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(一)檻の中の少年
彼はフォトナ王国の貴族で、同時に闇オークションのブローカーでもあった。名はクラスト=ブロウ=ダンシェル。歳は三十を数えるが、まだ妻はない。貴族の暇潰しの場である社交界では穏やかで紳士的と評判ではあったが、彼自身はまだまだ独身生活を満喫する気でいる。
クラストが仲介するのは、少年性奴隷 だ。
闇オークションの参加者は、暇を持て余したこの国の貴族たちだ。仕入れたばかりの少年たちは反抗心が強い。それをそのまま出荷して、大きな事故になろうものならことである。だからこそ、ブローカーにはきちんと使えるようにした商品の出荷が求められた。それ即ち、調教。大事な商品を躾けるその過程を、クラストはとても気に入っている。
闇オークションに出荷する商品には、それぞれ細かな指定が付いた。バックバージンの有無、プレイの種類……今回クラストが仕入れた商品についてオークショニアに彼が問い合わせてみたところ、『プレイの幅は狭くともいいから、とにかく使えるようにしてくれ』とのこと。
つまりはクラストの好きに調教していいということだ。
指定によっては、口にするのも憚られる嗜好を仕込まなければならないこともある。SMプレイなどその最たるものだ。耐え切れずに壊れてしまう少年も多いだけに、その後の処分もしなければならないクラストとしては、なるべく避けたいのが本音である。
「――しかし、愛くるしい少年が手に入ったものだ」
自邸の地下に裸の少年が入った檻を運び込ませたクラストは、そのきめ細かな肌や、細く引き締まった体躯に、大きな期待を寄せずにいられなかった。
フォトナ王国の南西に位置するマルーシャ地方で捕獲されたジェンガ族の少年であるという。
抱き心地の良さはベッドでは大事な要素のひとつだ。折角色々なプレイに耐え得る身体に仕上げても、肌がざらついていたり、見目に劣っていれば買い手は少なくなる。
その点、この少年は合格点だった。目隠しで半分顔が隠れてしまっているものの、かなりの愛嬌が窺える顔立ち。それもその筈。ちらと見える部分だけも、煽情的な桜色の口唇に可愛らしい小鼻と綺麗なパーツが揃っている。まだ薬で眠っている為、瞼が開いているところを確認してはいないが、美しい鳶色の目の持ち主だそうだ。
こうした少年を快感で溶かすのがクラストは好きなのだ。
最初は抵抗していた少年たちが、徐々に愛撫に慣れ始め、恥ずかしそうに吐息を吐き出すようになる。そこで彼らが見せる本能的な振る舞いは、クラストを愉悦に浸らせた。
どんな宗教画にも描かれていないたったひとつの真理がそこにある。
人間を人間たらしめているのが理性の存在だ。理性が存在するからこそ、人間は羞恥を感ずるようになった。そして、羞恥を感ずるようになったからこそ、ただの生殖行為を人目憚る『娯楽』行為と認識するようになった。
理性なき生物は獣と同等だ。獣には羞恥の感情はない。芝の上で、あるいは荒野で、或いは往来の片隅で、野生の本能に従って相手を奪い合い、ほんの一瞬の隙を突いて性行為に及んでゆく。そこにどうして『娯楽』が入り込む余裕があろうか。獣たちはいつだって本能が赴くがまま、衝動的に生きているというのに。
人間の理性を弱らせるものがもしひとつだけあるのだとしたら、それこそが快楽であるとクラストは思っている。
だからこそ、本能を刺激され、誘惑に打ち勝てなくなってゆく少年たちを見るのが愉しいのだ。特に愛撫に慣れ始めた頃だ。彼らは自らの性と扱われ方のギャップに途惑いを覚えながらも、与えられる快楽に従順になってゆく。愛撫にきちんと身体を開けるようになればあと一歩だ。積極的に愛撫に身を任せるようになった彼らの痴態は、芸術家が生み出した最高傑作の美術品よりも美しい。
「君はどういった痴態を私に見せてくれるのだろうね」
クラストは檻越しに少年を眺めながら、調教の手順を脳内で確認した。少年の性格やオークショニアからの指定によって変動はあるものの、基本的な手順に変わりはない。初めは軽い愛撫から。そして様子を見ながら愛撫を侵襲させてゆく範囲を広げてゆく。
クラストは装飾の簡素なマスカレードマスクを顔に嵌めた。
仕入れから調教、引き渡しと、全ては闇から闇へ葬り去られる出来事だ。顔を覚えられて困ることはなかったが、正体不明な人物を装った方が、非日常感を演出するからだろう。少年たちの反応は良くなった。
「では、始めようか。今日から君は私の大切なラブドールだ」
檻に掛けられている錠を外したクラストは、檻の中へと足を踏み入れていった。
檻の高さはクラストが身を屈めて入れるほどしかない。幅はかなり広く、どういった体位でも思うがままだ。その檻の中で、手枷を吊り上げる形で拘束されている少年は、愛撫がし易いように、膝立ちの姿で体勢を固められていた。
少年の瑞々しい身体に膝をついて寄り添ったクラストは、早速、ぷっくりと膨らむ乳首へと手を伸ばしていった。
乳首を撫でてやりながら、耳に吐息を吹きかける。目を覚ます様子はないが、理性が消失している状態だからだろう。無防備な身体がぴくりと震える。いつかは目を覚ますことだろう。その瞬間の少年の内心を想像したクラストは、自らの嗜虐性をそそられた。
胸を高鳴らせながら、桃色に染まっているその耳をじとりと舐る。
ん。と、小さな声を上げた少年が身を竦ませる。
悪くない反応だ。
気の強い少年や感じ難い少年だとこうも上手くはいかなかった。前者は早々に目を覚ましては大いに暴れてくれたものだったし、後者に至っては何をしても無反応なままだ。それだけに高まる期待。今後の調教次第でかなりの痴態が見込める少年の反応に、クラストは愛撫の手を早めることとした。
先ず少年の身体の性感帯を探るべく、肌に置いた口唇を滑らせてゆく。
首筋に、うなじ、鎖骨に、肩口……緩やかに舌を伝わらせてゆくと、面白いようにどこも反応するではないか。
特に内腿の感度がいい。
菊座を近くするこの位置を舐るのを好む貴族は多かった。調教済みの少年は、焦らされると自ら挿入をせがむようになるのだが、内腿はそれに尤も適った場所として認識されていた。何せ、菊座の反応を間近にしながら愛撫を続けられるのだ。ここの感度がいい商品の価値が上がるのも無理はない。
しかし、と、クラストは感度の良い少年の身体に懸念を抱いた。
もしかすると、少年は既に性的に成熟しているのではないだろうか。
既に経験済みとなると、オークショニアに新たな指示を仰ぐ必要が出てくる。それによっては追加の調教を施す必要も出てくるだろう。何より、クラスト自身、未熟な少年を仕上げてゆくのが好きな性質だ。経験済みとなると愉しみがひとつ減ってしまう。
クラストは少年の双丘に手を分け入らせた。そして、ひだを寄せている菊座に指先を含ませようと試みた。だが、少年の蕾が開く気配はない。ありきたりな展開に、クラストは少年がバックバージンであることを確信するも、釈然としない思いは残る。
とはいえ、稀には純粋に感度が良い商品も存在する。そういった商品は、クラストの手を大して煩わせることなく出荷されてゆくのが常だ。きっと、この少年もそういう『個体』であるのだろう。そう自分を納得させたクラストは、乳首への愛撫を続けることとした。
全身が既に感じるようになっているのであれば、闇オークションに参加する顧客が好む傾向に躾けてゆけばいいだけだ。
内腿は勿論のことであるが、乳首の感度ほどは重要ではない。悪趣味な顧客たちは、少年が陰部をいじられることなく達するのを見るのを好むのだ。特に乳首だけで射精に至れるともなれば、二百万ダラルもの値が付く。クラストの手に入ってくる金額は、落札金額の十パーセント。貴族という身分に与っているクラストは金に不自由をしていなかったが、遣り甲斐のひとつの目安として落札金額のチェックを欠かさずにいた。
この少年は最低でも三百万ダラルになるように仕上げたい。
少年の肌に手を置いたクラストは、身を屈めて、うっすらと色づいている乳首を吸い上げた。刺激を受けて乳頭がぷるんと震える。続けてもう一度。少年の乳首を口に含んだクラストは、今度は舌先で乳頭を転がした。ん、んぅ……少年の無意識的な喘ぎ声を耳に、じっくりと乳頭に愛撫を加えてゆく。
今は丸いだけなこの乳首も、調教を続ける過程で女性並みの乳首に育ってゆくのだ。
少年の完成形を想像したクラストの股間が熱くなる。次回の闇オークションの開催まで、残り三十日。それまでにこの少年をより高値で売れる商品に仕上げねば……使命感にも似た思いにクラストが捉われた次の瞬間、どうやら起きたようだ。少年の身体に緊張感が漲った。
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