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6章-2

3  強い風が吹いた。  たまゆら、望月が目を閉じる。  郁が小さな声で語りかけてきた。 「……お前もあれと戦って勝算がないことには気がついているだろう」 「……うん」 「あれは、身体を蝕むから……できれば、使いたくなかったが……背に腹は代えられない。覚悟はいいか?」 「もちろんだよ。郁となら、怖くない」  郁と望月は五指と五指を絡めて――強く握りしめた。  すると、黒の塵芥と光がふたりの身体を覆った。 「しょせんは、獣か」  紅蓮の魔女が異形と化したふたりの姿を眺めながら、茫然と呟く。  今や、郁と望月は本来の獣の姿と化した。 「だが、その力を遣ってどうする? 運よくわたしを倒せるかもしれないが、暴徒化の進行を速めるだけだ。お前たちは地獄に堕ちるだけ」 「郁と一緒の地獄なら、喜んで堕ちていくよ」  望月の言葉に、迷いはなかった。  それどころか、こんな場面なのに、蜜の滴るような甘い声でそう告げる。  望月の姿はいつか夢に出てきた白うさぎの紳士とまったく同じ風貌をしていた。  一方、郁は黒狼の姿だ。  郁が地面を蹴った。  望月も、その後を追うように俊敏に駆ける。 「小賢しい」  紅蓮の魔女が、植物の蔦に似た触手で迎撃を阻もうとする――が、郁が、彼女の腕に嚙みついた。 「ぐ、アっ!」  少女の腕から鮮血が滴る。  すぐさま、少女は、傍らから飛びかかった望月に強烈な蹴り技をくわえる。  重い衝撃が下腹に走ったが、地面を踏みしめる。  そして、伸びてくる蔦を引きちぎった。  そのまま、腕を振り子のように、横にスライドさせる。  ごっと重い音がして、紅蓮の魔女が吹き飛んだ。 「か、はッ!」  腹をくの字に曲げ、紅蓮の魔女が血を口から吐く。 「わ、だ、わだじはっ、紅蓮の魔女だぁあああ!」  少女はすぐに立ち上がり、刃物状に変形させた両手でふたりに切りかかる。  鮮血が噴き出した。  だが、郁も望月も怯まない。 「亜人種を滅ぼすためにっ! わたしは存在している!」 「わたしの存在理由はただそれだけだあぁあああ!」  少女が、叫び、しゃにむに郁と望月に切りかかる。  郁と望月の身体のあちらこちらから鮮血が迸る。  だが、ふたりは再び、大地を蹴った。 ――もう、誰の目から見ても勝負は明白だった。  

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