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4章-5
5
事後のことである。
郁は、不機嫌そうに水煙草を吸っていた。
行為が終わってからというものの、望月と一言たりとも話そうとしない。
(もしかして、怒ってる? あんなことしたからそれはそっか……)
望月は、しゅんと耳を落とした。
ちらりと横目で郁を伺うが、望月のことをいないもののように扱っている。
さすがに、しょんぼりとしてしまう。
「……ねえ」
郁のとなりに腰を下ろして、身体をすり寄せる。
なんとなく、行為の後は離れがたい。
自分の匂いがしみついているせいか、安心するのか――単に、彼のそばから離れたくないのか。
後者の可能性はあえて、気がつかなかったことにして、望月は上目遣いに、郁に聞く。
「……やっぱり、怒ってる?」
「……別に」
そっけない返答にますます望月の耳が縮こまってしまう。
郁は、困ったように望月を眺めていたが――不意に、髪を撫でてきた。
「え、なに……? 怒ってたんじゃないの」
「……そういうとき、兄がこうしてくれたから」
郁は、それだけ言うと口を噤んだ。
「えへへ、そっか」
望月はふにゃっと顔を緩ませた。
そして、郁に髪を撫でられたまま、傍らにいた。
膨大な書架に、壁に流れる映画。水煙草の紫煙が揺れる――。
郁の髪を撫でる不器用そうな手つきに身をゆだねながら、望月は答えを聞けずにいる。
――本当に、君が僕の故郷を滅ぼしたの?
最近、感じ始めていた疑問。
だけど、その問いを言葉にした途端、何かが壊れる気がして、望月は黙した。
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