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第25話
しばらくすると、光輝が二人分のコーヒーを持ってきた。
「そうだ。龍二さんて、俺のドラマ見たことある?」
コーヒーカップをローテーブルに置きながら聞いてきたが、柴田はギクリとした。
「いや……悪い……」
柴田は元来ドラマを見る方ではないため、光輝のドラマに限らず見たことがなかった。
「はは。やっぱりな」
光輝はクスクスと笑った。
「え?」
「だって、昔から言ってたじゃん。ドラマ見ないって」
「そうか?……よく覚えてるな、お前。言った俺ですら忘れてんのに」
感心した柴田は淹れてもらったコーヒーを啜(すす)る。
「当たり前だろ?好きな人のことは忘れないよ」
自分はどうだろうか?光輝の言葉に、柴田はハッとした。
自分はこれまでに、その人のことについて覚えておきたいと思った相手はいただろうか。
柴田にとって、光輝は陽葵以来の正式な恋人だ。
陽葵に関して、あの頃はちゃんと愛せていただろうかとふと思った。
「そう……かもな……」
とはいえ、今は光輝が柴田の脳内を占めている。
柴田は込み上げる愛しさを抑えきれず、光輝の頬に手を添えた。
すると、光輝は柔らかく微笑んだ。
「じゃあさ、一緒に見てみない?俺の出たドラマ。龍二さんに見て欲しいんだよ」
「分かったよ。どんな話だ?」
「レストランを舞台にした恋愛ものだよ。俺はシェフ役で、年上のオーナーと恋人同士って設定」
「え、まさか男?」
「違うよ。そんなドラマじゃない。女性だよ。女優の佐倉真姫、知ってる?」
「あー……分かる」
俳優なんだし、演技だとは分かっていても、何となく嫉妬してしまう。
「嫉妬しないでよ」
光輝がトンと軽く肩をぶつけてきた。
感情を読まれてしまったことが、何となく恥ずかしい。
「しっ、してない」
赤面しながら言い返すと、光輝は「分かったよ。ね?良いドラマだから見ようよ」と言い、テーブルに置いてあるリモコンを操作した。
いざドラマを見始めると、思いがけず内容に入り込み没頭してしまう。
内容が面白いこともあるが、俳優・神崎蓮としての光輝の演技を初めて見たから。
柴田にとっては弟のような存在だった光輝も、しっかりとした俳優に成長していた。
その点は何だか感慨深い。
「な、何だ……こんなシーンあるなんて聞いてないぞ……」
ドラマは一般的なものだが、光輝にキスシーンがあり、さらには絡むシーンがあるように想像を掻き立てる演出がなされていた。
「気にすることないって。別にしてるわけじゃないしさ。第一俺は女に興味ないし、龍二さんしか見てないし」
「そりゃそうだろうけど……」
最後の一言になぜか柴田は赤面してしまう。
嬉しいがこっ恥ずかしかったから。
すると光輝が耳元で囁いてきた。
「龍二さんには、ちょっと刺激が強かったかな?ごめんね。……ねぇ、知ってる?俺の初恋、龍二さんなんだよ」
「え?」
確かに、光輝は中学生の頃から年上の柴田を好きだったというのだから、初恋なのは間違いないだろう。
「初恋は実らないって言うけど、そうでもないかな?」
「そうだな。案外、上手いこといくかもな」
「だといいな。ずっと龍二さんと……一緒にいたいから……」
「それ、俺が言おうとしてたこと」
二人はどちらともなく唇を重ねた。
未来への不安はあるが、今は幸せを嚙みしめたいのだ。
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