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5章【真相】-5 追憶のアネモネ編

 それから、郁と潮の蜜月は始まった。  以降、潮は人目を憚らずに郁を寵愛するようになった。  コロニーの外から、商人を呼ばせ、いくつもの上等な服を仕立てさせ、それを身につけるように命じた。  相変わらず、食事は、もえぎとともに過ごしていたが、最初はそれにも難色を示していた。 「食事なら、もえぎを屋敷に呼べばいい。いっそう、郁ともえぎのために部屋を作ってもいい」とは潮の弁だ。  それを伝えると普段、温厚なもえぎが、頬を紅潮させた。 「そんなの、嫌! 私は、ここがいいの。おにいちゃんと一緒にここにいたい……」 「もえぎ……でも、せっかくの申し出だよ? 潮……さま、も……お前のことを案じているのだろうし」  実質的に、潮ともえぎは生まれながらにしてフィアンセという関係ではある。 「絶対に嫌! おにいちゃんと一緒がいいもん……私、行きたくない……っ」  そう言って、布団をかぶって丸まってしまった。 「ごめんね、もえぎ。おれが無神経だったと思うし、潮さまに甘えてばかりは違うよね」  布団の上から妹の背を撫でてやりながら、そう言う。 「ちがう、ちがうの……」  小さくもえぎが嗚咽する声が聞こえた。 「私が、いけないの」  そうもえぎは断じた。  身体が勝手に動いて、布団をまくった。  もえぎがはらはらと涙をこぼしている。  ずいぶんと彼女には寂しい思いをさせてしまったようだ。 (もえぎが、ひとりの間……おれは快楽に耽って……)  そんな自分を恥じはした。 (愛するって、エゴなのかな)  そんなことが頭を過る。  だが、目の前ではもえぎがひっくひっくとかわいそうに泣いている。  たまらなくなって、郁は頭を撫でた。 「食事の件も、一緒に住む件も、おれがちゃんと断るから……もえぎに嫌な思いはさせないから……」 「おにいちゃあん……」  もえぎがぐずぐずと郁に縋ってきた。  郁は妹の頭をぽんぽんとしてなだめてやりながら、「ほんとうにもえぎって甘えん坊だなぁ」と笑う。 「こどもみたい、」と言ったところで、もえぎがじとっとした目で郁を見た。 「……おにいちゃん、デリカシーがないってよく言われない?」  やや冷ややかな視線をもえぎに向けられて、郁はぐうの音も出なかった。  だが、次の瞬間には、もえぎはくすくすと笑い、「冗談だよお」と言い、すりすりと郁の腕に頬を寄せてきた。  やっぱり、女の子は難しい。  率直な郁の感想だった。

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