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第15話
「げっ……マジか~。どうする?雨宮」
「どうする?って…」
ちょうど、使い勝手のいい年代なのか
俺と秋月は、めちゃくちゃ気が合うと、思われてるのか
そんなに多くはない、外回り的な事を
秋月とセットで行かされる事が、少なくない
ま、気を遣わなくていいから、いいんだが
こいつは、時々
大雨男を発揮する
「昼休みの休憩だって、近くの食堂行ったりするだろ。なんで、その時は雨降らせなくて、こういう時に、どしゃ降りなんだよ」
「いや…なんでと言われましても…俺だって、雨降って欲しくないし…」
「はぁ…」
今朝出掛ける時は、晴れのち曇りだった
なのに、今は……
「夜中まで、降水確率90%……どういう事だ」
「睨むなよ。俺1人の力で、こんなん出来るなら、とっくに会社辞めてるって」
「とにかく…近くのコンビニ行って、傘買って…」
どうにか、ビショビショになりながらも
駅まで辿り着いた
「なんか…すげぇ人じゃね?」
嫌な予感しかしない
すぐに、バスを調べてると…
「うわぁ…雨宮、雨宮。いくつか、電車停まってるって。風も結構強くなってたもんなぁ」
何を呑気に…
バス…
行き先…
バス停…
「なぁなぁ。どうせ明日休みだしさ。どっか近く泊まっちゃう?」
「……は?」
「これ、絶対駅から出るまで、すっげぇ時間かかるって。最悪、駅に宿泊だって」
「俺は、何としても帰る。お前は、好きにしろ」
「酷い!冷たい!同期との、プチ旅行だぞ。ちょっと位楽しんでもいいじゃん!」
何がプチ旅行だ
少しばかり遠くまで、仕事しに来ただけだ
そう…
遠くまで来てしまった俺は
早く帰らないと…
「紫月……紫月の家だから…紫月……紫月……」
また…
南風に、あんな思いさせる訳にはいかない
とりあえず、バス停
それでダメなら、タクシー
「あ、おい!雨宮ってば。置いてくなよ~」
秋月の事など構わずに
片っ端から、帰る方向へと向かうバス停へと向かったけど
既に、明日の朝まで並んでるんじゃないかという行列…
「こりゃ、タクシー乗り場も同じだな…って、おい!」
そんな簡単に、諦められるか
1台でも…
どんなタクシーだっていい
「こりゃ、無理だな」
どうしよう
次の駅まで歩いたとして、状況は変わらないだろう
3つ位先の駅まで行ってみたら…
「…と、いう事で…紫月…俺と過ごす初めての夜だね…」
「冗談…俺は帰る」
「は?だから、帰れないんだって」
帰れなくたって帰るんだよ
何処までだろうが、タクシー捕まるとこまで歩いて
そしたら、夜中には帰れるかもしれない
「おい、雨宮!」
「何だよ?急いでるんだから、手を離せ」
「何処行くんだよ?」
「だから、帰るんだって」
「どうやって?」
「とにかく歩く。タクシーでもバスでも、何かに乗れるとこまで歩く」
「は?!そんなん、何処まで歩く気だよ?!」
うるさいな
南風にも、とりあえず遅くなるって連絡しなきゃ
今日は、このまま直帰で
なんなら、いつもより早く帰れそうだったのに
とにかく、まずは駅を出て…
「ちょっ…待てって!」
「っ…何だよ?急いでるから、離せって」
「いや…お前、大丈夫か?交通機関止まるくらいの天候なんだぞ?そんな中、何処までかも分からず、歩くって?正気かよ?」
「…正気だ。だから、離してくれ」
1分でも早ければ、何かに間に合うかもしれない
南風が…
南風を泣かせてしまう
「分かった」
「じゃあな」
「分かったから、待て」
「っ…ほんとに急いでるっ…」
「近くに知り合いが居る。連絡してみるから」
「……え?」
どうやら、近くに居る秋月の知り合いが、迎えに来てくれるらしく
わざわざ俺達を、送り届けてくれるらしく
俺達は、待ち合わせ場所へと向かった
これから車で…
まぁ、ちょっと帰り遅いくらいか
『帰るの、少し遅くなりそう』
あの事があってから
俺は、帰りが遅い時、なるべく連絡する様になった
多分、大丈夫なんだろうけど
ほんとは、少し大丈夫じゃなくなってたのか
どの位までは、ほんとに大丈夫なのか、分からないから
「大丈夫か?」
「?…大丈夫かって?秋月こそ、全く関係ない俺の事まで頼んで、大丈夫なのか?」
「俺は大丈夫。あいつには、貸しが溜まりまくってるからな。それより、彼女…具合悪いとかなのか?」
「は?なんで…別に?」
「いやいや…こんな天気の中、歩いてでも帰るってさ…しかも、この雨宮がだぞ?絶対、彼女に何かあったんだろ」
ああ…
まぁ、そうなるか
「いや…今は、まだ大丈夫だ」
「そっか…道、少しでも空いてるといいけどなぁ…何時に帰れるかなぁ…」
「……そ…だな…」
秋月の、この言葉を聞くまで、考えてなかった
そりゃそうだ
俺達と同じ様な人間が、どれだけ居ると思ってんだ?
必然的に、道路は混むに決まってる
「ん?まさか、考えてなかったのか?」
「………」
「マジで?!あの、何考えてるか分かんないのに、何でも考えちゃってて、隙のない雨宮が?!この状況で、普通に帰れるとか思ってたの?!」
一言も言い返せないし
この、信じられない状況を、信じたくない
「お前、ほんっと彼女の事になると、別人だな?可愛い奴め」
「頭撫でるな」
仕方ない
遅くなると連絡しよう
けど…
なんか、遠く離れたとこに居るってのは
不安にさせる気がして
『ごめん』
『やっぱり、結構遅くなりそう』
南風も、まだバイト中なのかな
今日は、また南風と鍋作って食べようと思ってたのに…
あ、既読になった
『バイト終わって、これから帰る』
『なんか、弁当買っとく?』
『じゃあ、お願い』
『何系がいい?』
『南風と同じのでいいよ』
『了解!』
「ふっ…可愛い……っ?!」
スマホの上に
急に、秋月の顔が出てきた
「すっげ~~…」
「何やってんだ…」
「雨宮のデレ顔見てしまった」
「…そんな顔してない」
「してたしてた。お前…その顔、人前でしない方がいいぞ」
「お前に関係ない…」
どんだけ、だらしない顔になってたんだ?
ちょっと、南風の事しか考えてなかったからな
「俺は別にいいけどさ…こんな状況なのに、皆一瞬お前見ながら歩いてたぞ」
「………そんなに?」
「そんなに。だから、気を付けろ。まだまだピチピチなんだから、さらわれるぞ」
「……は?急に何の話だよ?」
「格好いいが、可愛いを見せた瞬間、誘拐事件が起こるかもしれない話だ」
「……あっそ」
ほんとに、こいつは
時々、日本語を使いながら、知らない言葉を話し出す
「あっ!来た来た!」
そうして俺は
とりあえずは、南風の待つ俺の家へと帰る為の車に、乗り込んだ
話によると
秋月の妹の友達という、さなと呼ばれるその人は
秋月の妹と幼馴染みらしく、もはや、秋月のもう1人の妹みたいなものらしく
大学やら、就職やら、何から何まで秋月が世話してきたらしい
「さなが、運転免許取ってて、車買ってて良かったでしょ?」
「その車買うのに、色々見たいからって、あっちこっち連れてった挙げ句、身の丈に合わない、この車がいいんだって、お前の親説得したのは誰だっけ?」
「ゔっ……その節は、本当に感謝しております…」
ほんとに、兄妹みたいな関係なんだな
しかし、だったら
なんで秋月、助手席じゃないんだ?
こいつが助手席なら、後部座席にゆったり1人だったのに
それにしても、この車
女が好きそうな、甘ったるい匂いが充満してる
しかし、こんな天気の中、全く関係ない俺まで乗せてもらって
苦手な匂いだなんて言えない
そんな思いを抱えつつ
兄妹漫才をBGMにしてたら
俺は、いつの間にかウトウトしていたらしい
カクン…と、首が重力に負けた衝撃で、目が覚めた
他人に運転させておいて、寝てたとは……
「っ?!」
「あ…目覚めちゃった」
俺の顔の
約10cm位の距離に、秋月の顔がある
「な……は?」
「お前、寝顔も、目覚めも美しいのな?」
「は?……大丈夫か?お前」
「大丈夫。めっちゃ、いいもん見れて元気出た」
「俺…結構寝てた?」
「いや?一瞬落ちた感じ。すかさず観察した」
「……なんで」
「そりゃ、お前…雨宮 紫月の寝顔だぞ?ほんとは撮っときたかったけど、そこはグッと我慢した」
「………あっそ」
ほんとに、こいつの頭ん中
どうなってんだろ……
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