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5章【真相】-6 追憶のアネモネ編

 その日、けして、潮は郁を離そうとしなかった。  町の中で他の者の目があるにも関わらず、べたべたと郁の身体をまさぐり、身体を密着させてきた。  郁が視線を地面に落とすと、「おれを見て」とニュアンスこそ、やわらかいが、叱責が飛んできた。 「はい……」  郁は泣きそうな顔で、けれど、笑いながら潮を見る。  すると、潮は機嫌を良くする。  潮は、恋人であることは秘密だと言ったのに――これでは、周囲に関係を知らしめるようだ。  郁は自由な右手でブラウスの裾を強く握った。  ひそひそという住民の囁き声。  郁の頭はまとまりがなく、その内容までは理解できなかった。  ただ、屋敷までの道のりがひどく遠く思えて……郁は自分を保つのに必死だった。

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