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第16話
柴田が町田と何とか和解をした頃、光輝が出演したドラマが放映されていた。
主要キャストの一人だったが、その役が当たり話題になった。
そしてSNSでも、俳優・神崎蓮は人気が爆発し大ブレイクしたのだ。
ある日、そのことをネット記事で知った柴田は、『そうなのか』程度に思っていた。
昔から知っている光輝が成功したのであれば、兄のような気持ちで嬉しいものだから。
すると次の日には、柴田の医院のCMがテレビから流れてきて、腰を抜かしそうになった。
しかも、そのCMには光輝の姿がある。
『どうなってるんだ……?』
柴田が驚くのも無理はない。
医院のCMを放映するなんて許可していないし、話を聞いてさえいないのだから。
動揺していると、その後に放送されたトーク番組に光輝が出演していた。
そういえば、光輝はこの番組に出たいと言っていたような気がする。
番組の女性MCに「イケメンですね」と言われた光輝は、「いえ、そんなことないです。もっとカッコよくて素敵な人はいますから」そう言って笑った。
「例えば、どなたかお名前を挙げることはできますか?」
「そうですね……俳優の先輩とか、同世代でもいますけど……幼馴染みにいるんです。カッコよくて素敵な人」
「その様な方がいらっしゃるんですね。どういった方なんでしょう。うかがっても良いですか?」
MCが問うと、光輝は縦に首を振った。
「その人は、美容外科医をしています。僕は、そのクリニックで鼻の施術を受けました。昔から鼻の形がコンプレックスで、鼻筋を通したいと思ってたんです。それで、彼のクリニックに行きました」
画面の向こう側でハツラツと話す光輝を見て、柴田は腰が抜けそうになった。
『アイツ……何言って……』
番組のMCは、さらに光輝の整形のエピソードを掘り下げようとしている。
「差し支えなければ、どこのクリニックを受診されたんですか?」
「はい。新宿のYTメンズクリニックです」
「あぁ……」
MCは一瞬、戸惑うようにして言葉を詰まらせた。
「YTメンズクリニックというと……週刊誌で、話題になったことがある?」
「えぇ、そこです」
光輝は気にすることなく、ハキハキと応じる。
そんなことを明かしたら、イメージに良くないのではないかと、柴田はテレビを観ながら冷や冷やした。
第一、医院の名前を出しても良いものなのだろうか。
「僕は、院長を昔から知っていて、彼に鼻の施術をしてもらったんですよ」
「そうなんですね。確か、CMも出てらっしゃいますよね?」
「はい。医院のPRになればと思い、出させてもらいました。あと、彼はとても素敵な人です。彼について報道されましたけど、あれは過去のことです。今は患者と真摯に向き合っているはずです。それと、彼の腕は確かです。僕の鼻も満足しています」
光輝は、決して「ぜひ、YTメンズクリニックに行ってみてください」とは言わなかった。
ただ、エピソードを語る最後には「僕にとって、院長は兄のような眩しい存在です」と締め括っていた。
すぐさま柴田はテレビを消して、頭を抱えた。
一体、どうして自分の知らない間にこういうことになっているのだろう。
光輝は何をしているのだろうか。
大々的にアピールされては、光輝までも大バッシングを浴びるに違いない。
光輝の俳優人生が台無しになっては困る。
柴田は、自分のことはともかく光輝のことが心配になった。
しかし番組が放送された次の日には、『神崎蓮の発言が大反響!美容外科クリニックに注目集まる』というネット記事が出ていることに、柴田は気付いた。
『何だ、これ……』
恐る恐る記事をPCでスクロールしながら読み進める。
しかし、バッシングではなく肯定的な記事だった。
記事によると、SNSで『俺も診てもらおうかな』や『ここまで大々的に明かしたんなら、かえって清々しいかも』などの声が聞かれたというのだ。
さらに、『腕がいい医師に執刀して欲しいから、行ってみたい』との声もあるという。
そして柴田の過去については、『神崎蓮が言うなら間違いないだろう。
過去は過去だし、今真面目にやってるのなら問題ない』とする意見もあると書かれている。
『どうなってるんだ……一体……』
柴田は大いに困惑した。
自分でも調べてみると、記事に書かれている内容は間違いではないようだった。
確かに、『そんな倫理から外れたような行為をしていた医師のいる医院では、施術を受けたくない』という意見ももちろんあるが、否定的な意見は多くない。
何が起きているのか、全く分からない。
モヤモヤとした気持ちのまま柴田は一日を終えた。
「先生、今日カウンセリングの予約が五件入っていますよ」
次の日出勤すると、看護師の町田が教えてくれた。
「え、五件?」
騒動が起きた後では考えられない。
メンテナンスに来る患者はいても、カウンセリングの予約はこのところ一日にポツポツとある程度だったから。
「はい。今日は忙しくなりそうですね」
町田は以前なら見せたことのないような笑顔を向けてきた。
少し慣れない気もするが、和解ができたということか。
「そうですね。今日もよろしくお願いします」
「はい」
会釈をして、町田は持ち場に戻っていった。
医院の患者数も回復してきているということだろうか。
それなら安心だ。
後は、これが一時的ではないことを願うばかりだ。
その日は久しぶりに忙しい一日だった。
それからは、以前のように患者が戻ってきた。
柴田はホッとしたが、これは光輝のおかげなのだろうかという部分は引っ掛かる。
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