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第13話

仕事を続けながらも、柴田はネタを売った者を探す手段がないか考えた。 すると、ふと吉沢という男の存在を思い出した。 同じ医大の出身の同期で、大学病院に勤務していた男だ。 吉沢は医療トラブルの末に医師を辞め、探偵業を始めたと聞いている。 もしかしたら、自分を窮地に陥らせた人物を探し出せるかもしれない。 その日の夜、柴田はさっそく吉沢に電話をかけた。 『もしもし?』 久しぶりの電話に出た吉沢の声は、少し訝しげだった。 「俺、柴田龍二だ」 『あぁ。久しぶりだな。お前に番号教えてたっけな』 「だからかけてんだよ」 『そうだな』 吉沢はハハと笑う。 「元気だったか?」 『まぁな。で?何か用事か?』 そう問われたので、柴田は事情と依頼について話した。 情けない感じもするが、背に腹は代えられない。 『なるほどな……お前、少しは落ち着けよ……』 吉沢の声には呆れが滲んでいることは、柴田自身にも分かった、 「過去のことだよ。事実ではあるが、今はしてない」 『そうかよ。……分かった。俺が調べてやるよ。金はたっぷり払ってもらうからな』 「あぁ。頼む」 吉沢が受けてくれたので、柴田は安堵した。 「本来なら、直接出向いて依頼すべきなんだろうけど、お前なら受けてくれるかと思ったんだ」 『はは。気にするな。昔のよしみで受けてやるから』 「サンキュ。改めて事務所にいくわ」 『あぁ』 それからは、雑談をするでもなく「じゃあ」と言って電話を切った。 ネタを売った相手探しは吉沢に任せるとして、柴田は報告を待つだけだ。   柴田が家のソファーでひと息ついていると、スマホの着信が鳴った。 ディスプレイを見ると、電話をかけてきたのは光輝だった。 「久しぶりだな。どうしたんだ?」 『アンタの記事、今度のも読んだよ』 『あぁ、やっぱり……』柴田は心の中でそう思った。 そういえば、光輝と話すのは誕生日以来かもしれない。 記事のことがあって、すっかり彼のことを忘れてしまっていた。 「そうか……」 『それで……書かれてることは本当なの?』 「あぁ、そうだよ」 素直に話すと、光輝の声のトーンが一段と下がった。 『アンタにはがっかりしたよ。そんなことしてたなんてな』 「そう言われてもな……」 『俺を抱いたのも、他のヤツらと同じ意味だったのか?』 そう問われ、どうだっただろうかと柴田は考えた。 「……どうかな……」 『なんだよ、それ……』 その声は、大いに不服そうだ。 「お前のことは、別に他の患者と同じとは思ってない」 『ホントか?よく分からないな』 「本当だ。可愛い弟みたいに思ってる」 『弟か……普通、弟にはあんなことしないけどな』 不貞腐れたように光輝が言うので、柴田は言葉に詰まった。 「それは……悪かったよ」 『謝んなくていいよ、もう。それより、病院の方は大丈夫なの?報道の影響があるんじゃ……』 察しが良いなと柴田は思わず感じた。 しかし、年下の光輝に弱いところを見せたくない。 いや、もう遅いのか。 今の病院の内情を教えるべきか、柴田は大いに迷った。 「そうだな。まずいことになってるさ」 『え?何だよ、まずいことって』 「苦情の電話とかが殺到してさ。患者のキャンセルが凄いんだ……今日なんて、いつもの半分も来たかな……」 以前なら考えられないほどに暇だった今日一日を思い出すと、憂鬱になる。 『そうか……』 それだけ言うと光輝は口を閉ざしたため、思わず柴田は名前を呼び掛けた。 「光輝?」 『状況は分かった。何か手立てはないか、俺も考えてみる。だから、ちょっと待っててくれ。それじゃ』 光輝は一方的に電話を切ってしまった。 『何なんだ?アイツ……』 そう思いながら、柴田はソファーにドサっと横になった。 今日はもう何もしたくない。 このまま患者が減り続けると、院長の座を失いかねない。 人の噂はいつしか消えると言うが、果たして医院も患者が戻り元のようになるのだろうか。 柴田の胸中は、重苦しいもので満たされる。

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