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第21話
バレンタイン…
それで、男女が盛り上がるとか
男のステータスが決まるとか
そんなのは、一昔前の話で
「どこもバレンタイン一色だな。日本の風物詩は何処行った?」
「スーパーの一角に、節分コーナーあったよ。あと、恵方巻予約、コンビニで受付中だったよ」
「去年は、人生でこんなにチョコ食ったの初めてってくらい、毎日食ってたな」
「南風と一緒に食べるの、楽しかったな」
そう…この男
このご時世に、チョコをやたら持って帰って来たのである
今や、友チョコだの、自分へのご褒美だのがメインなのに
職場での義理チョコも、だいぶ無くなったと、テレビで言ってたのに
なんの自慢をするでもなく、やたら置いてあるチョコに疑問を持ち、聞いてみると
「バレンタインだったから」
と、サラリと答えやがった
絶対、全員同じだけ貰ってないだろ
まぁ、まだ恋人同士だった訳じゃないし
恋人同士だとしても、自分の恋人がハイスペックって、ちょっと嬉しいけどね
「紫月さ、人生ずっとチョコ貰い続けてんの?」
「え?…人生…ずっと?」
「そ。子供の頃から、学生時代、そして働いてからも、ずっとバレンタインは、周りの人達よりチョコ貰う人生?」
「………さあ…どうなんだろ…」
え…
なんで、ここでそんな顔?
それは、全くチョコ貰ってこなかったヤツがする顔だろ
貰い過ぎて、ウンザリしてんのか?
「なぁ、紫月。バレンタインさ、金曜日だろ?俺達も、なんかしよっか」
「え…~~っ…するっ!」
うわぁ…
めっちゃ可愛い顔した
ほらほら
チラチラ見られてんぞ
「なんか、ちょっと美味しい物食べてさ…たまには、酒とか飲んじゃう?」
「南風、お酒飲めるの?結構強い?」
「ん~~…そこそこかな。多分、普通に飲んでて、酔っぱらうって事はないよ」
「そうなんだ…俺も、強いのか知らないけど、全然酔わない。だから、飲む事なかったけど…そうだね。南風と一緒に、お酒飲んでみたい」
「よ~~し!じゃあ、作戦会議だ」
そして、バレンタイン当日
ガチャ
「ただいま~」
帰って来た!
カチャ
「お帰り~!」
「わっ…ふふっ…ただいま、南風。今日のお迎えは、激しいね」
「だって、楽しみじゃん?」
「ん…俺も、楽しみだった」
「…って…今年も、すげぇのな」
紫月の手には、紙袋2つが握られ
その中には、当たり前の様にチョコが詰め込まれていた
「紫月さ、そんなにモテるって事はだよ?普段から、女子社員に言い寄られる事とかあるの?」
「まさか。これ全部義理チョコだよ?もう、そういう風習無くそうって話になってる筈なんだけど…義理堅い人達が多いんだろね」
「……そうだね」
いや、違うだろ
絶対、他の奴ら紙袋2つ持って帰ってないだろ
多分、そういうの全く気にしてないんだろな
「南風、お酒飲むならさ、先にお風呂入っちゃお?」
「そう思って、湯船にお湯溜めといた!」
「流石!じゃあ、着替えちゃうから、南風先に入ってて」
「了解」
ドサッ…と、適当に置かれた紙袋の中に
多分、結構本気で渡されたチョコとか、あるんじゃないのかな
なのに、当の本人は
俺と風呂入るって、急いでるんだから
ちょっと、優越感に浸っちゃうよね
ちゃぷん…
「はぁ…あったまる~」
「ははっ!紫月、オッサンみたい」
「だって、今日すっごく寒くなかった?」
「確かにな。雪降りそうだったよなぁ」
「南風の洗髪とお風呂で、癒された~」
「これから、美味しい食事と酒が待ってるし」
「うん……南風…ちょっとだけ、いい?」
「ふっ…ちょっとだけな?」
紫月は、風邪引いた辺りから
何でもない時でも、俺に甘えてくれる事が多くなった
なんか可愛いし、嬉しい
「んっ……しづっ…んっんっ…そろそろっ…」
「はぁ……そうだね…止まらなくなっちゃう」
「……ぶっ…ぶはっ!…はははっ!」
「え?…なんで今、笑うの?」
「だって……」
「んっ…南風?」
「あんなにチョコ貰って来る奴がさ…止まらなくたって、文句なんて言われた事ないだろうに、困った顔して俺なんか見てんだもん」
困った顔は
もっとしたいから
だけど、きっと
美味しい食事と酒も、楽しみで楽しみで
おんなじ気持ちで
「南風だからだよ?南風だから、何でもしたくて…全部楽しくて…だからだよ?俺なんかって、言わないで」
なんで、それで
紫月が、悲しそうな顔すんだよ
「ん…ごめん。チュッ」
「もっとしてくれないと、許さない」
「ん…」
「んっ…んっ……んっ…はっ……んんっ……?」
「止まんなくなったら、困るだろ?」
「~~っ…そっ…だね…」
惜し気もなく、全部見せてくれるから
躊躇なく、全部くれるから
1日1日が
未来を信じる勇気になる
「じゃあ、乾杯」
「かんぱ~~い!ハッピーバレンタイ~ン」
「美味しそうだね~」
「紫月が、チャチャッと作ったコレ、めっちゃオシャレなんですけど」
「絶対お酒に合うし簡単だから、いいかなと思って」
「いい!めっちゃ旨そう!」
トマトと、なんちゃらチーズのカプレーゼとかいうヤツは
予想通り、めちゃくちゃ旨くて
久しぶりに飲んだ酒は
そんなに美味しい訳でもないのに
なんか、やたら楽しくて
「紫月、俺酔ってる?」
「え?見た目じゃ分かんないけど…南風、酔ったの?」
「そんな感じないけど、やたら楽しいから」
「あ、それは俺もだよ。これって、酔ってるの?」
「ぶはっ!はははっ!2人して分かんないとか!」
「ふふっ…でも、楽しいからいいよね。これも美味しそうだから、飲んでみる?」
「飲む~~」
後から考えたら
多分、俺達は酒じゃなくて、雰囲気に酔ってたんだと思う
調子に乗って、色んな酒飲んだせいも多少あるけど
めちゃくちゃ楽しい割に、全然具合悪くはなくて
「美味しかった~」
「たまには、いいもんだな~」
「水分摂ったら、ご飯はあまり入らないね」
「水分って!ははっ!酒、結構飲んだもんな~」
「眠くなる前に、片付けちゃおっと」
「エライ!俺も片付ける~」
2人して、何が楽しいんだか、ずっと嬉しくて
片付け終わって、ソファーに座ったら、チョコの詰まった紙袋があって
「紫月が貰ったチョコ、食べてやる~」
「南風が食べるなら、俺も少し食べよ~」
「どれにしよっかな~~……ああっ!!」
「何?」
「パンツ!パンツくれてるヤツ居る!やらしっ!」
「え?ほんとだ…チョコよりは、実用的だね」
「紫月に、自分の選んだパンツ履かせようとしてる!やらしっ!」
「やらしいのかな?チョコばっかりじゃ、飽きちゃうと思ったんじゃない?」
ダメだ、この男
全然、女心分かってない
ってか!
ここまでされて、全然モテてる自覚ない!
「紫月!」
「っ…何?」
「……エッチしよ~」
「え?急に?」
「だって、恋人にさ、バレンタインにパンツ渡してきたヤツ居るんだぞ?それより上の事したいじゃん!」
「そういうもの?分かんないけど、南風とイチャイチャはしたいよ」
「よ~~し!準備して来る!」
こんなんで、本気でヤキモチなんて妬かないけど
でもさ、きっとさ
皆チョコだろうから、他の物にしようかな
じゃあ、何にしようかなって考えて
そんで、一番大事なとこ隠すパンツにして
そんでさ、そんでさ
何色にしようかな
どの柄がいいかなって
紫月の顔、思い浮かべながら
紫月の体、想像しながら
選んだ一品かもしんないじゃん?
そんでもってさ
同じ職場な訳だから
もしかしたら、今日あのパンツ履いてんのかなって
これから、紫月を見る度思ったりしてるかもしんないじゃん?
「残念だったな。紫月のバレンタインは、俺だけのものだ」
「え?残念じゃないよ?南風だけのもので、嬉しいよ?」
「へっへっへっ。だよな~?紫月は、俺にメロメロなのだ~」
「うん…南風にメロメロだよ~」
あれ?
なんか、紫月…
甘えてる?だけじゃないな
もしかしたら、酔ってる?
「紫月、紫月~」
「ふふっ。何?何~?」
「エッチしよ~」
「いいよ~」
多分、楽しくて嬉しくて
バレンタインなんて、気にした事なかったのに
恋人同士が盛り上がると噂の、バレンタイン
その日に、ほんとに好きな人と、こんなに楽しいのが、嬉し過ぎて
俺達は、それに酔ったんだと思う
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