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第19話
久しぶりに、風邪を引いた
いつも、おかしいかな…って、感じた時点で対処してたから
久しぶりの体の不調を感じつつ、目覚めたら
大好きな南風が、めちゃくちゃ心配してくれた
「ごめん、紫月…俺、風邪引いた人の看病した事ないんだ」
風邪引いた人の看病した事がない
どうすればいいか、分からない
それは
看病された事もないって事?
一瞬、少し悲しい気持ちになって
それと同時に
「どうすればいい?」
そう聞いてくれた南風に
嬉しくなった
看病を知らない南風が
初めての看病、してくれようとしてる
薬を探して、水を汲んで持って来てくれるだけなのに
気持ちが、あったかくなる
せっかくの休日
さっさと薬飲んで
さっさと元気になって…
南風と……いっぱい………
………朝?
あったかい…
南風……
?
南風?
重たい瞼を上げてみると………
南風が居ない
南風の温もりだと思ってたら
ただの布団だった
一瞬固まって
すぐに思い出す
朝じゃない
そうだ俺…
風邪引いて…南風は、もう起きてて…
いつもより、何倍も重たい体を動かして
ベッドから出て行くと
南風の金髪がソファーに見える
それだけで、少しほっとして
南風に声を掛けようとすると
南風が、めちゃくちゃ真剣な顔して、スマホを見ている
鼻歌を歌うでも、楽しそうでもなく
凄く真剣な顔…
俺が近くまで来ても、気付かない位の…
「南風…」
「っ?!」
「何かあった?大丈夫?」
「紫月、起きたんだ。少しはマシになった?」
「うん…それより、南風…」
そこまで言って
南風の前のテーブルに広げられた物が、目に付いた
テーブルの上には
のど飴、ハチミツ、お粥、うどん…
「一応、必要そうなの調べて買ってみたんだけどさ、あと何かあった方がいい物ある?」
「…南風…調べて買って来てくれたの?」
「うん。ほんとは、レトルトじゃない方がいいんだよな?けど、おかゆの作り方見てたけど、俺に成功出来るとは思えっ……紫月?」
真剣な顔して
お粥の作り方調べてくれてた
俺が寝てる間
分からないから、調べて
これ…買って来てくれたんだ
「ありがと……ありがと、南風」
「…ちょっとは、役に立ちそう?」
「凄く役に立つ……でも、それより…南風の気持ちが、いっぱい詰まってて…っ…元気になるっ…」
「気持ちだけなら、いくらでもあげれるから…早く元気になって」
「うん……ありがと…」
風邪引いて看病なんて
今まで何度あっただろう
何人に、されてきただろう
こんなに、嬉しいのは
こんなに、気持ちがいっぱいになったのは
初めてで
南風と抱き合ってるだけで
重くてだるかった体が、軽くなっていく
好きって、凄いんだな
どんな薬より効き目あるよ
俺が顔を洗ったりしてる間に
南風が、お粥を温めてくれて
「うわっ!あちっ!」
「南風?大丈夫?」
「大丈夫~!…えっと~?…ここか…よ~し…出て来い出て来い……まだ居るんだろ?ほら、出て来い…」
お粥、用意してもらってるだけなのに
南風の声聞いてるだけで、楽しくなる
「…っしゃ!出来た!紫月、何飲む?」
「そうだなぁ……」
「あったかいの飲む?お茶のティーバッグ買って来たよ」
「南風…そんなのも買って来てくれたの?」
「うん。常温~あったかい飲み物がいいって書いてて…何がいいか分かんないから、コンビニで売ってたやつだけど」
「南風…」
ほんとに、一生懸命調べて準備してくれたんだっていうのと
ほんとに、全然そういう事…されてこなかったのかなって過って…
キッチンに居る南風を、抱き締めた
「やっぱ、具合悪い?」
「ううん……南風から、いっぱい貰い過ぎて…胸がいっぱいになってる」
「ほんと?良かった。お粥、冷めちゃうよ?」
「ん、そうだね」
そうして、俺は
人生で一番美味しい卵がゆを食べて
南風が用意してくれた、あったかいお茶を飲んだ
「ご馳走さまでした」
「紫月、プリンとヨーグルトとアイスもあるよ」
「南風…いっぱい調べてくれたんだね」
「実は、3回コンビニ行って来た」
「えっ?」
「効率悪いよな~。俺の頭ん中、な~んも入ってないから、仕方ないんだけど」
3回…
帰って来て…調べて…
また、コンビニ行って…
さっきの、南風の真剣な顔を思い出す
こんな…
全然、ちょっと風邪引いただけなのに
「南風……ありがと」
「全然だよ。せっかくだから、いつも紫月から貰ってる分、まるっと返したいとこだけど、全然返せないや」
「返して貰ってる…毎日貰ってる…」
「…ありがと、紫月」
南風が居るだけで
南風の顔見るだけで
南風の声聞いて
南風に抱き締めてもらって……
それだけで……
「紫月…風邪引いたの?」
「ん……こほっこほっ…おかえり…紫 」
「大丈夫?熱あるの?」
「病院行って…こほっこほっ…薬飲んだから…」
「お母さん、帰って来たの?!」
「…ん…でも…病院終わったら…シッターさん来て……行っちゃった」
「…そっか……大丈夫だよ、紫月。僕が居るからね」
大丈夫だよって笑ったけど
母親が居ると、俺の何倍も紫は嬉しそうで
だから、きっと
俺の何倍も寂しいのに、優しくしてくれる嬉しさと
寂しいとは思うけど
紫の様には思えない、自分の奇妙さと……
「紫月、寒くない?ベッド戻らなくていい?」
「薬飲んだし……南風の傍に居るのが、一番元気になれる」
「じゃあ、俺も一緒に横になるからさ…ベッド行って休も?」
「ん…」
紫は
毎日、長い時間一緒に居る訳ではなかった母親に
これを感じてたのかな
「紫月、マスク外しちゃダメ?俺、きっと風邪うつらないよ?紫月も外して?」
こんなの感じてたら
そりゃ、母親が帰って来たら
嬉しくて抱き付くし
居る間、まとわり付くし
居なくなったら、寂しかっただろう
「紫月…口以外なら、キスしていい?」
こんなの知ってたら
まだ、あんな小さな頃に知ってたら
紫は、どんなに寂しかっただろう
もしかしたらだけど……
そんな紫を思って、俺を生んだりしたんだろうか
紫が、少しでも寂しくない様に……とか……
そんなの、考える様な人達だろうか
たまたま、できてしまったとか
一応、長男だけじゃ心配だからとか
そんなんだとは、思うけど
もしも、紫を思ってだとしたら
なんだか、自分が
あの家族の中で、少しは価値のある存在の様な気がしてくる
「んっ…」
「ごめん。紫月、鎖骨の辺り弱いもんな?」
「南風……南風は…俺のどんなとこが好き?」
何、聞いてんだ俺…
熱でもあるのかな
「紫月の?…う~~ん……」
「ふっ…思い付かなかったら、いいよ」
「そうじゃなくて、計算中」
「計算?」
「紫月の好きなとこなんて、言い出したらキリがないよ。何時間位かかるかなぁ…って」
「……ふっ…そんなにある?」
「あるよ…だって、どんどん増えてくもん」
皆が、こうなのかは知らない
だけど、俺は極端にこれを知らなくて
多分、紫は
極端にこれを感じてた
「南風…好きだと思う数…印付けて?」
「……それは、また今度。そんなん、紫月の全身何周もするだろ?また風邪引く」
「じゃあ…キスして?」
「いいの?」
「いい…明日1日看病するから…1日で治して?」
「……ふっ…了解」
甘えてるんだな、俺
こんな無茶苦茶な事言って
絶対やめた方がいいのに
南風の前だと
幼かった自分より、幼い自分が居る
それでも幼い頃は
それなりに甘えてたと思う
家族で過ごすの、楽しいと思ってた時期あったと思う
だけど、それを表現するのが
俺は極端に下手で
多分、全然可愛げのない子供で……
返して…貰えなくて……
そのうち、別に欲しくもなくなって…
そうだったな…
ずっと返してくれたのは
紫だけで……
そっか…
俺が先だったのか
俺が、これを感じないで、表さなかったから
あの人達も、欲しくないんだと思ったのかな
俺が、紫みたいだったら
もっと、違った家族になれてたのかな
そうしたら、俺の世界は変わってて…
紫みたいに、親の会社で働いて……
…たら、南風に出逢えなかったんだ
「んっ…南風…」
「ん?もう、やめとく?」
「もっと…もっと、南風のキス…欲しい…」
「……了解」
南風に出逢えなかったら
これ、貰えなかった
どっちが良かったかだなんて、知らない
でも今、俺が凄く幸せなのは知ってる
生まれて初めて、生んでくれた事を親に感謝する
たまたまでも、親の考える保険の為でも、紫の為でも
生んでもらったから、南風に出逢えた
「んっ…南風…好き…」
「俺も好きだよ、紫月」
「南風……好きで………好き……だから……」
「ふっ…紫月、寝ていいよ」
南風が、瞼にキスしてくれて
優しく胸の中に入れてくれたら
俺は、数秒で眠りに就いていた
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