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第24話

南風と出逢ってから、1年が過ぎ 沢山話して 色んな南風を見て 色んな俺を見せて 気付けば俺は 南風が、いつか居なくなってしまうという事を あまり考えなくなっていた 毎日一緒に寝て 家に帰れば南風が居て それが当たり前になって だから…… 「ここで、ニュースです…」 昼休みに流れてきた、ニュース速報も 目の前で秋月が騒いでたけど たいして、気にしてなかった 今日も早く帰りたい 帰って、早く南風に会いたい いつも通り、そんな事を考えていた ヴ~~…ヴ~~… 昼休みのニュースなんか忘れて いつもの様に仕事してると 電話がかかってきた 見知らぬ固定電話だ 今時、固定電話なんて限られる訳で 俺は、無視して働いた ところが、しばらく時間をおいて 再び同じ固定電話から 何だろう… ほんの少し、胸をざわつかせながら その番号を検索するが、引っ掛からない 仕事関係なら、会社に電話してくるだろうし 家族に何かあったなら、まず家族の誰かから連絡がくるだろう まぁ、いいか ほんとに用事があるのなら、また連絡してくるだろう まさか、南風に大変な事が起こってるなんて知らず 俺は、仕事を再開した そして、またしばらくして ヴ~~…ヴ~~… やっぱ、一度出てみるか そう思って、席を立ちながらスマホを手にすると 画面には…南風の名前が表示されていた 数秒で、色んな不安が駆け抜ける とりあえず、オフィスを出ながら電話に出ると 「もしもし…紫月…今、大丈夫?」 南風本人の声に、少しほっとしながら いつもとは違う声に こんな時間に、突然電話をしてきた事に 緊張が走る 「大丈夫だよ…どうしたの?」 「実は俺さ…今、病院に居るんだけど…」 「病院?南風…怪我したの?具合悪くなった?」 「怪我…歩いてたら、急に吹っ飛ばされて…なんかが爆発したみたいなんだけど…」 「え?……爆発…」 それは 数時間前に、ニュースで何度も言ってたワードだった なんか、大変な事になってるな… そんな程度に聞き流してた、あの現場に… 「多分、手術はしなくて良さそうなんだけど…入院は決定でさ…荷物とか色々…紫月しか頼める人居なくて…」 「手術……怪我…怪我って?南風、どこ…」 「あっ…はい…すいません。紫月、ごめん。ほんとは、携帯使えないんだ。病院からの電話、繋がらなかったからって…」 病院から… あれ、南風が居る病院からの電話だったんだ 南風の声の後ろから 素人でも、緊急を知らせる音だって分かる様な、アラーム音が鳴り続けている 「…紫月?聞こえてる?」 「っ…聞こえてる…えっと…なんて病院だっけ…」 南風は今、ちゃんと話せてて だから、大丈夫で だけど… 手が震えている 全身から汗が噴き出して 早く動かなきゃって思ってるのに 何からすればいいのか、分からない 「雨宮?」 「っ……秋月…」 「どしたん?こんな所で、この世の終わりみたいな顔して」 「……爆発…」 「爆発?」 「…南風…爆発に…巻き込まれて…」 「は?!」 「病院……行かなきゃ…」 そう とにかく行かなきゃ 行って…南風を見れば分かる 大丈夫だって 「っと…おい!雨宮…大丈夫か?ってか、爆発って、あの昼のニュースでやってたやつか?巻き込まれたって…無事なのか?」 「電話…してきたから…大丈夫だと思う…」 「そうか……よし、待ってろ。付いてってやる」 「え?」 上手く体が動かなくて 色んな事一気に考えられなくて なんで、秋月に支えられてんだとか なんで、秋月が一緒に来るんだとか そっちを考える余裕なくて とにかく、早退… 早く…病院… 「大丈夫か?」 なんか、秋月がずっと隣に居て なんか、帰っていい事になってて なんか、外出たらタクシーが来て なんか…秋月とタクシーに乗ってる 「秋月も…帰って来て良かったのか?」 「こんなんなってる雨宮、1人に出来ないだろ。会社の奴らも、誰も文句言わなかったぞ」 「……そうか」 会社の奴ら… 全然覚えてない 俺、なんて言って来たんだっけ? そんなの、どうでもいい 病院… 南風……南風…… 「なおさんって…彼女か?」 「…え?」 「さっき、なおって言ってたから。お前が、こんなに感情的になるって…彼女かなと思って。答えなくていいけどさ…電話出来てたなら、そんな大きな怪我じゃない。大丈夫だ」 「……そう…だよな」 けど、入院しなきゃならない状態で 爆発に巻き込まれて… 色んな事が、答えも出ないまま 次々と頭の中に出て来ては消えて 気付いたら、秋月が 「雨宮、降りるぞ」 隣で、そんな事言ってた 病院…着いてた 病院…南風… 考えなきゃならない事、沢山あるのに 必要な事は、何も考えられなくて それどころか、目の前がぼやけて 体がロボットの様に、固くて 全然早く進めない 「雨宮」 「っ…」 「大丈夫だ。行くぞ」 秋月が、ぽんと背中を叩いてくれたら ちょっと体が動きやすくなった 狭い視界の中 ただただ、秋月に付いてくと 急患室という文字が見えてきた 秋月が、受付で何か話して 少し座って待ってると 「白石 南風さんのご友人の方」 「っ…はい…」 「中にどうぞ」 「っ……」 早く… 早く、南風に会わなきゃ そう思ってるのに 体が動かない 金縛りにでもあったみたいだ 「あの……大丈夫ですか?」 「すいません。こいつの友人なんですが、一緒にいいですか?」 体が動かないばかりか 秋月と共に、ようやく立ち上がったら 眩暈までしてきた しっかりしなきゃならないのに 耳も…こもってるみたいで、よく聞こえない 南風…大丈夫… 大丈夫…南風… 「こちらになります」 カーテンを開けられると 「っ?!」 南風が…… 横たわってる南風は 頭に包帯を巻かれ 顔には、ガーゼが貼られ 「こちらにどうぞ」 近くまで行くと いくつもの線が付いてて 「っ?!」 血…… 南風のベッドの横に 血の溜まってる物が置かれ それから出てる管は 南風の布団の中へと続いている 「白石さん…白石さん…」 「…………」 え…… 「白石さん…」 こんなに近くで、看護師さんが呼んでるのに 南風が、ぴくりとも反応しない 「南風……南風!南風!ねぇ、南風!起きて!」 「おい、雨宮…」 「南風!聞こえないの?!」 「あの…」 「南風!南…」 「ん……あ?…紫月…来てくれたんだ…」 「っ…~~~~っ…南風っ…」 「え…ちょっと…」 南風が目を開けた 俺を見て 俺の名前呼んでくれた その時の俺の頭の中は、それだけでいっぱいで ここが、どんな場所かとか 誰が居るかとか そんなの考えてる余裕なんか無くて 驚いて、焦ってる南風に 抱き付いてしまっていた 「~~っ…良かった…南風…良かった…」 「えっと…心配かけて、ごめん…来てくれて、ありがと…そんで、紫月…皆ビックリしてるから、そろそろ離れよっか」 南風の言ってる意味が、すぐには分からず 南風に抱き付いたまま、周りを見渡すと 秋月と、看護師と、医者が固まってて 通り過ぎてく看護師達も、こっちを見て行ってた やってしまった 公衆の面前で 秋月の前で めちゃくちゃ南風に抱き付いてしまった 「…………失礼しました…あの…南風…大丈夫?」 一気に冷静になって、そう言ったら 「ぶっ!ぶはっ!はっはっ…っ…いって~」 「南風!痛いの?怪我?大丈夫?」 「だいじょぶだいじょぶ。痛み止め使ってもらったら、めっちゃ効いて楽になった。もう帰れそうなくらい」 南風が、少し顔を歪ませながらも 笑いながら、そう答えると 「帰れませんよ。今日は入院。なるべく安静です」 近くで固まってた医者が、そう言ってきた 「白石さんのご友人の方ですね?簡単に説明します」 そうして、ようやく南風に何が起こったのかを聞かされた 南風が、バイトを終えて駅に向かってた途中 例の爆発事故が起こった そもそも、ちゃんとニュースを見てなかった俺は そこで初めて、ガス管の損傷による爆発事故だという事も知った 不運な事に 損傷したガス管は、飲食店の目の前だったらしく その飲食店を巻き来んで、結構な被害の爆発事故となったらしく 目の前を歩いてた訳ではない南風も、爆風で少し飛ばされたらしい 南風の傷は、地面に擦れた擦過傷が多数 その他に、左の肋骨が2本折れてて 胸に血が溜まってるのを、さっきの管で抜いてるらしい そして、脾臓という場所からも、少し出血してて 様子を見て大丈夫か、処置や手術をした方がいいのか、少し経過を見ていくらしい 元気に笑ったから、だいぶ安心したのに 結構大変な怪我となっていた 「紫月、そんな顔すんなって。俺これ持ってトイレ行って来れてるから、見た目より全然元気」 「はぁ…あまり、元気に動いて欲しくはないんですけどね…」 「そうですよ?1日だけでも、しびん使いましょ?」 「無理!絶対無理!そしたら、この管抜いて帰るから!」 「はぁ~…じゃあ、絶対に動くのはトイレの時だけですからね?」 「りょ~か~い」 なんか… 包帯とガーゼと色んな線で覆われてる南風より 看護師さんや医者の方が、疲れてる顔してる 「ぶっ…くっくっくっくっ…ぶはっ!はっはっはっ!おっもしれ~!…くっくっくっ…」 「ちょっと、秋月。こんなとこで笑うなよ」 「だって、なお君超おもしれ~…くっくっくっ…」 「静かにして下さい!とりあえず、病棟に行くまで、外でお待ち下さい!」 秋月のせいで めちゃくちゃ看護師さんに怒られて、外に追い出された もっと、南風のとこ居たかったのに 「お前のせいで、締め出された」 「悪かったって……雨宮…ごめん」 「…ここまで付き添ってくれたから、許してやる」 「そうじゃなくて……俺、勝手に彼女の話だって決めつけて聞いてた。ずっと気分悪かったよな?ごめん」 あ…そうか 色んな事、繋ぎ合わせると 南風が恋人だってバレたのか 「別に…」 「けど、今日来られて良かったよ。お前が、ほんとに大切にしてるなお君、実際に見られた。話に聞いてた通り、元気で面白い子だな」 話に聞いてた通り… 彼女だと思って聞いてたのに そう、思ってくれるのか 「……ありがと」 「ふっ…なお君って、どんな字書くんだ?」 「…南に風で…南風」 「へぇ?ピッタリだな」 「……うん」 「うっれしそ~な顔しやがって。可愛いヤツめ!このっこのっ!」 「静かにして下さい!」 また、秋月のせいで怒られた だけど、秋月が居てくれて良かった 今日、連れて来てくれたのが秋月で良かった いつも南風の事、話してたのが 秋月で良かった…

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