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1章-3

(だれか、生きて――) 「良かった、助かって……え?」  望月が振る舞うと異形の群れが並んでいた。  大型の動物を眷属に持つ亜人種なのだろう。  いずれも、大きな体躯に鋭い目つき、戦闘に特化した種族と推測される眷属の亜人種である身体的特徴を有していた。  ひとりが――空きっ歯が目立つ痩せぎすのハイエナを彷彿とさせる亜人種のオスが言った。 「何かと思えば、コロニーがひとつ襲われて、肉にありつけると思ったらコイツはラッキーだな」  ハイエナはニヤニヤと下卑た視線で望月のことを観察した。  全身に絡まりつくような値踏みの眼差しが不快だった。 「こ、これは僕の家族だから、た、食べさせたりなんてしない……っ」  望月は、仲間たちの骸の前で手を広げた。  死してもなお、コロニーの仲間の尊厳を蹂躙されるなど、到底、許せる事柄ではない。 (怖い……でも、でも……)  望月の大きな瞳に涙が浮かぶ。  次は、全身を入れ墨で彩ったジャコウネコの亜人種のオスが望月に近づいて、とん、と薄い胸をついた。 「まあ。できれば、鮮度がある肉のがおいしいわよねぇ」 「え、どういうこと?」  ついに、望月は戸惑い、敵に問うた。 「比較的、鮮度のいい肉にありつける機会なんてないしな。おこぼれを貰おうと思ったら、まさか、メスがいるなんてな……お前も幸運だな。楽しんだ後に仲間のところにいけるんだから」  背後から、まわってきた大猿の亜人種が、望月の体臭を嗅いでいる。  頸に湿った感触がまとわりついて不快感に身を捩る。 「やめ、やめてよっ、僕、ちが……っ」  望月は、亜人種たちに囲われていた。  どの亜人種たちも目をらんらんと光らせ、望月の身体を舐るように観察している。  性的に消費する対象、そして、獲物として――。  そう観察されていることに気がついた途端、全身がぞわっとした嫌悪が走る。  そして、恥辱に身体を震わせるが、望月はあまりにも無力だった。 (悔しい……こんなやつらに嬲られて……殺されるなんて……でも、) 「死ぬ前にひとつだけ知りたい」  不思議と望月の声は凛とした響きを帯びて、夜空に響いた。 「あ?」  ジャコウネコが、眉をぴくりとさせた。 「誰がこんなことをしたのか。仇を知らないまま、死ぬのは嫌だ!」  コールタールを煮詰めたような望月の怨嗟の言葉。  一瞬、その場が静まり返った。  次の瞬間、どっと爆笑が起こった。 「威勢がいいのは嫌いじゃあない。そんなの聞くまでもないだろう。なあ?」とハイエナが、演技じみた言い回しをする。 「郁(いく)だよ、郁」 「い、く?」  初めて聞く名前だった。 「自分は他と違いますって澄ました顔をしている野郎だ。市街地に流れ着いたが、とにかく変わってやがる。そもそも、自分で自分の故郷を滅ぼしたとか聞いたぜ」 「自分の故郷を滅ぼした……?」  思わず、その言葉をなぞる。  そして、周囲を見た。  殺戮のかぎりを尽くされた現場。  同胞の死体。噎せ返るほどの濃密な血の臭い。  まるで、“今“と状況が重なるではないか。  望月の指先から血の気が引いていく。 (郁……)  無意識に望月は、視線を鋭くした。 「でも、あの顔ならねぇ。一度くらい、犯してみたいものだわ」 「お前、殺されるぞ。まあ、あの顔ならなぁ……」  目の前で亜人種たちが品性のかけらもない会話をしている。  だが、望月の耳には、その言葉は届かない。  とかく、腹の中でどす黒い憎しみが渦巻いていた。 「さ、聞きたいことは聞いただろ。うさぎちゃん。これからはお楽しみの時間だ」  ハイエナの男が、五指が食い込むほど強く望月の腕を掴む。 「痛いっ、痛いっ、離してっ、離してーっ」  矜持など、一瞬で消え失せ、望月は嫌々と暴れた。 「無理やりされる方が好みか? この人数だし、相手はいっぱいいるからな」  望月は、眦に涙を滲ませて、ひっと悲鳴をあげた。 (怖い、僕、なにされるの? 痛いのも嫌なことも、やだぁ、やだやだぁっ!)  咄嗟に望月は、強く目を瞑った。

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