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第20話

「もっと…もっと、南風のキス…欲しい…」 「南風……好きで………好き……だから……」 紫月が、多分甘えてくれてる 眠いの我慢して ちょっと、寝惚けてるのかな 我慢しないで、寝ていいよ 瞼にキスして、胸の中に入れたら あっという間に、寝息を立て始めた 2回目に買いに行ったお粥食べて 3回目に買いに行ったお茶飲んで 3回コンビニ行った甲斐あったかな きっと、紫月だったら 1回の買い物で、もっとマシな物買って来れるんだろうけど ほんとに、嬉しそうにしてくれたから 「ありがと…紫月」 あれ? ここ…どこだ? 真っ白で……何にもない… 何すればいいんだっけ? 何……してたっけ? 別に何も……してないか じゃあ、ここで…こうしてていいのか する事ないもんな しなきゃならない事……ないもんな あ……そうだ 思い出した この感覚…知ってる 前にも、ここ…来た事ある そうだ 真っ白で……何にもなくて…… っ…… 立ってたはずの足元も… 何にもない事に気付いてっ… 急に足元がっ…何にもなくなる 落ちてるのか…浮いてるのか… 何処かに落ちてくのか 永遠にこのままなのか… 何にもない 確かにあったはずのものが… 自分さえ…何もない 目を閉じてるのかと思ったら その目すらあるのか分からない 俺は…居るのか? 居ると思ってただけ? なんか……存在すると思ってた… けど、何にもなかった 何にも… 俺は存在しないものだった じゃあ…… この気持ちは何なのかな 泣きたくなる、この気持ちも 勝手に作り上げた ほんとは何もないものなのかな…… じゃあ、何も考えない どうせ、何を思っても何もないんだ すぐに…何も思わなくなる だって、そう思う俺は存在しないんだから…… 「○○…」 ? なんか今……… 「○○……○○○○?」 なんか聞こえるのは… 気のせい? 「○○…○○○」 まるで、存在しない俺に 何かしてる人…居るみたいな… 何もないのに? 「○お…」 っ…… 何? 胸が……苦しい なんで? そう思ってるだけ? 「なお…聞こえる?…俺だよ…」 ~~~~っ… 苦しい…苦しいよ… やっぱ、ちゃんと苦しい 俺…居る… 「目、開けて?俺が居るよ?此処に俺…居るから…」 ~~~~っ… 「っ…紫月っ…」 「南風っ…分かる?…俺の事、見えてる?」 「~~~~っ…見えてるっ…紫月っ…」 「うん……南風っ…南風っ…」 一気に目が覚めて さっきのが夢だって自覚した途端 今、泣きそうになってる自分に可笑しくなる あり得ない夢に、どんだけ怯えてたんだ? 「ごめん、紫月…ちょっと寝惚けてた。もう大丈夫」 「うん……でも、抱き締めてていい?」 「それは、嬉しいでしかないから、いいけど…紫月、具合は?風邪治った?」 「治った…大丈夫……南風は?ほんとは、俺に相談したい事とか…辛い事あった?なのに、昨日色々あって言えなかった?……南風…何かあった?」 あれ?これ… めちゃくちゃ心配かけてるぞ 俺、目覚める前に何か言ってたか? 「何もないよ。俺、なんか寝言とか言ってた?」 「……目が覚めたから…南風の顔見てた…」 「ふっ…そうなの?」 「そしたら、南風……急に涙流し始めた」 「えっ?……あ…泣いた…のか」 「でも、南風……悲しそうな顔も…辛そうな顔もしてなくて……目も…ちゃんと閉じてないみたいな……なんか……なんか……南風が人形みたいに見えて……怖かったっ…」 人形か… 人形ですらなかったけどな でも、ちょっと似てるのかも ここに存在してるのに、認識してもらえないみたいな 居ても居なくても変わらない まるで… 存在してると思ってるのは、俺だけみたいな… 「南風っ…」 「え?」 ちょっと、夢ん中の俺になりかけたら 紫月に体を離されて ちょっと怒ってる紫月の顔があった 「俺の声…聞こえてたら、ちゃんと返事してよ…」 「ああ…ごめん」 「俺の顔…見えてるの?」 「見えてるよ」 「じゃあ、もっと見て…南風からも、なんか言ってよっ…南風っ…ちゃんと俺の隣に居るって、確かめさせてよっ…」 「紫月……うん…ごめん」 夢の内容なんて、言ってないのにな あんなん、口に出すのもアホらしくて だけど俺は、あれを何度か見た事があって その度に… 夢の中で、結構な絶望感を味わう 「んっ……南風っ…んっんっ…南風っ…」 「紫月……居るよ……ちゃんと、紫月の隣に居る」 目覚めたら 訳の分からない夢に、何をそんなに打ちのめされてんだ?って 自分自身に可笑しくなってきたけど 「んんっ…はぁっ…南風っ…もっと…」 「…じゃあ…もっと紫月の中、ちょうだい」 なんだか分からない、そんなものを 紫月に、少し感じさせてしまったのかな 俺だから、何となく分かる ここに居るのに、認識してもらえない 一番近い人に認識してもらえないのは 自分が存在してるのか、分からなくなる事がある いや… 単純に、幼な過ぎて 世界も、小さかったからなんだろうけど 多分、俺の奥底にそれがあるから 皆と同じ場所に居るのに 視線、話し方… なんか、そんなんで 俺は、認識してもらえてないのかな… なんて感じる事があって… 「んっ…ふぁっ……はっ……んんっ…」 きっと、確実な何か 絶対に安心出来る存在みたいのが、なかったからなのかな 「んっ…あっ?!」 「ふっ……ほんと紫月、鎖骨弱いな?」 「いきなりは…びっくりするよ」 「んん~~?ほんとに、いきなりだからかな~?」 「南風…今は…口がいいから…」 「今は?じゃあ、口…首…胸…の次にしよっと」 「えっ?……えっと…あんまり、俺が意識してない時ならいいよ」 「ぶはっ!いきなりは、ビックリじゃないのか?」 「あ…そうなんだけど……」 不安定で 不確実で 明日、どんな場所で、誰と居るのか ここなら大丈夫 この人なら大丈夫 そんなの、何もなかったから 「紫月…きっと、もう大丈夫だ」 「え?それは…俺が、大丈夫かどうか感じる事じゃないの?」 「あ?…あはっ!…そっか…そっちの話だったわ!」 「そっちの話って?南風…俺と居るのに、誰との話考えてたの?」 「……誰でも…誰も居なかったから……でも、今は紫月が居る。だからさ…きっと、そのうち…あの夢見なくなる」 紫月が居れば安心 紫月の隣にいれば大丈夫 ずっと、ここに居れるとは、まだ思えないけど こんなに安心する場所、初めてだから 「……俺が一緒に居たら…南風…もう、あんな顔して泣かなくなる?…ほんとにっ…ほんとに怖かったんだよっ…」 「ん……怖いよな?…うん……あり得ない夢なんだけど…夢の中では、ちゃんと怖いからな…俺の怖い夢で…紫月まで怖がらせてごめん」 「知らない南風、知りたいよ…だけど……ちゃんと俺…見てくれないと…俺の知らないとこじゃ…」 「ん…紫月の隣じゃないとな」 この、俺の何倍もしっかりした人が こんな事言って、甘えてくれるから 人に甘えられるって… なんか安心するんだな 「南風……」 「お?」 「南風…南風…」 「ふはっ…くすぐったいよ、紫月」 「南風…南風…」 紫月が、俺の胸にグリグリ頭擦り付けてきて そのまま、首筋にキスして 腰の辺りから、触れてきた 「んっ……甘えたフリして…攻めてきた」 「南風に…いっぱい俺…覚えておいてもらう」 「ん…いっぱい教えて?…夢の中でも、忘れられないくらい…」 「南風の全部…見せて…」 「いいよ…紫月に全部あげる」 どんな顔も、どんな格好も 俺が恥ずかしいと思ったところで 相手は、そんなヤツ居たかな?ってすら、覚えてない位、通りすがりな訳で その時、気持ち良けりゃ その時、必要な金や物が手に入れば 別に、何見られたって、どうでも良かった 「南風…寒くない?」 「ん…でも、あっためて?…熱くして?」 だけど、紫月には違う 知られるのが、怖いのに 不安だらけなのに 確認してしまう これが俺だよ? 紫月とは、全然違うよ? これでも、いい? ほんとに? 「南風…」 「んっ……気持ちいっ…」 ビックリする事、いっぱいだろ? それでも? 幻滅しない? ガッカリしない? 「南風…こっちも…」 「あっ……ふっ…本格的に元気になっちゃうよ?」 「いいよ…南風の全部貰うんだから」 どんなに優しくたって 全然違い過ぎて、未だに未来を信じきれないのに 何処かで信じようって思えるのは 「っ……気持ちいっ…」 「胸も欲しい?」 「ど~かな~…今日の俺は…どこが欲しいでしょ~?」 「今日の南風……耳?」 「あっ!耳はダメ!ダメダメ!」 こんな、ふざけた俺なのに ずっと、楽しそうで嬉しそうで 何より… 「えっと……そこで…何してるの?」 出逢いが… 「もう少し聞きたいんだけど…ここに居てもいいかな?」 こんな、ふざけたヤツに 紫月から近付いて来たから 一時的に楽しんで終わりじゃないから 居続けようと思った訳じゃないのに 「俺が居ない時は、中に入って待ってなよ」 いつだって、紫月から近付いてきて 分からない事も、ビックリする事も 色んな俺見ても それでも、今日も笑ってるから 「南風の耳…いただきます」 「ダメだって!紫月のせいで、俺…耳っ…~~っ」 見て?紫月… まだ、大丈夫? 嫌いになってない? これでも、まだ 俺の事…好き?

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