて駆け寄ってきた柴山くんが 後ろから、俺を強く深く抱き締めた。 『…柴山…くん?』 「俺、いつまでも待ってますから…」 そう言うと、 ゆっくりと…名残惜しそうに俺から離れた。 「おやすみなさい。」 柴山くんは車へと歩きはじめる。 『……………くっ!!!!!』 俺は振り返り柴山くんに駆け寄る。 『柴山くん!』 柴山くんが振り返ると同時に 彼のネクタイをグイっと引っ張る。 背を伸ばし顔を近づけ その唇にキスをした。 「え…」 柴山くんの表情が固まる。 『予約…したからね…』 その言葉を聞いた柴山くんの目が潤んだ気がした。 「!!!!!…は…はい。」 ……………………。 『じゃあ…今度こそおやすみ!』 「…は、はい…。おやすみなさい。」 俺は逃げるように階段をかけ上がり 家の扉を開け帰宅した。 扉をしめる直前見えたのは、 うずくまった柴山くんの姿。 『はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…。 すぅぅぅぅう…はぁぁぁぁぁ…』 俺は一度深呼吸をして呼吸を整える… な、な、な、な、な、な、な 何をしてんだおれわぁぁぁぁぁぁぁあ!!! まって!だっていま俺…柴山くんにキスして… ぬぅわぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!! 気づいたら身体が動いてしまっていた… やっちまったぁぁぁぁぁぁあ!!! ひいいいいいい穴があったら入りたいいいいい。 俺は自分がしでかしたとんでもない行動による羞恥心で悶絶し、その日は1時間しか寝ることが出来なかった。 一方、柴山は、ボーッとしたまま帰宅し。 心ここにあらずのまま風呂に入り、 歯を磨き、明日の支度を終えるとベッドに入った。 そしてベッドに入った瞬間に… 「あ!!! アルディーンのイベント誘ってねぇ!!!!!」 と、当初の目的のうちの 大きな一つを思い出したのであった。 第8話「踏み出す一歩」

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