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第10話

紫月の居ない、静かな夜 眠れる様に 日中掃除して 晩ごはん食って 筋トレして なのに 全然眠れない 「紫月…」 こんな、少し離れただけでダメージ受けてたら その日が来たら、どうすんだよ 「さてとっ…」 幸か不幸か、俺は男なんで お手軽に、気持ち良くなれる訳で そうしたら、少しは眠れるってもんだ 「ん……っ…んっんっ……はっ…」 紫月とのセックスは、全然違った 男も女も 受けも攻めも経験した どれも、気持ち良かったのに その、どれとも違った だって、もう セックスのその前からして、全然違った 紫月から、告白みたいな言葉を貰って 本格的に同棲を始めて 俺の怪我も、すっかり良くなった頃 状況的には、恋人同士が同棲してる訳で 毎晩、同じベッドで寝てる訳で 紫月は、普通に寝てるけど 俺は、ムラムラしていた シャワー浴びた時、出した筈なのに 紫月が、寝返り打ったら 俺の前に、紫月の頭の後ろが来て それが… なんか、めちゃくちゃいい匂いしてる なんだろ シャンプーの匂いとは、違う様な… そっと近付いて、もう少し匂いを嗅いでみる いい匂い過ぎる もっと、中… いや、もっと横か この…この辺の… 「す~~~~っ……はぁ~~…いい匂い」 「……南風?」 「っ?!」 起きた! すっげぇ変態じゃね?! どうする? なんて言う? 「えっと…俺の匂い…気に入ってくれたの?」 「え?……そう…なんか、すっげぇ…いい匂いして…」 「南風も使ってる、シャンプーとかの匂いじゃなくて?」 「違う…なんか、この辺が特になんだけど…なんて言ったらいいのかな…嗅いだ事ないのに、安心するみたいな…」 「ふっ…よく分かんないけど…臭くないなら、良かった」 良かった 変態認定されてない 「紫月…もう少し嗅いでいい?」 「臭くないなら、いいよ」 「ん……臭くない…す~~~~っ…はぁ~~…落ち着く~~」 落ち着くと言いながら 気持ち的には、落ち着いたんだけど 紫月のフェロモンを、取り込んでしまったのか 俺の下半身は、落ち着くどころか ムクムクとやる気を出し始めた これは、マズイ 「ありがと、紫月」 「うん…南風、眠れなかったの?」 「ああ…俺、基本的に夜型だしね」 「そっか…向こうの物置き部屋、整理して使えるようにするね」 「いいよ。眠れなくたって、ここに居る方がいいよ」 「そう?気を遣わないで、言ってね」  「ん、ありがと」 話を合わせて、自然な感じで紫月に背中を向けた 結構ヤバいぞ 落ち着け~ 大丈夫だ~ 落ち着け~ 「ねぇ、南風…」 「っ…何?」 「男同士でも…出来るって、ほんとかな…」 「……え?」 なんか… そういう気分になってるから そういう質問に聞こえるんだけど… 「俺と南風でも…出来たりするのかな…」 「……えっと……出来ると言うのは…」 「……例えば…キスは…男同士でも…出来ると思うんだけど…」 「え?」 キス? キスは、そりゃ出来るだろ ってか… 「あ、ごめん…やっぱ気持ち悪…」 「いや、セックスだって出来るし」 「…えっ?!やっぱ、出来るの?!」 紫月が、勢い良くこっち向いた 驚きだ 紫月、そこに興味持ってたんだ 「…うん…出来るね…」 「そっか…出来るんだね…」 「えっと…紫月が、大丈夫なら…だと思うけど」 「俺?大丈夫って…どういう事が?」 「だからさ…相手が俺で、そういう事を受け入れられるかって事」 「それは大丈夫だと思うけど?」 え… 一切の迷いなし? 大丈夫かな なんか、ちゃんとイメージ出来てる? 「え~~っと…じゃあ、とりあえず…キスしてみる?」 「うん…南風…いい?」 「いいよ。俺は、大歓迎」 「ほんと?じゃあ……えっと…どっちがする側で、どっちがされる側にする?」 「……ふっ…ぶはっ!…それっ…聞かれたの初めて!」 「え…なんか…男同士だからと思ったんだけど…」 なんか、可愛い 紫月が、なんか可愛いぞ 「どっちでもいいんじゃん?したい方がすればさ」 「そっか…じゃあ、俺がしていい?」 「いいよ」 「えっと…じゃあ……やっぱ、少し明るくしていい?」 「ふっ…いいよ」 そんなん、手探りですりゃいいのに 絶対、慣れてない訳ないのに ベッドのヘッドランプ点けたりして かしこまってる紫月が、可愛い 「じゃあ、南風…」 そう言って ゆっくりと、紫月が手を伸ばしてきた う…わ…… なんか… めちゃくちゃ優しく触れてくる 俺の右頬の辺りを そっ…と触れてきて それから、ほんの少し擦る様にした それから、今度は右手で 俺の前髪を、少し避ける様にして そのまま、左の頬の辺りに触れてきて そして めちゃくちゃ優しい顔して、見詰めてきた なんか、まだキスもしてないのに ドキドキする なんちゅう触れ方すんの? こんな触れ方あるんだ めちゃくちゃ気持ちいい 俺が、目を閉じると ゆっくりと、紫月の唇が重なってきた 凄い… キスも、めちゃくちゃ優しい 軽く触れるだけみたいなキス ついばむ様なキス 舐めとる様なキス どれも…めちゃくちゃ優しい おかしいな こんなんじゃ、興奮出来る訳ないのに なんか、別の気持ちいいホルモンが めちゃくちゃ出てる気がする だってさ だって、なんか俺多分 ちょっと、ウットリしちゃってるもん 全然口ん中、侵入されてないのに なんか、だいぶ ウットリ気持ち良くなっちゃって まるで、酒に酔ってる気分だよ 「んっ…」 ああ、もうほら… 酔ってるからさ 紫月の左手が、少し俺の耳に触れただけで 気持ち良さそうな声、漏れちゃってるし だいぶおかしい どんな顔してる? 俺、どうなってる? すっかり、おかしくなってた俺は 自分の体への注意を忘れていた 「んっ…んんっ!」 紫月の左手が、耳から更に首へと移った時 「~~~~っ…」 なんか、もう すげぇ、感じちゃって そんで… 「~~~~っ!…んんっ!!………ん?」 キスされる前から、元気になってた俺のものは 俺に、すっかり忘れ去られてたけど どうやら、限界を迎えて 俺の許可もなく、達したらしい 「南風…?」 「…あ…イッた」 「え?」 「ぶくっ…ぶはっ!…くっくっくっ……イッた…イッちゃった…くっくっくっ…すっげぇ!紫月のキス、超気持ちいい!」 「え……えっと…ありがとう。良かった…のかな」 「良かった!こんな気持ちいいキス初めて!」 「南風……良かった…俺も…俺も、凄く気持ちいいよ」 紫月とのキスは それからも、ずっと気持ちいい  触れ方も あの時は、初めてだったからなのかなと、思ってたけど 今でも変わらない 指の1本1本 触れる時も、抱き締める時も 物凄く…紫月の気持ちが伝わってくる 「はっ…んっんっ…紫月っ…紫月っ…し…っ…~~~~っ!」 紫月が好き 紫月が好き 好きで…好きで…だから… 時々、大きな不安が押し寄せてくる 好きな人が出来ると 皆、これと闘うのかな それとも、俺と紫月だからなのかな 全然不釣り合いで 未来なんて考えられない そんな関係だからなのかな 紫月の居ない朝 何もやる気が起きない 目を開ければ、そこにある筈の紫月の頭が無い 寝てても感じる、紫月の気配が無い 紫月の匂いが残ってるのに 紫月だけが居ない 「…………っしゃ!起きる!」 今日も朝から、ラッキーだぜ こんな寒いのに、ぬくぬく過ごせて 食いもんの心配しなくて良くて 「な~~んにすっかな~」 お好み焼き たこ焼き ホットケーキに 石焼きビビンバ 「んじゃ…たこ焼き!」 たこ焼きを、レンジで温めながら 顔を洗う 紫月も、もう起きたかな 休みの日は、紫月もちょっとは、遅くまで寝てるからな 俺は、紫月が休みだと 嬉しくて、ついつい早起きするから 紫月が起きるまで、貴重な寝顔を見てたりする チン! 「いっただっきま~す……あつっ!」 ヤバ 旨そうな匂いに 猫舌忘れてた 「5分待ちま~す…トゥクトゥクトゥクトゥク♪︎たこ焼き~♪︎たこ焼きいい匂い~♪︎今すぐ食べたいたこ焼き~♪︎でもアツアツたこ焼き~♪︎」 「南風、もしかして猫舌なの?」 「そっか…ふっ…なんか可愛い」 可愛いのは、紫月だよ そう言って、嬉しそうに笑った顔 いつもと違う、可愛い顔になってるよ 「よし!改めまして~…いっただっきま~す……んっ…んまっ……冷食すげぇな」 「南風、飲み物も飲んで」 「ふっ…南風の美味しそうな顔、可愛い」 だって、紫月と食べてるから 紫月が、嬉しそうに傍に居るから 「ごっそ~さま~…っと」 ダメだ 勝手に紫月の事考えてるぞ 明日まで紫月は居ないんだから あんまり考えるな 「食器洗いま~~す!」 ヤバいヤバい なんか、今 思考止めてた筈なのに 泣きそうになったぞ 「アワアワ~♪︎いっぱい付けて~♪︎キュッキュキュ~♪︎キュッキュキュ~♪︎」 「食器洗ってくれて、ありがと」 「ん、ご褒美あげるよ…南風…」 ダメだ ここは… キッチンは、紫月が濃い場所だ 止めようとしたって 次から次へと 紫月が浮かんでくる 「っ……へへっ…ダメだってっ……~~っ…今から、こんなんで泣いてたらっ…っ…~~~っ…ムリっ…」 なんか、俺… 弱くなった? それとも、泣くって事思い出したから? 1人になった時、こんなん  あっという間に、メンタル崩壊だろ それとも、1人になったら またちゃんと、強くなれんのかな 気を紛らわす様に 掃除して、歌って…… だけど、何処で何してても 紫月が出て来て 俺のメンタルの振り幅、だいぶヤバい ヴヴ あ…紫月だ! 『早く帰れる事になったよ』 『今から帰ります』 え? 今から? 「え……ほんとに?」 今から紫月が帰って来る 紫月が、ここに 戻って来る 「紫月…~~っ…紫月っ…」 紫月に会いたい 紫月に触れて欲しい 紫月に見詰めてもらいたい 紫月にキスしてもらいたい 紫月に…… 多分、ほんとは 紫月となら、セックスなんてしなくても、幸せ感じて居られると思う だけど、そんなのには慣れたくなくて だって、そんなのに慣れたら 紫月と離れた時、どうしたらいい? セックスは気持ちいいんだって セックスで満たされるんだって 紫月とみたいな極上じゃなくたって 誰とだって、少しの間は…… 「タツヤ、覚えときな。何事も経験。だけど、経験まででやめとけ。どっぷりと浸かった時…その先は地獄だ」 こんな人生でも まだ、最期にする覚悟なんてない 何もかも違う紫月に、どっぷりと浸かった先… 俺は、まだまだ続くであろう、ろくでもない人生を ほんとに地獄だなと、笑いながら生きていけるだろうか 「逆に、何もかも捨てたくなったら、人生最期の快楽…存分に味わえよ」 人生最期の快楽は その時が来たら、選ぶもんだと思ってたのに 俺は… 知らない間に、選択権どころか 他の選択肢すら、失くしてしまってたらしい

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