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第18話

「紫月……パンツ…履きたい」 そう言った俺に 焦った様に、俺のパンツを手にして 「ごめん!ごめんね、南風」 迷惑かけてんのは、こっちなのに 必死にパンツ履かせてくれる紫月が なんか、面白くて……嬉しくて… ヤバ… なんか、また涙出そうになってきた この状態で泣くのは さすがに、命の危険を感じるぞ まだ、完全には動いてない頭で、そんなん考えてたら 紫月が、テキパキと動き出した 「南風、暖房止めるね」 「南風、ちょっと頭冷やすよ」 「南風、寒過ぎない?」 何処から引っ張り出したのか ハンディサイズの扇風機持って来て 俺の体に風を送ってくれる 「大丈夫…風呂から出たんだし、すぐに落ち着く」 「~~っ…まだ、頭痛い?苦しい?」 「紫月…のぼせただけで…そんな顔すんなよ」 「だって…俺の目の前に居たのに、気付けなかった…南風…俺のすぐ傍で、具合悪くなってた…」 「そんなん…俺が気付いてないんだから…紫月が気付けるかよ…」 「でも…苦しくなる前に気付きたかった」 多分、きっと スーツ着て働いてる紫月は こんな顔、見せないんだろな 多分、きっと 会社でバリバリ働いてる紫月は あんな焦って、動揺しないんだろな そんな紫月を 惜し気もなく 躊躇なく 全部見せてくれるのが 嬉しくて…安心する…… 「南風…少し楽になった?」 「……なった。俺、寝てた?」 「少しだけね。もう、苦しくない?寒くない?」 「んん~~~~っ…はぁ…頭スッキリ。苦しくない」 「良かった…お水飲めそう?」 「うん……っしゃ!…っ」 思いっきり勢い良く起き上がったら 世界が回った 「南風!いきなり起きたら、危ないよ!」 「ごめん…うわ…まさに目が回るだわ、これ」 「感心してる場合じゃないよ…まだ回ってる?」 「……もう大丈夫」 「はぁ~…お水飲めそう?」 「うん!」 後ろに倒れそうになった俺を、受け止めた紫月が ゆっくりゆっくり、慎重に離れて 何度も振り返りながら、水を取りに行く のぼせただけなのにね 俺が調子こいて、勢い良く起き上がっただけなのにね 嬉しいを詰め込まれ過ぎて 長い長い夢でも、見てるんじゃないかって思う 「はい、南風。ゆっくりね」 「あんがと。んっ……んっ…んっんっんっ…ぷは~~っ!生き返った!」 「ほんとに?もう大丈夫?」 「平気平気。最初は俺も、のぼせてるって思ってなかったから、苦しいわ、心臓バクバクしてるわで…っ……紫月」 「~~っ…南風っ…南風っ…」 「うん……心配かけて、ごめん」 普段は、物凄くしっかりしてるのに きっと、めちゃくちゃ頭いいのに 俺の心配すると 小さな子供みたいに、甘えてくる事があって それが 堪らなく可愛いくて、嬉しくて 抱き付いてきた紫月を、抱き締め返して 俺に、そうしてくれてたみたいに 優しくナデナデする ナデナデ… 大好きな紫月の髪… ナデナデ… 冷たくて、気持ちいい… ………ん? なんで、冷たいんだ? なんで……って 「紫月!」 「っ…何?」 「髪!乾かしてない!」 「うん…もう、乾かして大丈夫そうなら、乾かしに行こう?」 「じゃなくて!俺は、暑かったからいいけど、紫月…暑くもないのに、濡れたままで冷えてる!」 「そんな、言う程冷えてないよ」 気持ちいい位、冷えてるし あれ? 待てよ… 「南風、暖房止めるね」 暖房! 「紫月、暖房!暖房つけた?!」 「まだだけど…そろそろつける?」 「つける!」 風呂上がりに 髪濡れたままで 暖房切ってたら… 「つけたよ。南風、寒くなってきた?服着よっか」 「俺じゃなくて、紫月!紫月、すっかり…っ?!冷たっ!!」 「え?」 「紫月の手!めちゃくちゃ冷えてんじゃん!」 「そうかな…緊張してたからじゃない?」 「緊張……とにかく髪!髪乾かそ!」 「そうだね」 笑ってる場合じゃないよ、紫月 俺の体の事ばっか考えて 紫月の体の事考えんの、忘れてるよ すっかり復活した俺は これでもかってくらい、紫月の髪を、乾かしまくった そんで、別にもう俺の髪なんて、乾かさなくてもいいけど 紫月の手をあっためる為に、俺の髪も乾かしてもらった 「やっと、落ち着いて寝られるね」 「紫月、もっとくっ付いて。首、冷たいし…足なんか凍ってるみたいになってる」 「すぐにあったまるよ…」 「紫月、寒くなかったの?」 「全然…南風の事で…頭いっぱいだったから…」 「ごめん…ありがと」 「ん……良かった……」 珍しく、俺より先に紫月がウトウトしてきた そもそも今日は、大変だったんだもんな なのに、帰って来てからも、俺に振り回されて すっかり冷えた体が、あったまったら 眠くなるよな 「おやすみ…紫月」 「ん……おやす………なぉ…」 「ふっ…可愛い…ちゅっ…」 そんなこんなで 色々あった夜は更け 翌朝目覚めた俺は 朝も、なかなか起きない紫月を堪能して 堪能して……… 「紫月?」 起きないのは、いいけど なんか…変じゃない? すっかり、俺の胸の中に収めてしまってた紫月を、出してみると… 「はぁ……はぁ……」 「っ?!…ごめん!苦しかった?!」 そんな、きつく抱き締めてたか? それとも、暑かったのか? 「……なお」 「っ?!…紫月…声、どうした?!」 「……んんっ…喉…痛い」 「え?喉痛い?」 「ん……風邪…引いたかも…」 「え?……風邪」 風邪…引いたら…… どうすんだっけ? 「ヤッベ~…風邪引いたわ。酒飲も酒」 「マジで、風邪だわ。だる~…誰か、ぶっ飛ぶクスリ持ってない?」 酒? クスリ? いや…そんなん、まともじゃないよな 「なお…」 「っ…ごめん、紫月…俺、風邪引いた人の看病した事ないんだ。どうすればいい?」 ほんの少し、大きく目を開いた紫月が また、目を細めると 「水とね…風邪薬を取って来てくれる?」 掠れた声で、そう言った なんで… こんな時、役に立たないって分かったのに 紫月は、嬉しそうな顔をしてるんだろう 紫月に言われた場所を探すと ちゃんと、色んな薬が入ってる引き出しがあった こんなん、あったのか 凄いな 「紫月、水と風邪薬…これでいい?」 「ありがと…こほっ…こほっ…」 「喉…辛そう…」 「俺、風邪引くと…すぐ喉にくるから。南風…マスク持って来て?南風もして?」 風邪薬って、喉にも効くもんなの? 風邪…俺にはうつんないよ? でも、一言でも喋って欲しくなくて、大人しくマスクを持って来る ってか… 起き上がるのも、めちゃくちゃだるそう 「紫月…なんか、元気出るものないの?」 酒とか、ヤバいクスリじゃなくて こういう時、普通は何を体に入れるんだ? 「……南風」 「何?」 「南風…見てると…元気になるよ」 「っ…嬉しいけど!そういうんじゃなくて!なんか、酒とか……ちゃんと元気になれるやつ!」 「ほんとなんだけどな…薬効いてきたら、ちゃんとご飯食べるよ……南風、先に食べてて…」 「……分かった」 もう、目を閉じてしまった紫月を残して ソファーに座って、検索する 喉 風邪 何する? どれどれ…… 水分…は、紫月が起きないとな 部屋を加湿…は、紫月が加湿器つけてくれてるし 喉を潤す…これだ! のど飴、ハチミツ、トローチ… 買いに行こう! 「紫月…買い物行って来るね」 そっと、様子を伺いつつ声をかけるけど 紫月はもう、すっかり夢の中だ ヨシ! いつも、迷惑かけて、世話かけて こんな時くらいしか、返せないんだから ってか、そもそも俺のせいで風邪引かせたんだし めちゃくちゃ頑張るぞ コンビニ行って、のど飴とハチミツ買って トローチは、さすがに置いてなかった 目が覚めたら、これで喉を潤して 「ただいま、紫月…」 辛そうな顔して寝てる ハチミツ…喉に流し込んであげたい 「えっと~?あとは、なんだ?」 喉に優しい食事… そっか 普通の食事だと 飲み込むの、痛いのか おかゆ…うどん…ゼリー… 「買ってくれば良かった…」 おかゆ…コンビニで売ってんのか? うどんは、カップ麺でいいのか? ゼリーは、売ってるよな スーパーまで行けば、ドラッグストアもあるけど… それなりの時間、紫月を1人にしといて、大丈夫なの? 紫月の大丈夫が、俺には分からない 「紫月、ちょっとまた行って来るね」 超超ポジティブ思考の俺が 紫月の事になると 超マイナス思考になってしまう 気付くと、すぐに 俺じゃなかったら… そう考えてしまう 「紫月…なんか、元気出るものないの?」 「……南風」 「南風…見てると…元気になるよ」 元気のない、掠れた声で言った紫月の言葉が 俺に力をくれる ゾウさんの下で、訳分かんない歌歌ってた俺を、好きになってくれたんだ 皆と同じじゃなくていい 俺に出来る事を、俺らしく それが、きっと 変わってる紫月を、元気にする方法だから

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