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第6話
それから、光輝からは連絡が来ることはなかった。
気になって電話をかけてみたが、出ることはない。
送ったメールも、返信はなかった。
『何してんだよ、アイツ……』
日増しに苛立ちを感じていく柴田は、落ち着かない日々を過ごしていた。
そんなある日、柴田のもとに同窓会の案内状が届く。
ほろ苦い思い出もある高校の、同窓会だ。
『行ったことなかったなぁ……ちょっと行ってみるか』
そんなことを考えながら、案内状を開いてみる。
これまでは忙しかったこともあり、出席したことがなかったのだ。
これまで来たことがないのに、突然現れたら皆に不審に思われるだろうか。
でも、皆の顔を久しぶりに見たいと思った。
同窓会の開催は一か月後だという。
出席に印をつけて返信をしようかと考えたところで、ふと思い止まる。
もしかしたら、光輝の兄・陽葵も来るのではないかと思ったからだ。
陽葵は、柴田が来たらきっと気まずいだろう。
それは柴田も一緒だ。
しかし、もし相手も来たとしてもあまり関わらなければ良いかと思い直し、案内状を返信した。
同窓会の当日、柴田は会場となっている都内のホテルを訪れた。
気まぐれで参加することにしたが、楽しめるか不安もある。
まぁ、それなりに飲み食いして喋っていればいいだろうか。
ホテルの広い会場に入ると、既に多くの参加者で賑わっていた。
同窓会だから、同じ学年の人間ばかりではない。
集まった卒業生たちは皆、年齢層が多岐にわたっている。
ざっと見渡してみると、300名ほどはいるだろうか。
『凄い人数だな……』
これほどに人がいるなら、陽葵とも関わらずに済むかもしれない。
柴田は少しホッとした。
乾杯の挨拶が終わり、柴田はテーブルに並んでいた酒のグラスを手にした。
そして、一口飲んだところで声をかけられた。
「あれ、柴田か?」
その声に振り向くと、そこには男が三人立っていた。
見たことがあるような気もするが、柴田は思い出せない。
しかし、高校時代の同級生のようだ。
「俺、分かんない?広川だよ」
「……あぁ。久しぶり」
高校生当時に同じクラスだった男だった。
ということは、広川と一緒にいる二人は、いつも広川とつるんでいた多田と間山か。
「お前も来てたのか」
「あぁ。まぁな」
「これまで来なかっただろ?珍しいな」
広川たちは次々に質問してくる。
「ちょっとどんなもんかと思ったんだよ」
興味なさげに素っ気なく返事をして、柴田は酒に口を付けた。
すると、柴田はまた声をかけられる。
「龍二……?」
懐かしい声だった。
声の主は、かつての恋人のものだ。
本当は、心の奥底に閉じ込めていた相手の声。
忘れるはずがない。
振り向いた先にいたのは、やはり陽葵だった。
当時に比べて男らしさは増しているが、彼だと分かる。
「陽葵……か?」
相手の目を見据えて問うと、陽葵は頷いた。
彼は、柴田を前に気まずさはないのだろうか。
「お前も、来ていたんだな」
そう言った陽葵の顔には、わだかまりは見えない。
「あ、あぁ……」
柴田が戸惑うと、陽葵は意外な提案をしてきた。
「なぁ。あっちの隅で、二人で話さないか?」
「え?お、俺と?」
柴田は大いに驚いた。
「そうだよ。久々に、話したいからさ」
今さら、一体何を話すと言うのだろう。
あの当時の恨み辛みをぶちまけられるのだろうか。
柴田は内心ビクビクしながら陽葵の後をついていった。
たどり着いたのは、人気のあまりないテラス席だった。
「お前、俺に何の話があるんだ?俺を恨んでるんじゃないのか?」
柴田が尋ねると、陽葵はふふっと少し笑った。
「まぁ、あの当時はムカついたし、許せなかったよ」
「ホントに、悪かったよ」
やっぱりなじられるのかと思い柴田はテンションが下がったが、しかし……。
「いいんだ。……お前、結婚してるのか?」
「……あぁ、してるよ。でも、お互いに愛はないかもな」
なんでそんなことを告白したのか、柴田自身にも分からなかった。
「そう……か……俺にもまだ入る余地はあるのかな?」
「えっ?」
そう言われ柴田が戸惑っていると、陽葵は距離を詰めてくる。
キスをされるのかと思うほどに顔が近づいた時に、プッと陽葵が吹いて笑った。
「そんなに焦らなくても」
そう言いながら、陽葵は可笑しそうに笑う。
「な、何なんだよお前……。俺をからかったのか?」
拗ねたように柴田が言うと、陽葵がサラっと髪を撫でてきた。
「悪い悪い。戸惑う姿が可愛くて、つい、な」
「何言って……」
柴田はますます陽葵のことが分からなくなる。
陽葵の本心は一体どこにあるのだろうか。
柴田が悶々としていると、会場で飲んでいた広川がやってきて声をかけられた。
「柴田ー!ちょっと来てくれー!」
「あ、あぁ」
呼ばれた柴田は、陽葵に「悪い」と告げ話もそこそこに会場内に戻った。
陽葵が淋し気な表情をしたことに柴田は気付かない。
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