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6章

6章  泣きながら、望月は目を覚ました。  気がつくと市街地のいつもの部屋だった。 「……望月?」  上からやわらかい声が降ってくる。 「泣きながら寝ていた……お前……もう5日も……」  郁は、ほっとしたように腕を伸ばしたが……。  望月の顔を見るなり、すぐにその手は引っ込められた。 「もえぎは、君を恨んでなんかいなかった!」  郁の肩を掴んでそう告げる。  これだけははっきり言わないといけないと思っていた。  もえぎには、もう兄に想いを伝える術はない。  もえぎ自身は望んでいないかもしれない。  だが、あんな別れ方はあまりにも――悲しすぎる。 「え……」  一瞬、郁の表情が固まった。  だが、すぐにいつもの無味乾燥な顔に戻ってしまう。 「もえぎは、君のことを恨んでなんかいない。今だって君の幸せを祈っている――」  そこで、郁が、身体の向きを変えた。  こちらを一瞥たりとも見ようとしない。 「……きっと、視たんだな」  郁が聞こえるか聞こえないかの抑えた声量でひとりごちる。 「ねえ、郁、本当のことを話してよ。君の口から真実が聞きたい」  郁の腕を掴んで、アレキサンドライトの瞳を見ようとする。  だが、頑なに郁は振り向こうともしない。 「……お前の故郷はお前が滅ぼした。お前は俺を恨めばいい。それでいい。それが正しい」  郁は、望月に近づくと、布団をかけなおした。 「……もう夜中だ。頭痛がひどいのだろう?」 「で、でも……」  望月は食い下がった。 「俺は野暮用がある。今晩は嵐が来るそうだ。戸締りをして寝て」  郁は一言で望月を拒絶した。 「ねえ、どこに行くの……」  今、郁から手を離したら、そのまま、どこかに行ってしまいそうで怖い。  とっさに、郁を引き留めたい一心で、望月は問うた。 「ねえ、郁……」 「何?」 「僕たち……“前にどこかで会ったこと“あるの?」  その言葉に郁がはっと息を呑んだ。  しかし、黙った。 「……たいした用事じゃないから。少しだけひとりにしてほしい」  そう言ってのろのろと部屋を出ていった。 (郁からしたら知られたくない過去に干渉されたわけだから、そりゃ、気分は悪いよね)  しかし、望月は思う。  何かがおかしい気がする。  確信はないが、そんな予感がした。 (けど、何がおかしいのか分からない)  それから、ぷいっと望月は布団に横になった。 「郁のばか」 ――やっと、向き合う覚悟ができたのに、どうして彼は何も話してくれないのだろう。  それが、無性に腹立たしくてならない。  

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