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第10話「とりあえず、池袋行く?」
第10話「とりあえず、池袋行く?」
ジリリリリリリリリリ
俺はスマートフォンのアラームを止めて、
今一度布団を顔の位置まで上げ二度寝を試みる。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリ
スヌーズ機能が俺に起きろと再び鳴り始める。無慈悲だ。
俺は、再びアラームを止める…
今度はスヌーズ機能もしっかりとOFFにした。
『…………………。眠い…。』
昨日のことは…夢…?………そうだよね…夢だよね………再びうとうとし始めたとき…
シュポッ
メッセージアプリのポップアップが表示される。
柴山 [佑一さん!おはようございま…]
バッ!!!!!!!
俺はものすごい勢いで布団から起き上がる。
ゆゆゆゆゆゆ夢じゃなかったぁぁぁぁぁあ!!!!!!
どどどどどどどうしよう!!!!!
と、とりあえず、何か返さないと!!!
俺はポップアップをタップしメッセージアプリを開く。
柴山 [佑一さん!おはようございます!
よく眠れましたか?]
1時間ほどしか眠れませんでした…なんて正直に送れるはずもなく、
『柴山くんおはよう!
うん!めっちゃ爆睡してた(笑)
柴山くんは眠れたかな???』
というメッセージと共に
推しが[?]とやっているスタンプを一緒に送った。
ドキドキドキドキ
シュポッ
早っ!
すぐ帰ってきた柴山くんの返信。
柴山 [俺はドキドキしすぎて、
あまり寝れませんでした。]
ギュン!!!!!!
俺は柴山くんのド直球返信にKO寸前まで追い込まれた。
シュポッ
続けて柴山くんが送ってきたのは
柴犬がうとうとしているスタンプだった。
K.O.!!!!!!!!
…それは罪深けぇよ…罪深けぇって…柴山健太…。
…でも嬉しいな…柴山くん、俺と同じだったんだ…へへっ
俺も素直に返信してみようかな。
[実は俺も…]
…うーん、なんか素っ気ない気がする
俺は文字を消して打ち直す。
[俺もドキドキしちゃって眠れなかったよ!]
…元気すぎてキチィな…
再び文字を消す。
どうしよう何を送っても失敗しかしない気がする!
考えぬいた俺の答えがこれだ
シュポッ
シュポッ
2つのスタンプを無言で送る。
一つ目のスタンプは
柴犬の頭をよしよしするユル人間。
二つ目のスタンプは
Mee too と手でハート作ってる厳つい熊のスタンプ。
………………。まってこれ俺最悪手打ってね?
………………どうしよう…既読ついてから…全然返信来ない…。終わった。
俺が溶けはじめていると、
なんだなんだ!と尻尾を振りながら五男犬のチョボが俺の顔を舐めにくる。
ベロベロベロベロベロ。
俺はチョボにされるがまま溶けていく。
シュポッ
俺は本来の形を取り戻し、
チョボを顔から引き剥がすと
メッセージを確認する。
柴山 [あの、佑一さんの声聞きたいです。]
とてつもない破壊力のド直球メッセージに
俺の思考は完全に停止した。
俺は無意識のままボイスメッセージのボタンを押し。カチコチ言葉になりながらも、
『シバヤマクン。オハヨウ。キョウモオシゴトガンバッテネ。』と吹き込み送った。
……………………。
ハッ!!!俺は一体何をやってるんだ!?
やっと自我を取り戻す俺。
シュポッ
柴山 [佑一さん。その…電話できればってつもりで送ったのですが…。]
だぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!
はっっっず!!!
そりゃそうだよね!!!
普通ボイスメッセージなんか送らないよね!
うわっ絶対引かれ…
シュポッ
俺の思考を遮るように、柴山くんから
メッセージが届く。
柴山 [むしろ、ありがとうございます。保存しました。毎日聞きます。]
…………だぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!
溺愛じゃねぇか!!!
……でも…本当になんで…
俺なんかをこんなにも好いてくれてるんだろう。
…俺も柴山くんの声聞きたいな。
今いきなり電話かけちゃってもいいのかな…。
俺がメッセージアプリの通話ボタンをタップしようとした時、
ティロティロティロリン
柴山くんからいきなり電話がかかってきた。
ピッ!!!!!
俺は反射的にすぐ通話ボタンをタップした。
『はい!もしもし!佑一です!』
「…ふふっ…」
『し、柴山くん?』
「あっ…ごめんなさい…ふふっ…なんか…朝から元気いっぱいだなって思って…ふふっ」
『ちょっ!なんか馬鹿にしてないか?柴山くんよー!』
「してませんよ…ふふっ…」
『してるじゃん!絶対!』
俺も柴山くんにつられてちょっと笑ってしまう。
「いきなり電話しちゃってごめんなさい。電話大丈夫でした?」
『うん!大丈夫だよ!…俺もちょうど柴山くんの声…聞きたいって…思ってたとこだったから…』
「……………………。嬉しいです。」
『柴山くんは、これからお仕事?』
「はい、もう少ししたら出るところです。」
『そっか、今日も無理せずほどほどに頑張ってね!』
「…はい!ありがとうございます!」
そっか…あまり時間がない中でも電話かけてくれたんだ…嬉しいな。
「佑一さんは今日お仕事ですか?」
『いや、今日は休みで友達とこれから池袋でヲタ活を……………』
「…佑一さん?」
やっちまったぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!
そうじゃん!今日そうじゃん!
このあとまりちゃんと池袋じゃん!
完っ全に忘れてた!!!!(最低)
「佑一さん?もしもし?大丈夫ですか?」
『し、柴山くん!!ごめん!!俺今から支度しないと!!!また連絡するね!!!』
「…ふふっ…はい!俺もまた連絡しますね!じゃあまた!」
『あっ!ちょっとまって!!』
「はい…?」
『いってらっしゃい!気をつけてね!』
「!!!…いってきます。佑一さんもいってらっしゃい。」
『うん!いってきます!じゃあ、またね!』
「はい、また!」
柴山くんの声を聞き終えた俺は通話を切り。
すぐさま風呂場にダッシュする。
まぁぁぁぁぁあずい!!!!
俺は即行で身支度を終えると家を飛び出す。
『いってきます!!!!』
間に合え!間に合え!
あの電車に乗らないと次の電車20分は来ない!絶対に間に合わん!
「間もなくー電車が発車します。」
プルルルルルルルル
あ、やばい間に合わない終わった。
ピピッ
プシュー ピーロン ピーロン
俺は改札を通ったタイミングで電車のドアか閉まった。
やっちまった…
俺はとりあえず遅刻することを
まりちゃんに謝罪するために
スマートフォンをポケットから取り出すと
ピーロン ピーロン
電車のドアが開いた。
『え?』と呆気にとられていると
車掌さんが運転席の窓から
「お兄さん!早く!」と言ってくれ
俺はそんな優しい車掌さんのご厚意に甘えて電車へと乗り込んだ。
ありがとう…ありがとう車掌さん。
顔と上半身から滝のような汗が流れはじめる。
俺は汗を拭きながら空いている席に腰かけると
近くにいた乗客のおっちゃんが
「兄ちゃん!間に合って良かったな!」と声をかけてくれた。
周りの人たちも「ほんとに!」と微笑んでくださり
俺は「ありがとうございます!」とお礼を伝えた。
都会の電車なら絶対に起きないことだと思うが、都会から少し離れたプチ田舎のローカル線だと、実はたまにあることなのだ。
本数が少ない路線&乗客数が少ないということもあってか、時折この様な事がある。
皆一度は経験しているからなのか、持ちつ持たれつというような感じで…すごく温かい路線なのだ。
本当にありがとうございます。
ギリギリになってはしまったが、
温かな人たちのお陰で無事に俺は待ち合わせ時間に間に合うことができた。
《渋谷駅》シバ公前
シバ公像の前に、薄ピンクのトレーナーに黒のロングスカート。ぶたちゃんのトートバッグを持ったまりちゃんを見つけた。
『まりちゃん!ごめん!ギリギリになった!』
俺は、まりちゃんに駆け寄る。
まりちゃんは俺に気づくと両手を胸の高さでフリフリしながら歩いてくる。
「ゆーいちくん!おつかれー!大丈夫?」
『大丈夫…ありがとう!じゃあ、行きますか!』
「行きましょう!!そして当てましょう!」
俺たちは、決戦の地。
【ツミスナ】POPアップショップへと向かった。
【ツミスナック・ワンダラスサンド】
通称【ツミスナ】…
ティロニーが展開する大人気ソーシャルゲームだ。
ある日、主人公はいきなり何の前触れもなく異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされてしまった先は、罪深い味のお菓子達が万人に愛されるプロのお菓子通称《御菓士》を目指す御菓士熟成専用学校。
一癖も二癖もあるお菓子たちと共に学園内の問題を解決し、元の世界への帰り道を探す…という物語だ。
俺はその中でも、
主人公と同学年のツンデレジャーキーの
《ジャーキー・ハウンド》推しだ。
俺の癖のこれでもかというほど詰め込んだジャーキーくんにガチ恋勢なのだ。※ただし過激派ではなく平和主義派だ。だって推し活なのだから、みんな幸せが良いに決まってるじゃないか。住み分けが大事だと俺は思う。
『ジャーキーくん…来てくれるかなぁ…』
そう自信なさげに俺が言うとまりちゃんが真顔で、
「え?私出しますけど?」と言ってくる。
そうなのだ、何故だか分からないがまりちゃんは毎回ブラインド商品でジャーキーくんを引き当ててくれるのだ。ちなみにまりちゃんは推しの自引きを中々出来ない…まさに物欲センサー。
俺はまりちゃんに両手を合わせる。
『あざっす!!!!!』
「まぁ、まかせてくださいな!」とドヤ顔のまりちゃん。
「あたしも《オレオ様》出せるかなぁ~…」
まりちゃんの推し《オレオ様》こと、
《オレオ・キンパクパウダー》
ジャーキーの先輩でありレシピ(寮のこと)を纏める料理長だ。
ロン毛褐色オレ様系が癖なまりちゃんドンピシャのキャラクターなのだ。
『大丈夫!仮にまりちゃんがオレオ自引き出来なくても、俺がマカロンかフロート辺り引くから、交換探そ!』
いや、そこは俺がオレオ引くからって言えよとか思わないでいただきたい。引けないのだ!俺も!
だけど何故だか人気キャラの
《マカロン》や《フロート》は毎回のように引けるのだ。
俺たちは絶対に推しをお迎えしてやると、お互いの顔を見て深く頷いた。
そして、俺たちは
推しの等身大パネルと写真撮ったり、
グッズを物色したりして
ツミスナのPOPアップショップを
大いに堪能した。
『くぁーーーー!ジャーキーくんのあの胸筋たまらんかったー!あー!埋もれたい!俺はあのエチエチインナーになってあの胸筋を守りたい!』
「オレオ様のあの腰も最高でした。ええ。」
『俺、ツミスナの世界に行ったらジャーキーくんと結婚していつまでも幸せに暮らす。』
そういうとまりちゃんは悟った顔で、
「そうね。今世はあきらめて来世がんばろ。」
『ええ…今世はあきらめて来……』
そういつものように答えようと思った時、
俺の頭の中に、あの日の夜の柴山くんが浮かんだ。
《あなたのことが、好きです。
はじめてあった時から。》
俺は言葉を詰まらせてしまった。
いつもの返しがないことに、
あれ?っと思ったまりちゃんが俺の顔を見る。
まりちゃんは俺の顔が赤く染まっていることに気づきこれは何かあったと察する。
「ゆーいちくんさ…」
『…ん…な、なに?』
「何かあった?」
ドキィッ!!!!
『え?!え?!え!!何かってなに?』
俺は分かりやすく取り乱してしまった。
「ちょっと~絶対に何かあったじゃ~ん!」
『………ありました…。』
その言葉を聞くと一瞬まりちゃんはパァッと笑顔になったかと思ったら、目を細め悪い代官のような顔になる。
「ゆーいちさん、いってぇ何があったんです?話聞きまっせ?」
確かに...自分の中でグルグル考えてるより
まりちゃんに聞いてもらって客観的に率直な意見もらった方が、少しは気持ち整理できるかも…。そう思った俺は、
『聞いてもらっても…いい…?』
と、まりちゃんのお言葉に甘えさせていただくことにした。
するとまりちゃんは、俺の肩をポンッと叩き
『とりあえず、池袋行く?』
と俺たちの庭(良く遊ぶ場所)へと誘った。
俺は池袋へ向かう道中、ここ最近起きたことを全てまりちゃんに話した。…さすがにキスしたことは話せなかったけど…。
「え、なにもうそれ!好きじゃん!」
まりちゃんが語気を強める。
『だからそうなんだってぇ…』
「いや、ゆーいちくんもだけど、柴山くんが!!!ゆーいちくんのことめっちゃ好きじゃんっ!!!って!」
『…多分、そうなんだと思う…』
「た~ぶん~~~~~~?!」
ハァーこの子はまた何言ってんの?と言わんばかりの呆れた表情で俺を凝視してくる。
『俺…自信ないんだよ…なんで…あんなにも素敵な人が…俺なんかを好きになるんだろう…って…。』
まりちゃんは、まったくこの子は~~~!と言わんがばかりの表情で握り拳を振り上げていたが、俺の表情を見て真剣に言ってるということが分かると拳を下ろし
一度…ふぅっとため息をつくと。
「とりあえず続きは《おたゲン》で聞くわ!」
《おたゲン》こと、
《おったまゲンキー!》は、
俺とまりちゃん通いつけの池袋にあるハンバーグ屋さんだ。
池袋にヲタ活したら絶対にここでハンバーグとてんこ盛りポテトを食べるというのが、俺らの中でルーティン化していた。
『…うん。よろしくお願いします。』
「だーから!その前にヲタ活して英気を養お!」
『そだね!』
「じゃあいつものルートでよろしいでしょうか?ゆーいちさん。」
『ええ、まりなさん。いつものルートで行きましょう。』
そして俺たちはいつものルートこと、
オタ活セルフツアーを始めた。
まず初手で行くところといえば、ココ!
初手にして真っ先に散財する黄金郷!
その名も【アニメルト本店】!!!!!
名前の通り滞在時間に比例してお金が溶けます。みなさんも行かれる際はくれぐれもご注意ください。お金を溶かせば溶かすほど多幸感に包まれますよ。
俺たちは階段を上り5階の少年漫画原作アニメグッズが豊富なエリアから物色を始める。
俺が真っ先に向かうコーナー、
言わずもがな一番大好きな少年漫画作品!
【君のヒーローハイスクール】ことヒロスクのコーナーだ!
『ええっと…たしか、この前でたアクスタがあるはずなのだが……』
俺は推しのアクスタを棚の端から指差しで空気をなぞりながら探す。
『あ、あった!ひゃー!バンダナオフまじでありがてぇー!』
俺が手に取ったのは推しの
【壁二耳有障子二目有カベニミミアリショウジニメアリ】くんのアクリルスタンド。
主人公の同級生の大きな身体が特徴的な心が優しい男の子。登場時からバンダナで顔を隠していたが、物語終盤でそのバンダナを外した為、バンダナオフのグッズはかなり希少なのだ!
『とりあえず…3つ買うでしょ…あ、でもフェア特典増やすなら後なんか1個…缶バッジ…だとギリ足りないか…』
俺がブツブツ言ってる横で、まりちゃんも推しの《初期度気ショキドキ》くんのグッズを物色していた。まりちゃんはブラインドギャンブラーなので、オープンパッケージ(ランダムでは無い商品)ではなく、ブラインド商品の缶バッジやチェキ風カードをどれにするか選んでいた。
そんなこんなで、俺とまりちゃんはそれぞれのヒロスクの推しを物色し終えると階段を下り、遂にあの広大なBLコーナーへと降り立ったのであった。
一面に広がる数多のBL作品…理想郷はここにあった。
俺はまず先週発売の推し作品の新刊を探しはじめる…が秒で見つけて手に取る。
すると周りにいた他の腐女子の皆さまが驚いた反応を見せる。
どうやら俺は彼女の付き合いでついてきてくれた彼氏だと思われていたみたいだ。
だが残念だが、外れだ。
俺はドヤ顔で推し作品を眺める。
そしてニヤける。
『…ふ…副キャプゥ……ありがとう…商業化ありがとうございます…イカスミのそうめん先生………くっ…』
俺は人目を気にせず目頭を押さえた。
するとまりちゃんが横から
「あれ?腐男子達のバスケ腐!ゆーいちくん買ってなかった?」
『もちろん買ってますとも、6冊。』
「6冊!?!なんで?!」
『そりゃ、各販売店の特典揃えたいっていうのもあるが、冷静に考えて?一番好きなBL作品がやっと商業化されて紙書籍化したわけだよ?何冊でも欲しくない?買えば買うほど幸せになれるってすごくない?』
俺の狂気じみた発言と目にまりちゃんは…
「確かに!」
と両手の人差し指をこちらに向ける。
俺もそれに応える。
お目当てを手に入れた俺は、次に好みの絵柄の作品を表紙選びで探す。
『まずは定番のワンコ攻め?いやあえて逆張りの誘い受け~♪』
俺は推しのVTuberが歌っている神曲を口ずさむ。
『あ、これ!絵柄むっちゃ好きかも!』
俺が手に取ったのは、
【純粋柴犬系警察は、妄想男子に愛されたい。】
どうやら歳下警察官攻め×平凡妄想男子受け作品らしい。
非常に良い設定じゃないか。
それにこの攻めくん。なんか柴山くんに雰囲気似てるなぁ…
俺はまたもや、昨日の出来事を思い出す。
《俺、いつまでも待ってますから…》
………………。
俺は無言でその本をもう一冊手に取りレジへと向かった。
「いやー買っちまいましたねゆーいちさん。」
『そうね…さよなら俺の諭吉。でもしょうがないのよ、保険適用外の医療費だからこれ。心の治療費だからね。仕方ないのよ。』
「それなー!」
『とりあえず、おたゲンいこうか。』
そして俺たちは、おたゲンこと
《おったまゲンキー!》に入ると奥の席に案内され腰かけた。
俺はオーダータブレットに入力をはじめる。
『2人。…っと…。俺いつものにしーよおっ!』
「あたしもー!」
『うい!』
注文を終えるとまりちゃんが真剣な顔になる。
「ゆーいちくん…じゃあ、始めますか…」
「…よろしくお願いします。」
そう言って俺たちは、
鞄の中から今日の戦利品のブラインド商品達を出した。
『開封だぁ~!!!!!!』
俺たちは缶バッジから順番に開封をはじめる。
「…ゆーいちくんはさ、本当はどうしたいって思ってるの?」
手で開封作業を続けながらまりちゃんが話を切り出してくれた。
『…付き合いたい…。』
「でしょ~!?本当は付き合いたいのになんでそんなに悩んじゃうの~。」
『だって向こう23歳だよ?』
まりちゃんが固まる。
「た…たしかに…で…でもさ向こうが好きって言ってくれてるんだからさ…年齢なんて関係なくない?」
明らかに動揺した口振りでまりちゃんが答える。
『…でもやっぱり気にしちゃうよ…それに…まだ知り合って大体2ヶ月くらいだよ?…2ヶ月でこんな俺のどこを好きになれるのさ………俺、柴山くんの前だと今みたいな素の状態全然出せてないし…なんなら、少しでもかわいいって思われたいから……多少、いやかなり猫被ってると思うし……柴山くんは、俺が意図的に作っている良い部分しか見てないから…きっと勘違いしちゃってるわけで…本当の俺がこんなんだって知ったら…絶対に嫌われるよ~…。』
俺はテーブルに両腕を置いて顔を埋める。
「うーん…それはどうかな?」
『え?』
俺はまりちゃんの言葉に顔を上げた。
「ゆーいちくんってさ自分が思ってるよりもずっと素直で良い子だし、良いも悪いも感情すぐ表に出ちゃうから、猫被ってるようにみせてても案外そのままだよ?」
『………まじ?』
「まじ。」
まじかぁぁぁぁぁあ…俺隠せてなかったんかぁ…。
「でもあたしは、そんなゆーいちくんだから好きだし、仲良くしたいって思ってるよ!」
『まりちゃ…優しみの権化…一生ともだち…いつもありがと…』
俺は目からキラキラビームをまりちゃんに送る。
「良いものは良い!気に入らないことは不貞腐れる!そんな素直で自分の気持ちにいつも真っ直ぐなゆーいちくんがなんでいま素直になれないの?」
『ぐぅの音も出ません…』
「難しく考えすぎないでさ、分からないなら…」
まりちゃんは手に未開封のブラインド缶バッジを手に取る。
「こうやって手にとって、確認しちゃえばいいんだよ!」
まりちゃんがそのブラインド缶バッジを開封すると中から出てきたのは、
ジャーキーの缶バッジだった。
「ね!とりあえずでも開けてみないと何が入ってるなんてわからないじゃん!開けるドキドキもせっかくだから楽しもうよ!」
『…まりちゃん……
…ごめん今一ピンと来ないわ!』
「こないんかーい!」
店員「おまたせしましたー!バーグバーグステーキでお待ちのお客様~」
『はーい!』
まりちゃんの言ってたこと…あまりよくわかんなかったけど…思いは伝わってきた。
自分の気持ちに、
もっとシンプルに…もっと素直になっていいって、きっとそういうことだよね。
また傷つくのは、確かに怖い。
《でもまた傷つくのかどうかなんて分からない。》
なんで俺のことを好きになったかなんて、
俺がいくら考えても分かるわけがない。
《だったら聞いてみよう。》
柴山くんにはもっと良い人がいる、
俺なんかじゃもったいない。
《いや、俺ほど柴山くんのこと大切に思える人、他には絶対にいない!》
…なんだ。
素直になったら。こんなにあっさりじゃん。
俺は自分の鞄からまだ開けていないブラインド缶バッジの最後の一つを開ける。
『まりちゃ…』
「うん?」
『オレオ出た!』
俺は笑顔でオレオの缶バッジをまりちゃんに見せた!
『ジャーキーと交換して~!』
「もちろん!」
そして俺たちは《ジャーキー》と《オレオ》の缶バッジを交換した。
『あ!…この度はご交換いただき誠にありがとうございました。』
「また機会がございましたら、よろしくお願い致します。……ブフッ…」
『プフッ…』
俺たちは腹を抱えて笑った。
ありがとう、まりちゃん!
俺、柴山くんの気持ちに応えようと思う。
ブブッ
テーブルの上に置いていた俺のスマホのバイブレーションが鳴り、画面にはメッセージアプリのポップアップが表示されている。
『ん?誰だろ?』
スマホのロックを解除し
メッセージアプリを開く。
柴山 [ 佑一さん、今夜会えませんか? ]
しししししし柴山くん!?!?!?!
今夜会えますかって…
…え…え…え…
俺…俺…どうなっちゃうの~~~~~~!!!
第10話 「とりあえず、池袋行く?」
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