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3章-3

ざああっと森がわなないた。  濃厚な緑の匂い。  そして、しばらく歩くと視界が開けた。 「あ……」  その場所を目の当たりにして、望月は、目を瞬かせた。  夕暮れに映えるアネモネの花畑。  まだ、コロニーが襲撃される前に■■■■と過ごした場所だ。 「……故郷のことがずっと心配だったのだろう」  落ち着いた口調である。  だが、彼の瞳はやさしい。 「お前だって、もう逃げはしないだろう。しばらく、好きに過ごすといい」  郁は、そう言って、ひとりでふらりとどこかに行ってしまった。 「待って、」  ずっと、恋しかった場所だ。  ずっと、戻ってきたかった。  ここで物思いに耽れたら、とずっと考えていた。  だが、今は郁のことが気になる。  望月は、黒い影を追った。   郁がひとりで向かったのは、粗末な石板だ。  そこに朽ちた花が飾ってある。  郁はその石板に跪き、こうべを垂れた。  まるで、何かに祈るような、贖罪のような――そんな恰好に見える。 「もえぎ、」  風に乗って、その名が聞こえた。  囁きのような小さな声。  郁は、神聖なものに触れるように、丁寧に口にした。 (もえぎ――)  刹那、予感のようなものが、望月の頭を巡る。  もちろん、知らない名前だ。  だが、何か予感のようなものを覚えた。  夕日に照らされたアネモネの花が赤々と燃えていた。  花畑は静謐に包まれた。

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