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第16話「答え合わせ」

第16話は、 柴山くん視点でお話が進みます。 その為、主軸『』←は柴山くんになります。 また、過去改装で ひらがなの部分が登場しますが、 その部分だけは、 幼少期の柴山くんの当時の心と思いを表現しています。 それは、俺がまだ4歳の頃。 内気で人と話すことが苦手だった俺は、 幼稚園でもずっとひとりぼっちだった。 別に話すことが嫌いだったわけではない。 家族や祖父母とは普通に話すことが出来る。 でも友人や先生など、 いわゆる他人と話す時は何故だか 言葉が出てこなくなってしまうのだ。 最初はみんな話しかけてくれた。 でも、俺がいつも言葉に詰まってしまうもんだから、 いつしか俺に話しかけてくる人は 誰もいなくなった。 もう、どこかに行きたい。 どこかにいけばきっと… どこかにきっと… 俺を見つけてくれる人がいるはずだから。 そんな時だった。 両親は俺に、進級前の春休み期間を使って 横浜にいる父方の祖父母の家に旅行に行かないかと提案してきた。 俺はどこか遠くにいけるのであれば どこでも良いと思い 二つ返事で『いく』と答えた。 第16話「答え合わせ」 祖母「健ちゃん、健ちゃーん!」 居間からおばあちゃんの声が聞こえる。 『なぁにー?』 祖母「健ちゃん!いまからじぃちゃんとロックのお散歩行ってきて貰えるかしら。」 『わかったー!おじぃちゃん。おばぁちゃんがロックのおさんぽいってきてってー!』 祖父「おうおう!じゃあ行こうか!」 『うん!』 俺は靴を履いて、リード紐を手に取り お庭のロックの犬小屋へと走り出す。 『ロックー!おさんぽ!』 おさんぽというワードを聞いて、 柴犬のロックは大興奮でその場で身体をブンブン振り回す。 俺はロックの身体をポンポンしていると おじいちゃんがやってくる。 祖父「はいはいはいはい。行こうね。」 おじいちゃんは俺からリード紐を受け取るとロックの首輪に繋ぐ。 いざ、お散歩へ。 川沿いを歩いて大きな公園を目指す。 祖父「健ちゃん!幼稚園は楽しいか?」 『………………。』 祖父「楽しくないのか?」 俺は静かにコクリと頷く。 祖父「そうか。じゃあ何か好きなものはあるか?」 『…すきなもの?』 祖父「ああ。なんでもいい。健ちゃんの好きなものがじぃちゃん知りたいな。」 『うーん。ロック。』 俺はロックを指差して言う。 ロックは、ん?なんだなんだ?と 俺の指をペロペロしてくる。 俺は自然と笑顔になる。 祖父「そうかそうか。じいちゃんもロック大好きだ。…ロック以外には何が好きなんだ?」 『うーん…ない。』 おじいちゃんは俺のまさかの回答に転びそうになる。 祖父「ないのか。そうか…。」 この頃の俺は周りの人や物に対する興味が人一倍少なかった。 祖父「でもいつかきっと、お前にも夢中になれる大好きなものが見つかるはずだ。」 おじいちゃんは俺の頭を撫でる。 そんなものできるかな?と この時の俺は思っていた。 でも、この後すぐに 俺は夢中になる大好きな人に 出会うことになる。 翌日、俺は家の中で遊ぶことに飽きて ロックの散歩で行った大きな公園に行っていいかと親に訪ねる。 祖父母の家の大掃除で手が離せない両親や祖父母は付き添うことが出来ないから今日は難しい。と最初は公園に一人で行くことを許して貰えなかったが、 おじいちゃんが 「公園まではそこまで距離がないから大丈夫じゃないか?」と両親を説得してくれた。 遅くならないことと、川に入らないことを条件に両親は一人で公園に行くことを許可してくれた。 俺は、一人で公園を目指して 昨日ロックと歩いた道を辿る。 見えた!公園だ! 初めて遊ぶ遊具。 見たことがない草や花に虫。 俺は時間が過ぎるのを忘れて、 公園で遊びつくした。 そして、いざ帰ろうとした時 気づいてしまった。 帰り道が分からないことに。 来た道は覚えていた。 昨日しっかり顔をあげて歩いていたから。 でも帰り道は、ほとんど地面とロックを見て帰っていたから、景色が全く分からなかった。 俺はとてつもない不安と孤独感に襲われた。 どうしよう…このまま帰れなくて ずっとひとりぼっちだったら。 俺の顔から大粒の涙があふれ出す。 両手でズボンを握りしめて堪えようとするが どんどんどんどん不安が押し寄せてくる。 だれか… だれでもいいから… ぼくをみつけて… 「どうしたー?大丈夫かー?」 優しい声が聞こえた。 涙で歪んだ視界に、一人のお兄さんが映る。 お兄さんは足を少し曲げ 俺と目を合わせてくれた。 『…グス…………グスッ……』 声が出てこない。 だから俺は首を横に振った。 だいじょうぶじゃない。 たすけてって。思いを込めて。 すると、お兄さんの温かな手が 俺の頭を優しく撫でる。 お兄さん 「一人で怖かったよなー!頑張ったなー!」 お兄さんの優しくて温かな声に 俺の中の不安はいつの間にか無くなっていた。 俺はゆっくりと顔を上げてお兄さんを見た。 目があった。 するとお兄さんは、 かわいい笑顔で お兄さん「もう、大丈夫だよ。」 って言って俺を安心させてくれた。 お兄さん「一人で来たの?」 言葉が出てこない俺は、 無言でコクリと頷く。 お兄さん「お家どっちか分かる?」 俺は首を横に振った。 ぼくこのままおうちにかえれないのかな…? 再び襲う不安な気持ち。 俺の顔からまた大粒の涙が溢れ出す。 するとそんな俺を見たお兄さんはバタバタと慌てはじめる。 お兄さん 「あぁ~!ごめんごめん!泣かないで~!ど、ど、どどうしよ!」 お兄さんは持っていた鞄を漁りはじめる。 お兄さん「あ!これ!」 お兄さんの鞄から、小さな柴犬のマスコットが出てきた。 あ、ロック。 柴犬のマスコットが俺の目の前までやってくる。 『こんにちは!オイラ、豆太郎!よろしくワンッ!』 しゃべった!!! ロックじゃなかった! まめたろうっていうんだ! 豆太郎「きみの名前を教えてくれるかな?」 なまえ…なまえいわなきゃ! 『…けんた…』 豆太郎「けんたか!よろしくワン!」 よろしくね。まめたろう。 幼い俺は心の中でそう言った。 豆太郎「けんたは何歳なんだ?」 『…4さい…』 豆太郎「4歳!カッコいいワン!」 豆太郎は俺の顔を顔をツンツンしてくれた。 くすぐったい。へへっ。 すると俺の視界に豆太郎の後ろで 優しく微笑むお兄さんの顔が映る。 はじめての感覚だった。 お兄さんのその顔を見た瞬間。 身体がふわっとする感覚がした。 顔が熱くなり、 心臓がドキドキして 言葉がまたでてこなくなる。 今なら分かる。 これが、一目惚れというやつだろう。 俺があまりにもジーッと顔を見つめていると、またお兄さんと目があった。 お兄さん 「ん?どした?」 俺は恥ずかしくなってしまい 服の裾を握りしめて顔を下に反らしてしまった。 俺が俯いていると、 再び豆太郎が声をかけてくれた。 豆太郎「けんたくん!けんたくん!オイラたちと一緒に交番に行くワン!」 こーばん?こーばんって?なんだろう? 『…こーばん…?…』 すると、豆太郎の後ろから今度はお兄さんが話しかけてくれた。 お兄さん「交番っていうのは、お巡りさんがいるところだよ?」 『おまわりさん?』 おまわりさんてだれ? おおきいひと?こわいひと?わかんない…わかんないからこわい… 『こわい……おまわりさんこわい…』 と俺は小さな声で呟いた。 お兄さん「え?!おまわりさん怖いの?!」 おにいさんはこわがってない じゃあこわくないの? わかんない… 『……わかんない…』 お兄さんは少し黙り込んでしまったと思ったら、 俺の手を握ってくれた。 ドキッ お兄さんと目が合う。 ドキドキドキドキドキドキドキドキ しんぞうがずっとドキドキいってる。 お兄さん 「おまわりさんって   めっちゃ格好良いんだよな~!」 『…!!!』 そうなの?! おまわりさんてかっこいーの!?! お兄さん「けんたくん!お巡りさんっていうのは、めちゃくちゃ格好いいヒーローのことなんだよ?」 『ヒーロー!!!』 ブソブソジャーとおんなじだ!!!!! お兄さん 「そうだよ!ヒーロー!格好いいよねー!」 『うん…かっこいい!』 おにいさんはだれがすき? ぼくはブソブラックとブソブルーがすき! って本当は言いたかったけど勇気が出なかった。 お兄さん「だからさ、お兄ちゃんと豆太郎と一緒にお巡りさんのところ行ってみない?」 お兄さんの顔が近づく。 おめめおおきい…かわいい。 また恥ずかしくなってしまい 言葉を出せなくなってしまった。 俺はお兄さんの言葉にコクリと頷く。 お兄さんは、俺の右手を優しく握ってくれると俺の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれた。 お兄さんの顔を見つめる。 その時、おじいちゃんが言ってた言葉を思い出した。 祖父《でもいつかきっと、    お前にも夢中になれる     大好きなものが見つかるはずだ。》 お兄さん「ん?どした?」 //////////// 俺は再び恥ずかしくなってしまい服の裾を掴みうつ向いてしまった。 おにいさん ぼく、おにいさんのこと すきになっちゃったみたい。 だからずっと、      《ここにいて》ね。 俺はぎゅっと手に力を込めて お兄さんの手を握った。 おにいちゃんのこともっとしりたい。 そう思った瞬間、 俺の口から自然と言葉が溢れ出した。 『…おにいちゃん…おなまえ…』 俺の小さな声もお兄さんは聞き逃さなかった。 お兄さん「ん?あぁ!そっかまだ言ってなかったか、ごめんごめん!」 お兄さんはそう言うと1度立ち止まって 俺に目線を合わせてくれた。 お兄さん 「俺の名前は、寺川 佑一!よろしくね!」 『て…らか?』 お兄さん「ああ!呼びずらいよね!ええと!ゆーいち!ゆーいちくんって呼んでくれたら嬉しいな!」 『ゆーいちくん?』 佑一「そ!ゆーいちくん!改めてよろしくね!けんたくん!」 佑一さんは繋いだ手を ブンブン振って喜んでくれている。 それがなんだかすごく嬉しかった。 『うん…』 そっか、おにいさん ゆーいちくんっていうんだ…ふふっ ゆーいちくん!ゆーいちくん!ゆーいちくん! 「じゃ、行こっか!」 そうだった。こーばんにいくんだった。 ………ゆーいちくんはおまわりさんのことすきなのかな…。 『…ゆーいちくんは…』 佑一「ん?」 きかなきゃ、きかなきゃ! 俺は身体を震わせながらも、 佑一さんの目を見て聞いてみる。 『ゆーいちくんは…おまわりさん…すき?』 佑一「うん!大好き!」 ガーーーーーーン。 『そっか…』 そっか…ゆーいちくん…おまわりさんのことすきなんだ…けんちゃんいまおまわりさんじゃないから、すきになってもらえない…。 俺が勝手に落ち込んでいると、 佑一さんは俺の手に豆太郎を手渡してくれた。 佑一「豆太郎がけんたくんと一緒に居たいんだって!」 『そうなの?』 佑一「うん!ほら豆太郎もそう言ってる!」 豆太郎「けんた!オイラ!けんたと一緒に居たいワン!」 俺の目に豆太郎の後ろで話す佑一さんが見えた。 そっか!まめたろうはゆーいちくんだったんだ! 『ありがとう…』 うれしい…うれしい! 俺は優しくぎゅっと豆太郎を抱きしめた。 佑一「大切にしてあげてね。」 『うん。たいせつにする。』 ずっとずっとたいせつにするね。 佑一さんと沢山お話してたら、 いつの間にか交番に着いていた。 佑一「すみませーん、公園で迷子になってる子を見つけて!」 お巡りさん「ほんとですか!あー!ありがとうございます!」 あれが、おまわりさん… ブソブラックとおんなじふくきてる…。 佑一「いえいえ。」 お巡りさんはしゃがみこんで声をかけてきた。 お巡りさん「こんにちは!」 まけない!!!! 『こ、こんにちは!』 ゆーいちくんにかっこいーとこみせるんだ! 『おとーさんとおかーさんと、あきたからおじーちゃんちきてて』 お巡りさん「なるほどなるほど!」 俺はお巡りさんに負けたくない一心で 話続けた。 ひと通りお話が終わると お巡りさんが 「あとは、こっちで引き受けますので。もう大丈夫ですよ。」と言う。 佑一「ありがとうございます。よろしくお願いします。」 え…………。 やだ………。 俺は佑一さんの手を強く握った。 『やだ…』 佑一「え?」 『ゆーいちくん…いっちゃったらやだ…』 俺の目からまたポロポロと大粒の涙が流れ出す。 やだ、いっちゃやだ ぼくまだ…ゆーいちくんといっしょにいたい ずっとゆーいちくんといっしょがいい… おねがいゆーいちくん… 『けんたのとなりにいて。』 佑一「………あの!」 え… お巡りさん「???どうしました?」 佑一「けんたくんの親御さんが迎えにくるまで、俺も一緒に待っていちゃだめですか?」 いいの…? お巡りさん「それは全然かまわないけど、時間とか大丈夫?」 佑一「はい!母に連絡いれておくので!」 まだここにいてくれるの…? お巡りさん「わかりました。」 そう言ったお巡りさんは佑一さんに向かって敬礼をした。 お巡りさん「ご協力感謝します。」 ゆーいちさんも「いえいえ」と敬礼を返していた。 けんたもする!!!まけない!!!! 俺はお巡りさんに対抗意識を持ちながら敬礼の真似事をした。 そして… ついにお別れの時間が近づいてきてしまった。 けんた母「けんたーーーー!!    あー!けんた!けんたー!」 けんた父「けんた!無事で良かった!」 父と母が泣きながら俺を抱きしめた。 おとーさん!おかーさん! ぼくおまわりさんになってゆーいちくんとけっこんする! と心で俺は両親に伝えた。 すると母が俺の手に握られた豆太郎に気がつく。 けんた母「あら、それ…」 『まめたろう!』 けんた母「まめたろう?」 すると佑一さんが少しワタワタしながら答えてくれた。 佑一「ああ!すみません!それ今日僕が家庭科で作ったマスコットなんですが、けんたくんにプレゼントしてしまって…ご迷惑でしたかね?」 すると母は立ち上がり、 首を横に振ると深く頭をさげた。 けんた母「いいえ…いいえ、本当にありがとうございます。」 同時に父も頭を下げた。 けんた父「けんたのこと助けてくださり本当にありがとうございました!」 佑一「そんなそんな!頭あげてください!当たり前のことしただけですから!」 両親は頭をあげるとお互いの顔をみて優しい笑みを浮かべる。 けんた母「あの何かお礼を」 佑一「いやいやいや!本当に大丈夫ですから!気になさらないでください!それに…」 佑一さんと目が合う。 俺はうれしくてニッと笑う。 そしたら佑一さんもニッと笑い返してくれた。 佑一「…俺も…けんたくんといろいろお話できて…楽しかったですから!」 そしていよいよ、お別れの時。 佑一「けんたくん。今日はありがとうね。」 『………………』 やだ、まだいっしょにいたい。 いかないで。 そう思いながらも言葉に出せなかった俺は 無言で佑一さんにしがみついた。 佑一「けんたくん?」 『…グスッ…グスッ…』 佑一「けーんたくん!」 俺はゆっくり顔をあげる。 佑一「また絶対会えるから!」 佑一さんは俺の頭をポンポンと撫でてくれた。 『…ほんと?』 佑一「うん!ほんと!」 『ほんとのほんと?』 佑一「ほんとのほんとだよ。」 佑一さんは俺の身体をもう一度ぎゅっと抱きしめてくれると。俺から離れ立ち上がった。 佑一「じゃあ、またね」 佑一さんは手をグーの形にして 俺に差し出してくれた。 俺はどうしたらいいか分からず その手をぎゅっと両手で握った。 佑一さんは両親とお巡りさんに頭を下げると、歩き始めてしまった。 いわなきゃ… いわなきゃ… いわなきゃ!!!!!! 『ぼく!!!おおきくなったら    おにいちゃんとけっこんする!!!』 だから、まってて! ぼくおまわりさんになってくるから! 佑一「そっかぁ~俺、予約されちゃったか~!」 よやく?ってなに? そう言うと佑一さんは駆け寄ってきてくれた。 しゃがんでくれてまた俺と目が合う。 『よやく?』 佑一 「そう、よやく!」 佑一さんは予約の意味を俺に伝えることなく、もう一度俺の頭を撫でると「またね!」と言って帰路についてしまった。 俺は佑一さんが見えなくなるまで その姿を見送った。 翌日両親は、 やはり佑一さんにお礼がしたいということで お巡りさんに菓子折りを持っていきがてら 事情を説明し、 お巡りさんは佑一さんが俺を保護したときに書いた書類を確認してその電話番号に電話をかける。 佑一さんのお母さまからご自宅の場所を教えて良いと許諾を得たので、 佑一さんのお家へと伺うことになった。 『おかーさん!けんちゃんかっこいい?』 俺は母に格好良い服を選んでもらっていた。 けんた母「かっこいいよ~!」 俺はフンッと鼻息を出す。 会えたら何を話そう。 何を聞こう。 ちゃんと話せるかな? すきになってもらえるかな? そんな思いを胸に俺は 豆太郎を抱きしめて、 両親と共に佑一さんの家に向かった。 ピンポーン 両親がチャイムを鳴らす。 はーい! と家の中から女性の声が聞こえてくる。 ガチャ 佑一母「こんにちはー!お巡りさんからお話は聞いてます!」 けんた母「先日は、息子さんに大変お世話になりまして。本当にありがとうございました。」 佑一母「そんなそんな!ご丁寧にありがとうございます。お子さんが無事で良かったです!」 佑一さんみたいに明るいお母さんだ。 けんた母「本当にありがとうございます。それで、今日息子さんは?」 佑一母「あ、ごめんなさい!いつもならもう帰ってるはずなんだけど、まだ帰ってきてなくて。せっかく来てくださったのにごめんなさい。」 けんた母「そうでしたか。けんちゃん、ゆーいちくんまだお家帰ってきてないんだって。」 俺は佑一さんに会えると思っていたので、 ショックで静かに泣き出してしまった。 佑一母「あららら、ごめんねー!そんなに会いたかったのね!もうちょっとしたら帰ってくると思うから、うちで待ってる?」 けんた母「お気遣いいただきありがとうございます。けんちゃんどうする?待たせてもらう。」 俺は首を振る。 一度泣いてしまって急に弱気になってしまったのだ。 けんた母「ほんとにいいの?」 俺は頷いた。 けんた母「せっかくお気遣いいただいたのにすみません。…実はこの子本気でゆーいちくんのこと好きになっちゃったみたいで。」 佑一母「えー!そうなんですか!あらあらあら!うちのこでよければ!」 案外ノリが良いお母様だった。 きっと本気だと思われていなかったのだろう。 でもこの時の俺は… …いや出会った時からずっと本気だった。 『よやく…したの…。』 佑一母「予約?」 『うん…よやく!』 けんた母「実は…かくかくしかじかで。」 佑一母「うちの子も中々隅に置けないわね。…健太くん!佑一のことよろしくね!」 『うん!!!』 佑一母「やっぱり今日会ってく?」 『はずかしいからいい』 佑一母「恥ずかしいかー!じゃあ恥ずかしくなくなった時にでも、またおいで!」 『いいの?!』 佑一母「もちろん!」 『ありがとう。』 俺は満面の笑みで答えた。 そしてその年から、 俺は毎年この季節になると 祖父母の家に来ることが恒例となった。 父母の仕事の都合もあり翌年からは 祖父母の家に来れるのは2泊3日となってしまい、 佑一さんに会いに行ける時間は中日の1日だった。 だが、しかし その後俺は一度も佑一さんに会うことは 出来なかった。 というのも… 翌年、俺が5歳の頃。 俺は道端に咲いていた タンポポの花を摘み 佑一さんにプレゼントしようと 佑一さんの家に両親と向かった。 両親には、自分一人で行きたいからと 佑一さんの家の前まで着いてきてもらったら離れたところで待っててもらった。 俺は背伸びをしてチャイムを鳴らす。 ピンポーン。 はーい! 佑一さんのお母様の声が聞こえる。 ガチャ。 佑一母「どちらさま…あら?…えーっと?」 『しばやまけんた!5さいです!』 佑一母「しばやまけんた…くん…ああ!去年の!健太くん?あら~一年で大分お兄ちゃんになっちゃって!今日お父さんとお母さんは?」 『あっちでまってます!』 佑一母「そうなのね!あっ!佑一ね、今日も受験勉強で塾に行っちゃってて今居ないんだごめんねー。」 ゆーいちくんいないのか… でも!だいじょーぶ!だってぼく ゆーいちくん《よやく》してるから! 俺はこの時すでに両親に予約の意味を聞いていた。 『だいじょーぶです!これゆーいちくんに!』 俺は摘んできたタンポポを差し出す。 佑一母「え!これを佑一に!わー!絶対喜ぶよ!ありがとうね健太くん!」 『へへっ!』 佑一母「健太くんからって伝えとくね!」 『言わないで!』 佑一母「え?言わなくていいの?」 『けんた、まだおまわりさんじゃないから、いわないで!』 佑一母「え?うん、わかった。じゃあ内緒にしとくね。」 『うん!』 佑一母「…あ!そうだ!健太くん!ちょっと待っててね!」 そういうと佑一さんのお母様は お家の中へ一度入ると バタバタと何かを持って戻ってきた。 佑一母「せっかく来てくれたから、これどうぞ!」 佑一さんのお母様が持ってきてくれたのは、 お菓子が沢山入った袋と、一枚の写真。 俺はお菓子の袋よりも、その写真に大興奮してしまった。 佑一母「佑一には内緒ね。」 その写真は、佑一さんがぬいぐるみを作っている姿が写っている写真だった。 うれしい!ゆーいちくんが映ってる! 『おばちゃん!ありがとう!』 佑一母「どういたしまして!また来てね健太くん!」 『うん!』 そして、またその翌年 俺は小学生になり、佑一さんは高校生になっていた。 その年からは佑一さんは部活やアルバイトやらで、俺が行く時間には家におらず。 会うことは出来なかった。 でも俺は毎年、佑一さんのお母様に 佑一さんに渡してくれと タンポポの花を贈り届けていた。 そしてその都度お母様は 佑一さんの最新写真をこっそりプレゼントしてくれた。 佑一さんの姿がどんどん大人になっていくのを俺は写真でしか見ることが出来なかった。 だが、そんな日々も ある日突然終わりを迎えた。 俺が小学4年生の頃。 ピンポーン。 俺は毎年恒例のタンポポを持って 佑一さんの家のチャイムを鳴らした。 ガチャ。 何の返事もなく扉を開ける。 『こんにち…は…』 中から出てきたのは、知らない女性。 女性「えっと…なにか?」 『あ、あの、ゆういちさんは?』 女性「ゆういちさん?…そんな人うちには居ないけど…」 俺はすぐに家の番号を確認する。 101号室。 間違えてない。絶対ここだ。でもどうして? 女性は少し考え込むと、 「あぁーもしかして、ここに前住んでた人かな?あたしここ今年越してきたからさ。」 『?????』 女性「あぁ、えーっと。お引っ越し!お引っ越ししちゃったと思うの、その、えーっと、ゆーさくくん?」 俺は手に持っていたタンポポを床に落とした。 そして、お姉さんに何も言わず。 走り去ってしまった。 目から溢れ出す涙が止まらない。 俺の初恋は何の前触れもなく          終わってしまった。 そう、思っていた。 あの日、またあなたに再会するまでは。 小・中学・高校・大学と俺は佑一さんのことが忘れられず。 もう会えるかも分からないのに片思いを続けていた。 佑一さんに相応しい男になるために、 自分なりに変わる努力をはじめた。 物怖じせず話せるようにもなり、 自然と友達も増えていった。 中学になるとバスケ部に入り 成長期も重なると身長もグングン伸びはじめ。 中学、高校、大学と 色々な人から言い寄られるようになってしまったが 俺は佑一さん一筋だった為、 全てお断りさせていただいていた。 そして、佑一さんが昔好きと言っていた お巡りさんになるために 俺は警察学校に入学し、無事卒業。 配属は、希望通りの 神奈川県警の横浜市になった。 もしかしたら、また、 佑一さんに何処かで会えるかもしれない… そんな非現実的な淡い期待を持って 神奈川県警を選んだ。 映画やドラマの世界じゃないし そんな都合の良い運命的な再会なんて あるはずないのに… 勤務初日の朝、 俺は配属先に決まった 《横浜市犬善区鼓汰町の交番》へと電車で向かうため 駅で電車の到着を待っていた。 そんなときだった。 うえええええええん! 向かいのホームから 子供の泣き声が聞こえる。 俺はすぐにその泣き声の方を向いた。 そしたら… 「大丈夫?」と泣いている子に しゃがんで目線を合わせながら声をかけてる人がいた。 ふわっと風が吹いた。 俺の心臓が激しく動きはじめる。 あの優しい笑顔は…間違いない… 泣いている少年に話しかけていたのは 俺が長年片思いをしていた相手。 本物の佑一さんだった。 やっと…やっと見つけた! 俺はあふれ出しそうになる涙を堪えて、 すぐに向かいのホームへと向かった。 プルルルルルル [ドアが閉まります。駆け込み乗車はおやめください。] だが、向かいのホームへとたどり着く頃には 佑一さんの姿はなかった。 だが、さっきまで泣いていたこどもとすれ違った。 こどもはお母さんと手をつないでいた為、 あの後すぐに会えたのだろう。良かった。 俺は、恥も承知で親子のお母さんに話しかけた。 『あの…いきなりすみません!』 お母さん「は、はい…?なにか?」 『さっき…この子と一緒に行った男性ってどこに行かれましたか?』 お母さん「あぁ!あのお兄さんなら電車に乗っちゃいましたよ。」 『そうでしたか………。ありがとうございます。   いきなり失礼しました。』 俺は親子に頭を下げ、その場を離れると 盛大に落ち込んでしまった。 …やっと…やっと会えたのに… …ん? 俺の視界に腕時計の時間が映る。 ……………やべぇ!!!!遅れる!!!!! 俺は、急いで電車へと乗り込んだ。 そしてこの後すぐに 俺は、   運命というものは存在するんだと知る。 数日後、 俺は先輩の熊子守さんに親睦会という名の飲み会に誘われ、とある商業施設に来ていた。 熊子守「いいか!柴!男ってぇのは…」 酔っ払った熊子守さんが真の男について語りはじめたそんな矢先、 熊子守さんが手に持っていたビールをぶちまける。 『あああ!大丈夫ですか?!』 俺と同僚は手分けしてぶちまけられたビールを拭き、熊子守さんのシャツも拭く。 『このままだと風邪引いちゃいますよね…おれ、その辺で着替え買ってきます!』 熊子守「おお!柴っ!おめぇ気が利くなぁ、これで頼むわ~ヒック…」 熊子守さんは酔いながらも 1万円札を俺に手渡す。 『じゃあ、ちょっと行ってくるので。皆さん熊子守さんをよろしくお願いします。』 同僚たち「「「はーい!」」」 俺はスマートフォンを使って近くにシャツが売っているところを調べる。 『お、隣の建物にあるな。よし、ここにしよう。』 俺はエスカレーターを上がり、隣の建物へと向かった。 お、あの店だな。 『すみません、あの…シャツが欲しいんですけ…ど…』 うそだろ… 「いらっしゃいませ~!」 え…ほんとに… 「こんばんは~!どの様なシャツをお探しですか?」 そんなことあっていいのか? 佑一「あの?お客様?」 身体中の体温が沸騰する感じがした。 『え!?あ!その!普通の白いシャツで!』 これを運命と言わず 何を運命と言うのだろうか 佑一「白シャツですね!ご案内します!」 変わらない優しい笑顔。 温かな声色。 やっと… やっと…見つけられた…あなたを。 そして、現在。 《シバテリア城》前。 『その日から俺は、佑一さんのお店に通うようになったんです。あなたのことを振り向かせたくて。』 佑一「…うそ、そんなことって…」 『うそじゃないです。  俺あなたに振り向いてほしくて…      あなたのことを護りたくて、       警察官になりました。』 佑一さんの瞳が潤む。 『あなたが初めて会った時に好きと言った      お巡りさんに。』 俺は佑一さんの手を強く握る。 『俺はずっと…    あなたに片思いをしていました。』 佑一さんはその場で 声を出して泣き始めてしまう。 俺はそんな佑一さんを 優しくぎゅっと抱き寄せた。 『俺の方が先に《予約》してたんですよ。』 佑一「うん…うん…」 俺は手に持っていた豆太郎で佑一さんの顔をツンツンする。 『オイラ豆太郎!佑一!泣かないで!』 佑一さんは涙を流しながらも、ふふっと笑ってくれた。 佑一「健太くん…    俺を見つけてくれて…     ずっと思っていてくれて…            ありがとう。」 その一言を聞いた瞬間、 俺の堪えていた涙も溢れ出す。 あの日、真っ暗な世界から  あなたが俺を見つけてくれたから 今度は俺が  あなたを見つけたくて… やっと見つけることができた…           やっと届いた…。 『佑一さん!!!』 俺は佑一さんの頭と身体を力一杯抱きしめる。 『大好きです!…大好きです…グスッ…』 佑一「俺も大好き!!!」 俺たちの後ろでは、 花火が打ち上がっていた。 周りの人々は花火に目を奪われていたが、 俺と佑一さんだけは、 それぞれの瞳に目を奪われていた。 俺は佑一さんの 下顎を親指と人差し指で持ち上げると、 吸い寄せられるように そのやわらかな唇に自分の唇を重ねた。 『佑一さん…』 『今日…うちに来ませんか。』 第16話「答え合わせ」 あとがき 第16話「答え合わせ」 かなり長文の16話になってしまいましたが、 お読みいただきありがとうございました! ようやく伝えられた長年の思い。 最終話まであと2話。 次回、お待ちかね?のR指定回です。 最後までお読みいただけたら嬉しいです。 よろしくお願いします。 ※R指定回は苦手な方もいられると思うので、 一応読まないでいきなり最終話に飛んでも大丈夫な流れに出来るだけしますので、苦手な方は最終話をお待ちくださいませ。よろしくお願いします。

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