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5章【真相】-5 追憶のアネモネ編

 そんな経緯もあり、そのまま、郁は潮に報告した。 「ふーん……もえぎがね……」  それきり、潮は黙った。 「せっかくの厚意なのに、ごめんなさい」  郁は頭を下げた。  潮に何を言われようとこれは、もえぎの意思なのだから、撤回する気はなかった。  潮は、郁が難しい顔をしていることに気がついて、表情を和らげた。 「うーん……おれはもえぎに嫌われているから仕方ないかあ」  あはは、と快活に笑う。 「えっと……もえぎが、潮を嫌ってるの?」  初めて聞いた。  もえぎは、潮の供する食事には、感謝していた。 潮と顔が合わせる機会が増えたので、彼女には、潮の手伝いをしていると説明した。 もえぎの返事はあっさりとしたものだった。 「それじゃあ、しょうがないね」  その顔が寂しそうに見えたのは、ひとりぼっちの時間が増えるからだと思っていた。  胸を痛めもした。  それゆえに、郁はひどく驚いた。 「ああ、難しいことは考えなくていいよ。だって、もえぎの立場にもなってごらん? 物心ついた頃には、メスというだけで神聖視されただろうし、フィアンセがいる。それもこんなに歳が離れたおじさんじゃあね……女の子は嫌だろう?」 「ああ……」  そんなものだろうか。  郁には解せない。  それに、と潮は言った。 「もえぎは、郁のことが大好きだから」  それは、そうだと思う。  コロニーには数えるほどしかメスがいない以上、他の家の事情は知らない。  ただ、兄ひとりしか家族がいない以上、もえぎには自分しかいない。  それにもえぎは郁を慕っていたから、その言葉は、とても腑に落ちた。  

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