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第28話

「南風」 「え?」 翌日、面会時間になったら、紫月が現れた 現在の時刻13:00 なんで? 「来ちゃった」 「来ちゃったって…紫月、仕事は?」 「全然使ってない有給、使う事にした」 「それ…こんな急に使えるものなの?大丈夫なの?」 「………迷惑…だった?」 「え?」 うわぁ… やっちゃった 紫月が、悲しそうな顔してる ウルウルして、こっち見てる 「迷惑な訳ないだろ?めちゃくちゃ嬉しいけど…俺は、有給とか全然分かんないから。とりあえず、今すぐどうこうなる訳じゃない俺の為に、紫月が凄く無理したんじゃないかって、そう思っただけ」 「無理してない。ほんとは、南風が退院するまで休もうかと思ったけど…会えない時間休んでても意味ないから、午前中は働いてたし、会社にも迷惑かけてない」 可愛い 大丈夫でしょ? ね? これでいいでしょ? って、必死に訴えてるみたいだ 「そっか…だったら、何も気にしないで喜んどこ。面会時間になって、すぐに会えるなんて思わなかったから、めちゃくちゃ嬉しい!」 「あ…うん!俺も嬉しい」 かっわい~~ ビシッとスーツで決めてる紫月の 子供みたいに無邪気な笑顔 最強過ぎる そうして紫月は、夕方まで居てくれて 「紫月、明日も仕事だろ?せっかくだから、早めに帰ったら?」 「……早く帰っても…南風居ないし…」 気持ちは分かるし、嬉しい だけど、スーツ着たまんまだし ただ、俺のベッドの隣に座ってるって きっと、結構疲れるよ 「すぐに帰るよ。俺、退院してもさ…肋骨折れたまんまだし、きっと家事とかあんまり出来ないし…」 「そんなの、しなくていいよ!」 「うん…家事どころか、自分の事もさ…紫月に手伝ってもらわなきゃなんないかも」 「いくらだって手伝うよ」 「だから、紫月には倒れられちゃ困るからね。ちゃんと休んで、万全な体調で待ってて?」 「全然大丈夫だけど…分かった」 そうして、しぶしぶ帰ってくれた そりゃ面会時間ギリギリまで居て欲しいけど 1人であの家…寂しいだろうけど 明日退院が決まってる訳じゃないからね これが毎日とか、心配なんだよ紫月 「白石さん…白石さん…」 「ん……」 「ご飯来ましたけど、食べれそうですか?」 「あ…食べます」 紫月が帰ってから、熟睡してた どうやら俺も、体力落ちてるらしい トイレくらいしか、歩いてないもんな ベッドの上でも、色々運動出来るけど きっと、バレたら怒られるだろな 「兄ちゃん、兄ちゃん」 「はい?」 「日中来てた兄ちゃんは、弟かい?」 「え?」 弟…… に、見えるのか? 兄じゃなくて? 「違うのか。カーテンで姿は見えんかったが、話聞いてたら、随分と兄ちゃんに甘えてるみたいだったからな」 「……ははっ…そうでしたかね?」 「うんうん。兄ちゃんの事が、好きで好きで、心配でしょうがないって感じだったな。兄ちゃんは、いい兄ちゃんなんだな?」 「…だといいですね」 紫月…弟だってよ? 俺みたいなのが、紫月の兄ちゃんだって おじいちゃんが、紫月を見たらビックリだろな だけど、嬉しいな 他の人が聞いても、紫月が俺に甘えてるって思うんだ 次の日、おじいちゃんは元気に退院して行き 向かいの2人のおじいちゃん達は、話出来る感じじゃなくて… 「あの…そろそろ、もう少し動けないですか?」 とか、軽く聞いてみたら 「絶対!ダメです!この時期にトイレまで歩けるなんて、特例中の特例なんですからね!なるべくベッド上でも安静にしてて下さい!」 「……はい…すいません」 更に動くなと言われてしまった 元々ゲームとかしないし 漫画とか読まないし と、なると… 寝るしかないかぁ 体力が、どんどん落ちていく~ 風呂入りたい… 頭洗いたい ほんとは、頭だけでも洗えないか、聞こうと思ったのに 絶対怒られる 「失礼します」 この声は! 「白石さん、調子どうですか?」 「先生!調子、めっちゃいいです!もう全然動けます!」 「はははっ。めっちゃ良くはないでしょ。頭の傷は?痛くないかい?」 「全然!それより、頭かゆくてかゆくて」 「胸の方は?骨折れてるままだからね。動くと痛いだろ?」 「こんくらい平気!痛み止め飲んでるし!」 お願いお願い、先生 頭痒くて、気持ち悪くて、おかしくなりそう 必死に頼み込んだら 「そうだなぁ……じゃあ、今日もう一度検査してみよう。その結果が良かったら、車椅子に乗って、誰かに洗ってもらうのなら、許可しよう」 「ほんと?!」 「その代わり、絶対自分で動かない事。あと、検査が終わるまで、何も食べないでね」 「ありがとうございます!」 「あ~…検査の結果次第だからね?」 「はい!」 だって、今日で3日目…… 3日目…か…… そんなん、普通だったのにな 3日風呂入ってないからって こんなにも不快に思う体になってたのか 贅沢になったもんだ 昼飯抜かれて 検査に行って 戻って来て、ようやくご飯食べてたら 「南風」 紫月が、やって来た 「紫月…」 「南風、今ご飯食べてたの?何かあった?」 「実はさ…」 今日の検査に至った経緯を話してると 「白石さん…」 来た! 「先生!いい?」 「ははっ。期待を裏切らなくて良かったよ」 「やった!」 「元々、脾臓からの出血は、分からない位僅かなものだったし、今回も大丈夫だっから許可しよう。でも、先生の言った事、ちゃんと守った上での限定だよ」 「ありがとうございます!」 話を聞いた紫月が 使い捨てのシャンプーを、買いに行ってくれて 戻って来て、洗髪台なるとこまで、車椅子に乗せられ 「じゃあ、終わったら知らせて下さいね」 「分かりました」 俺は、紫月に頭を洗ってもらう事となった 「いつもとは、逆だね」 「早く、紫月の髪洗いたいなぁ…」 「南風、この態勢痛くない?大丈夫?」 「大丈夫…っ…」 「え?!あっ…ここ?触っちゃった?!ごめん!大丈夫?!」 俺の頭は、ちょっとだけ傷を縫っていて まだ、ホチキスみたいのが付いていて そこは、擦らないようにと言われていた 「大丈夫。なんか、少し引っ掛かったみたいになっただけ」 「血…出てないよね?ほんとに、痛くない?看護師さんに見てもらう?」 「もう大丈夫だって」 全然大丈夫で めちゃくちゃ気持ち良くて だけど、俺の体は たった、そんなもんで、少し疲れてしまってて 「南風?大丈夫?」 「うん…体力なくなっただけ。ちょっと疲れちゃった」 「南風……休んで。眠って」 「せっかく紫月が居るのに?」 話しながらも 俺の瞼は、半分閉じかかってる 「傍に居るから…南風が眠ってても、傍に居るから…安心して眠って…」 紫月の声…安心する 紫月…手… 握ってんの見られたら…変に思われるよ…… 夢の中… 紫月と看護師さんが話してる 「ぐっすり眠ってますね?疲れちゃったかな」 「そうみたいです…いつも、凄く元気なので心配です」 「体力が落ちてるだけです。若いから、すぐに戻りますよ」 「見てるだけで、痛そうで……」 紫月… そんな思う程痛くないよ そんなに心配しないで 「そんなに心配しないで…私は、あなたの方が心配です」 え? 看護師さん…何言ってんの? 「っ…何を…」 何? 「私が、慰めてあげます…力を抜いて下さい」 「っ…やめて下さいっ…」 何を?! 「強がらないで……ほら……あなたの体は、正直に反応してる…」 「っ…」 待って… 待って待って! 俺、ここに居るのに そこで、何してんの?! 「ふっ…そう……そのまま、素直になって…」 「っ……やめっ…んっ……南風っ…~~っ…」 紫月! 「紫月!」 「っ……南風…どうしたの?」 ありったけの気力を振り絞ったら 目を開けて、動けた そしたら…… 「あれ?」 俺の手を握った紫月が 心配そうな顔して、俺を見てた 看護師さんは? 「どうかした?何か探してるの?」 「……えっと……看護師さん…来てなかった?」 「あ…南風、気付いてたの?」 「っ!…やっぱり、来てたよね?」 「検温に来たみたいだけど、ぐっすり寝てるから、また後で来ますって」 「……え?それだけ?」 「?…うん」 おや? 現実的に考えたら、まぁ…あり得ないんだけど 問題は、紫月だからな こんな男と、実質密室で2人きり あり得なくはない 「紫月…看護師さんに、慰めてもらってなかった?」 「南風…もしかして、起きてたの?」 「っ…ちゃんとは起きてない…紫月……どうやって…慰めてもらったの?」 夢じゃなかった? あり得た? 何…された? 「俺が心配してたら、若いから体力もすぐに戻るし、大丈夫って言ってたよ」 「その後は?」 「その後?また後で来ますって」 「っ……ほんとに?紫月……何か…されてない?」 あり得ないけど あり得る 信じたいけど 紫月は、自分に関するそういう事… あまり気にしないから 「南風…」 「んっ…?!」 キス… キスした?! 「何が不安?俺は、俺の安心の為にも来てるけど…南風に、少しでも笑っててもらいたくて、此処にいる。そんな顔させる為に来てるんじゃない」 「っ……聞いたら…呆れるよ?」 「いいよ。南風が笑ってくれるなら、何でも聞くよ」 「……紫月と看護師さんの会話…聞こえてきて……そしたら…看護師さんが、紫月を慰めてあげるって……それで…なんか、紫月……気持ち良さそうな声…」 「南風…」 口に出す程に、アホくさい だけど、それでも 一度、現実として認識してしまった衝撃は、デカくて… 「夢…だよな?分かってる…あり得ない…だけど…」 「ん…夢だね…でも、それでも…そんなになるだけ、不安になってくれたんだね…」 「紫月……カーテン開けられたら…見られるよ…」 「いいよ…今は、南風を抱き締めるのが、何より大事…」 「~~っ…バカみたいだけど…すっげぇ嫌だった…俺が、ここに居るのにっ…紫月っ…」 「ん…俺じゃないけど…夢の中の俺に替わって、謝っとく…ごめんね、南風」 「んっ…んんっ…はっ…んはっ……んっ…んっ…」 バカみたいな話した俺を 本気で慰めてくれて ねぇ、紫月… カーテン開けられたら、バレちゃうよ キスなんかしてたら、言い訳出来ないよ 「~~っ…紫月っ…」 「…ごめん…ずっとしたかったら…ちょっと、止められなくなっちゃった」 「俺もだけど…その先…出来ないのに、したくなっちゃうから…」 「ん…そうだね…」 少し、困った様な顔して 紫月が、俺の頭を撫でてくれた時 「失礼します」 シャッ… 「「っ?!」」 「あ…ふふっ。白石さん、検温してもいいですか?」 「~~っ…いいです」 恥ずかしい いい歳して、頭撫でられて 多分、めちゃくちゃ嬉しそうな顔してた けど、キスしてる時じゃなくて良かった~ え?そこから、見られてた訳じゃないよね? 考えたら、タイミング良過ぎん? けど、看護師さん… 不快そうなどころか、めちゃくちゃ機嫌良さそうだし、いっか 多分、絶対 紫月の、優しそうな顔見たからだと思うけど… 入院が長引いたら、夢が現実になるかも… なんて、ちょっとした不安を抱えつつも 翌日には、胸の管が抜け そして、翌日 「お世話になりました」 ようやく退院! また、数日後に受診だけど あんまり、動いちゃダメだけど とにかく… 「南風、帰ろ?」 「うん。土曜日が退院で良かった。紫月、月曜日からは、普通に仕事行って大丈夫だからな?」 「何言ってんの?月曜日は、南風の再診なんだから、休むに決まってるでしょ?」 紫月と一緒に 紫月の家に帰れる 「紫月…後から、毎日遅くまで残業とかにならない?」 「ならないよ。大丈夫。はぁ…今日から毎日、南風が居る。嬉しいな」 「うん…俺も」 たった5日 毎日会えてたのに こんなにも、嬉しい 「ただいま」 「お帰り、南風」 帰って来た 紫月の家… 紫月と俺だけの、この空間に…

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