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幕間 ひとりぼっちの狼と望月の出会い②

「間に合わなかった……」  郁は、茫然と呟いた。 (また、俺は同じ過ちを――)  目の前では、白うさぎたちが、あちらこちらで苦悶に呻く声がする。  充満した血の匂い。  生きている者はわずか。  だが、それももう遠からず――死ぬだろう。  郁は、かつての自分の故郷の最期を思いだして、くっと唇を噛み締めた。  すると、何者かが、ずる、と郁の足に縋った。  老いた白うさぎの亜人種だ。 「俺は敵じゃない。助けに来たと信じてくれ……」  何せ、黒狼の風貌だ。  それにこの状況では、負傷者の混乱を招くだけだ。  届かない願いだとは思うが、そう祈りながら口にする。 「ああ、天使さまが見える。なんと、美しい……」  老いた亜人種は、視界が霞んでいるのか、郁に手を伸ばした。  郁はその細い身体を腕で支えた。  致命傷を負っているうえに、雨風に打たれて体温がひどく冷たい。  郁は顔を歪めた。 「天使さまにお願いがある……望月が、いないんだ」 「……望月が?」  郁の背にひやっとしたものが走った。  こんな嵐の晩に望月はどこに行ったというのだろう。 「どうか……老骨の最期を……あの子だけは……天使さま、望月を守ってほしい、かはっ!」  虫の息でそう言った老いた亜人種は激しく喀血した。 「もう喋らなくていい。大丈夫。望月は必ず見つけるし、俺が守るから……」 「……ありがとう……ありがとう……」  老いた彼はそれだけ言うと、郁の腕の中で息を引き取った。  最期は苦悶ではなく、穏やかな微笑みを浮かべていることに安心した。  郁は、そっと身体を離す。  衣服が老いたうさぎの血にまみれていた。 「……約束は守る」

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