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第28話
その日から、柴田は医師探しを始めた。
腕が良い知人の医師に電話をかけたが、なかなか良い反応はもらえるはずがない。
五人目にかけたのは、いつかの学会で知り合った年上の医師だ。
「YTメンズクリニックの柴田です」
『あぁ、お久しぶりです。元気でした?』
その医師とはあまり会っていなかったので、柴田からの電話に少々驚いた様子。
「はい、おかげさまで。先生もお元気そうで、何よりです」
『はは。まぁ、何とか倒れずやってます。どうしたんですか?』
向こうとしても、少し柴田に警戒しているように感じられる。
「実は、日比野先生にお願いがありまして」
『え、珍しいですね。何ですか?』
「ウチの医院に欠員ができたんですよ。それで、ぜひ先生にウチでご活躍いただけないかと思いまして……」
『あー、そうでしたか。実は、10月になるしちょうど時期的にも良いと思って、他に移動しようと考えてまして……』
「そうなんですか?」
日比野という医師の言葉に、柴田は内心歓喜した。しかし……。
『えぇ。そうなんですけど……つい先日次のクリニック決まってしまったんですよ』
「へ!?あ、そ……そうですか……一歩遅かったですね」
柴田は落胆を隠せなかった。
『せっかくお声をかけていただいたのに、すみません』
「い、いえ。突然でしたし、仕方ないですよ。お時間取らせてこちらこそすみませんでした」
『とんでもないですよ。今度ぜひ飲みに行きましょうよ』
「そうですね。またお声かけさせてもらいますね。……では」
電話を切ると同時に、柴田の口から溜息が盛大に漏れた。
五人連続で断られてしまった。
そう簡単にいくものではないことくらい分かっていたが、段々と心的に疲れてきてしまう。
断られるのは仕方ない。
自身の職場で満足している医師なら、「来ませんか」などと言われてすぐに移ってくるはずがないだろう。
それは業界においての体面的なものもある。
柴田は、ネットのスカウトサイトを利用することにした。
転職を考えている美容外科医をスカウトしようと考えたのだ。
早速サイトに登録をして、転職を望む美容外科医の検索をする。
何人かがヒットしたが、その中に目ぼしいキャリアを持つ医師がいた。
大阪の大手美容外科に長く勤めていて、東京に進出をしようとしている医師だった。
『これだ……』
柴田は早速その医師とメールでコンタクトを取った。
聞けば、都合により東京に移住することになったそうで、美容外科クリニックを探していたのだという。
二週間後に越してくるといい、その後に面談をすることになった。
それまでは責任を持ち対応をしなければならないので、YTはすぐに辞められなさそうだ。
それから数日後、光輝から「会いたい」と連絡が来た。
家でばかり会っているのではつまらないからと、その日は外で会いたいと言ってきたのだ。
「大丈夫なのか?お前目立つからなぁ……」
『まぁね。でも大丈夫だって。意外と気付かれないことも多いしさ』
電話越しで楽しそうに語るので、柴田も大丈夫だろうかと思った。
「そうか?……じゃあ、食事にでも行くか?」
『うん!じゃ、七時頃にウチに来てくれる?』
「わかった。仕事終わったらすぐに行くから」
『やった!』
いつにも増して光輝は嬉しそうだ。
柴田は「あんまり浮かれすぎるなよ」と笑って電話を切った。
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