27 / 35
第27話
「白石さん…白石さん…」
「……あ…はい」
「雨宮さんって人、出ないんですけど…他に頼める人居ます?」
めっちゃ寝てた
すっごい気持ち良く寝てた
けど10分位しか経ってなかった
他に頼める人なんか居なくて
短時間だけ特別という事で、俺のスマホから電話してみたら出てくれた
「え?……爆発…」
そりゃそうだ
普通に生活してて、爆発に巻き込まれるって、どういう事だよな?
けど、詳しく説明してる時間もなければ
俺自身、詳しく知らないんだ
結果の結果、血まで出てた頭ん中は問題なし
聞いた事ない内臓から、なんか血が出てるみたいだけど
多分、勝手に止まるらしく
手術はしなくて大丈夫そうだけど、入院になる事を伝えると
「手術……怪我…怪我って?南風、どこ…」
紫月が、めちゃくちゃ心配してる
心配しなくて大丈夫なんだよ
紫月を安心させる為に、色々言ってあげようとしたら
「白石さん、そろそろ…」
ですよね
短時間でしたね
とりあえず、紫月は来てくれるようで
そろそろ仕事終わりそうだった?
まだだったら、家族でもないのに、早退とか大変だよなぁ…
「白石さん、病棟が忙しくて、まだ入院病棟に行けそうにないので、分かるとこだけでも書いてて下さい」
そう言って、なんか用紙を渡された
連絡先…既往歴…
家族構成……
家族……
一応、存在するなら書かなきゃなのかな
めちゃくちゃ書きたくないけどな
いつか居た、忘れかけてた母親の名前を書いて
電話番号の欄に、知らないって書いておく
そしたら、用紙を回収に来た看護師さんが
「え?白石さん、お母さん居るのなら、なんとか連絡つきませんか?」
「ずっと連絡取ってないんで…」
「親戚とか、知り合いに聞いてみたら分かるとか…」
ああ…
イライラするな
こんなの、いつもなら上手く流せるのに
笑って、なんなら相手も笑わせて
だけど
動く度に…
いや、動かなくても痛い体に
疲労と、睡魔とが押し寄せてきて
「さあ?最後に会ったのが4歳なんで。施設の人も知らなかったし、施設に居る間、会いに来るような人も居なかったし。母親が今、何処で何してるのか…まだ生きてるのかも知らないんで」
「っ…そうですか…」
めちゃくちゃ嫌な言い方した
この人は、悪くないのに
ただ、忙しい中、しなきゃならない事しただけなのに
最悪な気分だ
寝よ……
なんか…聞こえる
すげぇ気持ち良く寝てるから…
「○○……○○!○○!」
耳傾けたら目…覚めそう
まだ寝てたい
「○○!……えないの…」
あれ?
待てよ…
この声…
「南風!南…」
何より、最重要事項
どんなに眠くても
これは確かめなきゃ
めちゃくちゃ開きたくなかった目を開けると…
泣きそうな顔した紫月の顔があった
「っ…~~~~っ…南風っ…」
「え…ちょっと…」
ちょっと待って
まだ寝惚けてる俺でも分かるぞ
ここで、俺に抱き付くのはマズイんじゃない?
だってさ
ちゃんと見えてきたら
紫月の傍に、紫月みたいに高っそうなスーツ着たヤツ居るし
看護師さん達、固まってるし
「~~っ…良かった…南風…良かった…」
「えっと…心配かけて、ごめん…来てくれて、ありがと…そんで、紫月…皆ビックリしてるから、そろそろ離れよっか」
そう言ったら、少しの間動かなくなった紫月が
ゆっくりと俺から離れて
「…………失礼しました…あの…南風…大丈夫?」
って、超優等生な感じで聞いてきた
「ぶっ!ぶはっ!はっはっ…っ…いって~」
もう無理だって
そのスーツに、ピッタリな感じだけど
それが、紫月の大部分なんだろうけど
そんなのじゃない紫月…
同じスーツ着てるヤツ居るのに
そんなのも忘れて
俺に抱き付いてきてくれたのが
思った以上に嬉しくて
重かった気持ちが、一気に軽くなる
気にしない
誰に何を思われても
紫月が大切
紫月が、想ってくれるなら、それでいい
少し落ち着いたところで
先生が、俺に何が起きたのかと
今の俺の状態について、話してくれた
へぇ…
爆発って、そういう事だったのか
たまたま近くに居た俺達は
運が悪かったとしか言えないな
紫月が、すっげぇ心配そうな顔してる
俺が紫月なら、そうなるよな
「無理!絶対無理!そしたら、この管抜いて帰るから!」
大丈夫だよ、紫月
そんな顔する位の事じゃない
いつもの俺でしょ?
「はぁ~…じゃあ、絶対に動くのはトイレの時だけですからね?」
「りょ~か~い」
紫月の顔見たら、頑張りたくなった
紫月が笑える様に、安心出来る様に
痛いとか何とか
そんなんは、些細な事だった
「ぶっ…くっくっくっくっ…ぶはっ!はっはっはっ!おっもしれ~!…くっくっくっ…」
紫月の近くに居た
紫月と、おんなじ様なスーツの人が
俺みたいな感じで笑い出した
「ちょっと、秋月。こんなとこで笑うなよ」
「だって、なお君超おもしれ~…くっくっくっ…」
「静かにして下さい!とりあえず、病棟に行くまで、外でお待ち下さい!」
看護師さんに怒られて、締め出された
あんなスーツ着た人でも
こんなとこで、あんな笑い方する人も居るんだな
秋月…って言ってた
全然家族じゃない俺の病院に来る紫月に、付いて来てくれたのかな
めちゃくちゃ仲いいのかな
紫月の話し方、俺にするのとは全然違ってた
気を遣ってないって言うか…
お互いが、そう思ってる感じだった
……って!
いやいや…
そんな珍しい話でもないけど
そんな良くある話でもないだろ
同じ会社の、仲いいヤツ
そいつが、恋愛対象にとか…
そんな都合のいいBL展開
現実には、なかなかあり得ないから!
ようやく病棟に入院出来て
検温やら何やらが終わったら
「白石さん、ご友人の方連れて来ましたよ。どうぞ~」
「ありがとうございます」
「あ、椅子持って来ますね~」
なんか…
看護師さん、紫月と話す時…
めっちゃ笑顔じゃない?
「これ、どうぞ。使って下さい」
「ありがとうございます。南風、痛くなってない?休んでていいよ?」
「大丈夫。紫月こそ、疲れてるだろ?」
けど、早く帰って休んでって言葉は
飲み込んでしまった
「俺は大丈夫だよ。南風の顔見てる方が、安心出来るし」
「白石さん…ちょっと色々説明して行きますね」
「あ、じゃあ俺…」
「ここに居て大丈夫ですよ~」
居て大丈夫ってか…
俺より、紫月を見る回数多くない?
いつも通り、通常通り
この男は、そういうの一切気にしないからな
紫月が帰って、しばらくすると
「兄ちゃん、兄ちゃん」
隣のおじいちゃんが、話し掛けてきた
「はい?」
「兄ちゃん、階段からでも転がり落ちたのかい?えらい怪我だな」
「いえ…なんか、爆発に巻き込まれたみたいで…」
「爆発?!爆発って、あの…ニュースでやってたやつか!」
ニュースで…
そりゃ、あんな凄かったらやってるか
「そうなんですかね?実は俺、まだよく知らなくて…」
「そりゃ、大変だったなぁ…けど、それで済んだなら運が良かったなぁ」
「結構重症な人、居そうですよね?」
「重症どころか、あんた…何人も死んでるんだから」
「え……死…」
そうかもだけど
あの店…壁も屋根も、吹っ飛んでたし
そうかもだけど……
あそこに…
あの、同じ場所に居た人達の誰かが
死んだって事…
「可哀想になぁ…あの店の人も、偶然そこを歩いてた人も、な~んも悪い事しとらんのに」
「……そうですか…じゃあ、俺は運がいいですね」
「そうそう。遺された者は、そう思って頑張って生きんとな」
もしかしたら、死んでたかもしれない
少し前までの俺なら
死ぬ事は、そんなに怖い事じゃなかった
この世界から、簡単に、面倒事なく、消え去る事が出来る
むしろ、それは…
ちょっとラッキーくらいに、思ってたかもしれない
「っ…~~~~っ…南風っ…」
「~~っ…良かった…南風…良かった…」
今は、そうは思えない
紫月が泣く
紫月を泣かせる訳にはいかない
何より
紫月と居るこの世界から、消え去りたいだなんて思わない
今、俺が生きてる世界は
毎日が、楽しくて、嬉しくて…
勿体ない位、大切で…
だから
もしも、そんな風に思ってる人達だったら
偶然、不運にも、その世界から追い出されたのなら
「そうですね……それだったら、俺にも出来ます」
「兄ちゃんは、いい子だな。えらい色の髪しとるが、優しくて、いい子だ」
そう言って、おじいちゃんが
シワッシワの顔して
嬉しそうに笑った
ヴヴ
『南風、痛くなってない?』
『寂しくない?』
優しいのは
優しくなれたのは
紫月が居るから
紫月に出逢えたから
『痛くないよ』
『頑張って、早く帰るね』
きっと、紫月も寂しがってる
紫月の家なのに
きっと、寂しがってる
紫月…
俺は、運がいいんだって
そうだよね
紫月に出逢えたんだもん
あのね、紫月
死ななくて良かったって思ったよ
紫月の居る世界から、離れたくない
紫月を泣かせる世界にしたくないって
ヴヴ
『待ってる』
うん
紫月の居る、あの家に
早く帰るから
待ってて、紫月……
ともだちにシェアしよう!

